MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

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出版社
定価
1,980円(税込)
出版日
2017年07月17日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「仕事がデキる」ビジネスパーソンになるために、決算書が読めるようになったらいいな──そういう気持ちはあるものの、あの数字の羅列につい尻込みしてしまう人は少なくないだろう。

そんな人におすすめしたいのがこれ。本書には難解な会計用語は登場しない。決算書を「作る」には高度な専門知識が必要だが、それを「読む」だけなら四則演算さえできれば十分というのが著者の主張だからである。

本書を読めば、決算書のすべての数字を拾い上げる必要はないことがわかるだろう。ビジネスモデルごとの主要な指標にフォーカスすれば、その事業の好不調を明らかにすることはたやすい。どの指標が重要で、その数字を決算書からどのように拾い上げるのかについては、著者が順を追って丁寧に指南してくれている。何も恐れることはない。

何より本書は、企業が打ち出す戦略の意図やその効果、さらには今後の展開を予想する楽しさを教えてくれる。たとえば、ECビジネスでは後発のYahoo!ショッピングが、楽天市場に対抗するためにどのような戦略を取ったのか、今後の事業展開はどうなっていくのか、アメリカや中国との比較から見えるビジネスの伸びしろはどうかなどを、決算という観点から解き明かしてくれるのだ。本書を読めば、これから各社の決算発表が楽しみになること請け合いである。

それではいざ、決算の世界へ。

ライター画像
金井美穂

著者

シバタ ナオキ
元・楽天株式会社執行役員(2009年まで。当時最年少)で、現在はSearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。元・東京大学工学系研究科助教。2009年よりスタンフォード大学客員研究員。2011年、シリコンバレーにてSearchManを創業。スタートアップを経営する傍ら、Webコンテンツ・プラットフォームの「note」で「決算が読めるようになるノート」(https://irnote.com/)を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。

本書の要点

  • 要点
    1
    他人の家の家計簿を覗き見る感覚で、図やグラフが多くて読みやすい「決算説明会資料」から読んでみよう。ビジネスモデルごとに収益構造を表す方程式を覚えておけば、主要な指標の推移から好不調がわかるようになる。
  • 要点
    2
    マーケットプレイス型ECビジネスにおける「eコマース革命」以降のヤフーの勝算は、同社の検索連動型広告事業にある。
  • 要点
    3
    クレジットカードビジネスにおける「リボ払い」や「キャッシング」は、貸し倒れリスクをコントロールできれば高収益を生む。ZOZOTOWNの「ツケ払い」も実は高金利なリボ払いと同等の金融商品だ。

要約

はじめに

素人でも大丈夫! 決算の読み方
SIphotography/iStock/Thinkstock

決算書を読むことに慣れていない人は、まず「決算書はむずかしい」という思い込みを捨てるところから始めよう。決算とは、家庭でいえば「家計簿」に当たるものだ。他人の家の家計簿を覗き見るつもりで気軽に読むといい。

ただ、決算書類の中でも「決算短信」は専門的で読みにくいため、「決算説明会資料」から読んでみるのがおすすめだ。図やグラフが豊富で文字数も少なく、読みやすくまとまっている。

決算書を読むうえでは、最初にビジネスモデルごとの収益構造を理解しておこう。売上に貢献する指標を押さえておくと、その推移を見ることで会社の動向がわかるようになる。業界平均など主要な数値を覚えておけば、競合他社との比較も簡単である。

決算書に慣れるために重要なのは、とにかく読む「量」を増やすことだ。いろんな会社の決算書を読むより、同じ会社の決算書を四半期ごとに順を追って読み続けるのがいいだろう。そうするうちに、その会社のビジネスの行く末が、自分なりに予測できるようになっていく。

メディアにミスリードされないために

企業の決算発表についての報道は、安易に鵜呑みにしてはならない。たとえば米Amazonの2015年10‐12月期決算発表について、ロイターは「利益が予想を大幅に下回る」と報じた。だが、この報道は実態を正しく伝えていない。なぜなら本当の要因は、物流改善、各種設備、新規事業の立ち上げなどのための大型投資だったからだ。

Amazonの事業セグメントは北米のEC事業、北米以外のEC事業、クラウド事業(AWS)の3つに分けられる。EC事業とクラウド事業の利益率を2015年10~12月期決算で比較すると次のとおりだ。

・EC事業 :売上215億ドル、営業利益10億ドル、利益率4.66%

・クラウド事業:売上24億ドル、営業利益6.87億ドル、利益率29%

営業利益ベースの対前年比成長率は、EC事業が+37%、クラウド事業は+186%で、後発のクラウド事業がEC事業を上回りそうな勢いだ。実際、2016年4‐6月期決算では、クラウド事業の営業利益がEC事業を抜いた。

さらに言うと、Amazonのゴールはそもそも利益ではなく、キャッシュフローの最大化にある。なぜなら、ECもクラウドもスケールメリットを活かして経営効率を図るビジネスモデルだからだ。事業で生み出したキャッシュフローは大型投資に回すため、戦略上利益は残らない。こうしたことを理解せず、メディアが報道する「減益」などの言葉を聞いているだけだと、企業の真の姿を把握することはできないだろう。

【必読ポイント!】 ECビジネスの決算の読み方

eコマースのビジネスモデル
Bet_Noire/iStock/Thinkstock

eコマース(EC)ビジネスには、「直販型」と「マーケットプレイス型」がある。前者の代表格がAmazonだ。後者は楽天市場など店舗が売り手となる「店舗出店型」と、メルカリなど個人が売り手の「フリマ型」に分類される。

ECビジネスの収益構造を公式で表すと、「ネット売上=取扱高×テイクレート」となる。「ネット売上」はEC取引におけるサービス運営側の取り分で、「取扱高」はグロス売上のことだ。「テイクレート」は取扱高100に対する売上の割合を指す。

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