デザイン・ドリブン・イノベーション

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デザイン・ドリブン・イノベーション
ジャンル
著者
ロベルト・ベルガンティ 立命館大学DML(訳) 佐藤典司(監訳) 岩谷昌樹(監訳) 八重樫文(監訳)
出版社
クロスメディア・パブリッシング 出版社ページへ
定価
2,507円
出版日
2016年12月02日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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ロベルト・ベルガンティ 立命館大学DML(訳) 佐藤典司(監訳) 岩谷昌樹(監訳) 八重樫文(監訳)
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2,507円
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2016年12月02日
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レビュー

本書はいわゆる「デザイン」の本ではない。だが、デザインの本質について書かれている、きわめて野心的な一冊である。

本書のタイトルにもなっている「デザイン・ドリブン・イノベーション」という概念は、「意味のイノベーション」と言い換えられる。すなわち、「あるプロダクトが、これまでユーザーにどのようなものだと受け止められていたか」という「意味」そのものを更新し、「まったく新しいプロダクト」のありようを提案することが、このイノベーションの核心にある。

日本の白物家電に代表されるように、プロダクトのコモディティ化はどんどん進んでいる。その結果、どの商品を買っても、決定的な機能の差が見られないのが現状だ。「もっとバラエティが豊かなほうが、ユーザーにとっては選びやすいのでは?」と感じているユーザーも多いかもしれない。しかし、これはメーカーがユーザーの意向を無視したからではなく、むしろ市場調査を綿密におこない、ユーザーに寄り添いすぎたために起きている現象だと著者は指摘する。

ある意味、メーカーはユーザーの欲望・市場のニーズに応えすぎているのではないか。ユーザーが本当に望んでいるのは、今まで考えもしなかったような、しかしそれでいてすばらしいと思えるような「提案」なのではないか――「デザイン・ドリブン・イノベーション」という言葉には、そんな問題提起がこめられている。

顧客の声を反映することをずっと追求してきた「近代」のプロダクトに代わる、「現代」のプロダクトのあり方を考えさせてくれる良書だ。

池田 明季哉

著者

ロベルト・ベルガンディ (Roberto Verganti)
ミラノ工科大学のマネジメントとデザインの学部で教え、経営者に対してデザインとイノベーションのマネジメント教育を行う研究組織であるMaDe In Labを指揮するイノベーション・マネジメントの教授である。また、コペンハーゲン・ビジネススクールの客員教授であり、Journal of Product Innovation Managementの編集委員、Design Management Instituteの顧問でもある。
20年以上の研究を通して、ベルガンティ教授は、マイクロソフトやボーダフォンなどの有力な企業から、アレッシィや任天堂のような小さく力強い企業まで、100社以上のイノベーションのプロセスとその課題を調査してきた。彼の研究は、戦略・デザイン・技術マネジメントの交点にあり、Management ScienceやHarvard Business Reviewなどの学術専門誌で多くの論文を発表している。それらの研究では、経営者がいかにして画期的な戦略を考え出し、外部のイノベーターとの協力関係を築き、柔軟な開発プロセスを展開できるか、また経営者たちはそのチームの中でどのように創造性と学習を促進できるかについて新しい光明を投じてきた。イタリアでのデザインマネジメントに関する研究では、イタリアの最も権威あるデザイン賞であるCompasso d'Oroを受賞している。
ベルガンティ教授は、会社が戦略的なイノベーションを成し遂げるための支援を行うコンサルタント組織であるPROject Science(www.pro-jectscience.com)の創設者で会長でもある。彼は、Fortune 500に名を連ねる多様な企業のシニア・マネジャーに対してアドバイスを行い、また、世界中の国や地方でデザインとイノベーション政策を支援している。メールアドレスは [roberto.verganti@polimi.it

本書の要点

  • 要点
    1
    デザイン・ドリブン・イノベーションとは、市場ニーズに応えるのではなく、全く新しい「意味」を提案する「意味のイノベーション」である。
  • 要点
    2
    新しいテクノロジーは既存の「意味」を強化するために使うのではなく、新しい「意味」を創出するためにこそ使われるべきである。
  • 要点
    3
    デザイン・ドリブン・イノベーションを引き起こすためには、同じプロダクトを扱っているさまざまな「解釈者たち」とよい関係を築くことが必要不可欠である。

要約

【必読ポイント!】 デザイン・ドリブン・イノベーションとは

第3のイノベーション
g-stockstudio/iStock/Thinkstock

これまでイノベーションにおける戦略は、大きく分けてふたつあった。ひとつは、技術の躍進によって製品を進歩させる「急進的イノベーション」、もうひとつは、ユーザーのニーズをより的確に分析することで、製品が解決するべき問題を明確にする「漸進的イノベーション」である。

しかし、近年大きな成果を上げている企業やプロジェクトには、第3の戦略を採っているものがある。それが「デザイン・ドリブン・イノベーション」である。

デザイン・ドリブン・イノベーションとは、すなわち「意味」のイノベーションだ。人々が買っているのは「製品」ではなく、「意味」である。人々がモノを使うのは、実利的な理由だけはなく、感情的・心理的・社会文化的な背景も密接に絡み合っている。

市場ニーズに振り回されるな

1998年、イタリアの企業アルテミデは「メタモルフォシィ」というランプを発売した。これは、もはやランプとは呼びにくいような独創的な製品だった。

それまで、ランプは「美しいかどうか」「自分の部屋に合うかどうか」が基準とされていた。ランプの明るさは当然のこととして考えられていたために、競争は「ランプの外見」という一点に集中していた。

しかしメタモルフォシィのアプローチはまったく違った。使用者のその時の気分や必要に応じて、光の度合いが調整できるカラーライトを用い、雰囲気をつくり出す。そして、人々の気分を心地よいものにする――メタモルフォシィは、今までなかった機能をもった製品として登場したのである。こうして、アルテミデはランプの「意味」を根本から変え、人々がランプを購入する理由を覆した。

このユニークな製品について、アメリカのとあるビジネススクールの学者がアルテミデのエルネスト・ジスモンティ会長に「メタモルフォシィを開発するために、アルテミデではどのように市場のニーズを分析したのですか?」と質問したのだが、その答えが興味深い。ジスモンティ会長の答えはこうだった。「市場? 何が市場だ! 誰も市場ニーズなんか見ちゃいないよ! 私たちは人々に提案をしているんだ」。

ニーズを分析し市場に応えるイノベーションでは、既存の「意味」に対して疑問を投げかけることはせず、既存の「意味」を強調するだけにとどまる。だが、アルテミデはそうではなく、「あなたをもっと快適にするランプ」という新しい「意味」を提案した。そして、それこそがじつは人々が長らく待ち続けていたものであり、デザイン・ドリブン・イノベーションの結実なのだ。

「意味的イノベーション」と技術的イノベーション

「性能」で競うことをやめたWii
ElenaNichizhenova/iStock/Thinkstock

「意味のイノベーション」は、技術のイノベーションと密接に関わりあっている。

たとえば、任天堂のWiiが他のライバルを圧倒し、市場で最も人気のあるゲーム機になったのは、スピードと向きを感知できるようにする加速度振動測定計MEMS(ミクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)という技術をゲーム機のコントローラーに用いたからだ。技術イノベーションをうまく取り入れたことで、Wiiはどの年代の人でも、現実世界で体を動かして楽しめるという「意味」を生み出したのである。

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