スタートアップ大国イスラエルの秘密

未 読
スタートアップ大国イスラエルの秘密
ジャンル
著者
加藤清司
出版社
定価
1,500円 (税抜)
出版日
2017年02月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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スタートアップ大国イスラエルの秘密
スタートアップ大国イスラエルの秘密
著者
加藤清司
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定価
1,500円 (税抜)
出版日
2017年02月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
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レビュー

イスラエルは危険な国というイメージのみを抱いているのなら、それを一刻も早く書き換えたほうがよい。その実態は、グローバル企業がこぞってテクノロジーの投資を行う「イノベーション大国」である。

欧米各国では、イスラエルは「中東のシリコンバレー」と評されて久しい。人口約850万人、面積は四国程度という小国でありながら、スタートアップは約6000社も存在する。スタートアップへの投資額は人口比で世界一を誇り、年間800~1000社程度のスタートアップが生まれているという。また、アップル、シスコシステムズ、フェイスブック、グーグルといった名だたるグローバル企業がR&D(研究・開発)拠点を構えており、その拠点数は300以上と、群雄割拠の様相を呈している。サイバーセキュリティや自動運転、水技術、ヘルスケア。主にこうした分野で革新的な技術が次々と生み出されている。

イスラエルが世界有数のスタートアップのエコシステムを構築できているのはなぜか。彼らのゼロからイチをつくる発想力の源泉は何か。グローバル企業は現地でどんな活動をしているのか。イスラエルとの連携を成功させるには? こうした謎を解き明かし、日本企業がイスラエルとの連携に活路を見出すためのポイントを、わかりやすくまとめたのが本書である。2006年からイスラエルに注目し、徹底的に現場の「一次情報」にこだわってきた著者ならではの精緻な描写と鋭い考察には目を見張る。

イノベーションの最前線、イスラエルの動向とその本質を知りたいのなら、迷わず本書を読むべきだ。

松尾美里

著者

加藤 清司(かとう せいじ)
株式会社イスラテック代表取締役。1980年11月19日浜松生まれ。浜松北高等学校卒。大学卒業後の2006年、「ある技術」に注目し、そのルーツを調べ、イスラエルにたどりつく。すぐにイスラエルへと旅立ち2カ月過ごす。帰国後、「イスラエルのハイテク」をテーマに情報発信を開始すると、企業や行政からイスラエルに関する調査の仕事依頼がくるようになり、株式会社イスラテックの創業に至る。開始時から一貫して一次情報を得ることを重視し、独自のイスラエルスタートアップのデータベースを構築している。現在は、日本を代表するテクノロジー企業を対象に、イスラエルのスタートアップとのアライアンスを支援する。

本書の要点

  • 要点
    1
    イスラエルには、イノベーション人材の輩出を促す仕組みが国家に根づいており、世界有数のスタートアップのエコシステムが存在する。高スペックの若い人材を確保すべく、300を越えるグローバル企業がイスラエルに進出している。
  • 要点
    2
    イスラエル人は問題の本質を捉える力や、ゼロからイチを生み出す発想力に強みをもつ。
  • 要点
    3
    日本とイスラエルでは「決断するスピード」が決定的に違う。日本企業は、イスラエルのスピードに合わせることで連携の道を探ることが可能となる。

要約

なぜイスラエルは「中東のシリコンバレー」となったのか?

イスラエルがイノベーション人材の宝庫なのはなぜ?
Anchiy/iStock/Thinkstock

イスラエルは四国ほどの面積で、その半分は砂漠地帯となっている。さらには石油などの天然資源にもあまり恵まれず、4度の中東戦争や迫害を経験し、隣国との緊張関係が続く。こうした背景のもと、イスラエルは自国の産業を強化し、付加価値の高い産業を生み出す必要に迫られてきた。

国境を越えて持ち運べる「頭脳」への投資にも余念がない。イスラエルでは、高校卒業後に男性で3年、女性で2年の徴兵制がある。徴兵前に優秀な人材をスカウトするプロセスがあり、そこで選ばれた人材は、イスラエル参謀本部諜報局の情報収集を行う8200部隊などで、軍の最先端のノウハウを習得できる。この場が、起業に必要なプログラミングスキルやチームで動く重要性を学ぶ場にもなっている。また、兵役後の同窓ネットワークも強く、とりわけ8200部隊は部隊専用の起業を支援する組織までもっている。

このように、イスラエルには、イノベーション人材の輩出を促す仕組みが国家に根づいているのだ。

グローバル企業がイスラエルに進出するワケ

イスラエルには世界有数のスタートアップのエコシステムが存在する。スタートアップが生まれ、成長を遂げるには、起業家だけでなく、投資家や自治体、大学、大企業、メンターといった多様なプレーヤーが欠かせない。イスラエルでは、こうしたプレーヤー同士のかかわりが密であるため、イノベーション国家としての素地が整っているといえる。

では、300を越えるグローバル企業がイスラエルに進出するのはなぜか。最大の要因は、高スペックの若い人材を数多く確保できることだ。また新技術、発明の出所としての実績が多数あるため、研究、技術開発のアイデアが生まれやすい。

一方、グローバル企業の存在がイスラエルの人材にもたらすメリットは大きい。最前線の研究・開発にふれられるうえに、最初から世界展開を見据えて、グローバルな視野で物事を捉えられるようになるからだ。

イスラエルに起業家精神が根づいているからといって、すべてが成功するわけではない。著者の調査によると、過去10年でイスラエルのスタートアップの3社に2社は「失敗」し、企業活動を終えていた。ところが、失敗してもグローバル企業のR&D(研究・開発)に容易に戻ることができる。グローバル企業が、起業に失敗した人材を再雇用する受け皿にもなっているのだ。

世界有数のスタートアップ・エコシステムの本質

イスラエルのスタートアップへの投資金額は2015年で5000億円を越え、一人当たりでは日本の30倍にあたる。しかも、2010年以降、海外からの資金が一気に拡大している。

これは、新しい投資対象となるスタートアップが増加し続けており、それらが次々にイグジット(株式売却などによる資金回収)を果たすためだ。毎年80~100社程度のスタートアップが買収され、起業から1~2年程度で買収されるケースもある。そのため、投資家にしっかりと投資資金が還流していく。各年の買収総額と投資金額を過去5年分比較すると、平均して買収額は2倍以上にのぼる。つまり数値上、全体として「イスラエルに投資すると儲かる」というわけだ。

イグジット金額の10数%は税金として国に納められる。

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