【必読ポイント!】 「フリー」入門――非常に誤解されている言葉の早わかり講座
100万種類のフリー
商売で使われる<無料>には多くの意味があり、それを使ういろいろなビジネスモデルがある。無料とうたいながら、本当はそうではないこともある。たとえば、「ひとつ買えば、もうひとつはタダ」というセールス文句は、ふたつ買うと半額になりますという意味だ。「フリー・ギフト(おまけ)つき」は、買った商品の値段におまけのコストも含まれている。広告収入で運営されるメディアの世界がある。無料のラジオとテレビから、ほとんどのウェブまでがこれに含まれる。広告収入モデルは一世紀以上の歴史を持つ。消費者がコンテンツを無料で得るために、第三者(広告主)が費用を払う三者間市場だ。また、新しいモデルを象徴する真の無料がある。その大部分は、限界費用がゼロに近いオンライン上のデジタル経済に存在する。写真共有サービスのフリッカーは、ほとんどのユーザーには無料であり、そこには広告すら掲載していない。グーグルが提供する大部分のサービスは無料である。更に、素晴らしい贈与経済がある。それは、ウィキペディアやブロゴスフィアなど、評判や注目、自己表現など金銭以外のインセンティブによって成り立つ経済だ。フリーのビジネスモデルは大きく四種類に分けられる。
フリー① 直接的内部相互補助
【無料なもの】消費者の気を引いて、ほかのものも買ってみようと思わせる商品ならなんでも【無料対象者】結局はみんなが、なんらかの方法で喜んで金を払う直接的内部相互補助に該当するのは、「DVDを一枚買えば、二枚目はタダ」というキャンペーンや、携帯電話のお得プラン等が当てはまる。あるモノを無料かそれに近い値段にし、それで客を呼んで、健全な利益を出せる他の魅力的なモノを売ろうとするのだ。
フリー② 三者間市場
【無料なもの】コンテンツ、サービス、ソフトウェアなど【無料対象者】誰でもこれはフリーのまわりに築かれた経済でもっとも一般的な形だ。二者が無料で交換することで市場を形成し、第三者があとからそこに参加するためにその費用を負担する。メディアが制作物をタダかそれに近い価格で消費者に提供し、そこに参加するために広告主がお金を払う。ラジオ、テレビの多くは無料であり、新聞や雑誌の発行者も実際の費用よりはるかに少ない料金しか読者に請求しない。彼らが売る相手は読者ではなく広告主だからだ。メディア以外では、クレジットカード、OSツールの無料公開等が存在する。
フリー③ フリーミアム

【無料なもの】有料のプレミアム版に対する基本版【無料対象者】基本版のユーザー「フリーミアム」は、ベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソンの造語で、ウェブにおけるビジネスモデルとしては一般的だ。無料から高額のもののコンテンツの幅を持つこともあるし、無料版にいくつかの機能を加えてプロの有料版をそろえることもある。デジタル製品においては、無料と有料の割合は有形の製品の場合とまったく異なる。典型的なオンラインサイトには五パーセントルールがある。つまり、五パーセントの有料ユーザーが残りの無料ユーザーを支えているのである。それでもやっていけるのは、無料ユーザーにサービスを提供するコストが、無視できるほどゼロに近いからだ。
フリー④ 非貨幣市場
【無料なもの】対価を期待せずに、人々があげるものすべて【無料対象者】誰でもこれには、贈与経済、無償の労働、不正コピーの3つの形がある。一、贈与経済オンラインの百科事典「ウィキペディア」には一二〇〇万項目が掲載され、不用品をあげたい人とモノを欲しい人を結びつける「フリーサイクル」には年間八〇〇万点もの中古品が提供されているのを見れば、金銭以外にも人を動機付けるものがあるのだとわかる。シェアをうながすものは、評判や関心であり、それよりは目立たないが、表現、喜び、善行、満足感、あるいはたんなる私利である。




















