金融e時代

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東洋経済新報社

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出版日
2017年04月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

FinTechは、わが国でもようやく浸透してきた言葉だが、FinTech先進国というとどこを思い浮かべるだろうか。もちろん、シリコンバレーに代表されるようなIT大国であるアメリカは言うまでもないが、中国もFinTechの分野では我が国の先を行く先進国である。中国人観光客ではひと頃「爆買い」が話題になったが、日本に押し寄せる中国人は大量の現金紙幣を持ち歩いているだろうか。きっと違うはずだ。彼らは、銀聯カードなどの決済ツールを使いこなし、煩わしい現金会計をすることはほとんどない。これもFinTechが実現したことの一つである。

銀聯カードとはデビットカードやクレジットカードのようなもので、中国国内の金融機関によって統一された決済ツールである。この銀聯の初代総裁が、本書の著者でもある万建華氏だ。万氏は、銀聯の設立以外にも中国の金融業界における様々なイノベーションの先頭に立ってきた人物であり、中国のFinTechにおける第一人者と言える。本書はもともと万氏が2013年に中国で出版した書籍だが、「インターネット金融の到来を予言した書」として大変話題になり、日本でも出版されることになったという。

本書に描かれた金融業界の未来予想図は現在においてもいまだ革新的であり、わが国のビジネスパーソンにとっても示唆に富む内容となっている。目まぐるしく移り変わるデジタルイノベーションの波に乗り遅れないためにも、本書を通して金融業界の行く末に思いを馳せてみよう。

ライター画像
山下あすみ

著者

万 建華
銀聯の初代総裁
現在、証通董事長。
上海インターネット金融協会会長。
1982年アモイ大学財政金融学部卒業。85年中国人民銀行研究部貨幣銀行学修士。93年オーストラリア国立大学太平洋圏研究員博士。
1985~92年中国人民銀行(本行)勤務。93年招商銀行副頭取、97年招商銀行常務副頭取に就任。国通証券公司を設立し董事長に就任。長城証券公司董事長など兼任。
2001年中国銀聯準備チームチーム長。2002年中国銀聯党委書記、総裁。
2007年上海国際集団総裁、副董事長。2008年通聯支払董事長。2010年上海国家資産委員会より国泰君安証券董事長に任命される。
2015年証通董事長(※証通は「証券業界の銀聯」と呼ばれる企業組織)。2015年上海インターネット金融協会初代会長。

本書の要点

  • 要点
    1
    近年の中国の金融業界、特に銀行の発展はめざましいものだったが、それを支えていたのはインターネットやモバイル機器の活用だった。
  • 要点
    2
    一流の企業は商品ではなく「ルール」を作る。プラットフォームを確立できた者が市場を支配することができるのである。
  • 要点
    3
    金融業界にとってビッグデータやモバイル・インターネットの活用にはさらなる可能性がある。激化する競争の中で生き残っていけるのは、あらゆる金融サービスを提供する、ユニバーサルバンクだろう。

要約

金融の変遷

光速30年

先進国での金融の電子化は1950年代に始まった。当時はまだ業務の大部分を手作業に依存していた銀行業界だったが、電子計算機の導入により生産性は格段に上昇した。中国での電子化のスタートは1970年代と遅かったが、後を追う道のりははっきりとしていた。

先進国と同様に電子計算機を導入し、1990年ごろには各営業拠点においてコンピュータ化が概ね実現した。1990年代に入ると国家をあげて金融の電子化へ資金を投じ、全国の金融機関の電子システムの統合に取り組み始めた。この流れの中で生まれたのが中国銀聯である。全国の銀行ネットワークは結ばれ、人々は銀聯カードによって中国国内のどこででも決済ができるようになった。現時点で、銀聯カードの取引規模はVISA、MasterCardに次ぐ世界第三位にまで成長している。

「待ち」にさよなら
belekekin/iStock/Thinkstock

仕事や生活のリズムが慌ただしくなっている現代社会において、人々が「待てなくなっている」のは確かだ。飲食店ではすぐに料理が出てくるのを期待するし、運転するときには比較的空いているルートを選択したいと思う。このことは、銀行の24時間化にも現れている。

利用者にとって、かつて支店で待たされることは大きな苦痛だったが、24時間営業のテレフォンバンキング、インターネットバンキング、モバイルバンキングの登場により、待ち時間は大きく短縮された。現在も、利用者がより短い時間で求めるサービスにたどり着けるよう、改良が加え続けられている。

指先の上の銀行

インターネットショッピングのような「セルフ型」のサービスが急速に普及している。金融業界においても「セルフ型」への潮流が存在する。なぜなら、セルフ型金融により、利用者はサービスを提供する拠点から完全に解放されるからである。

インターネットバンキングは金融コンサルタントを家のモニターの前に呼ぶようなものであり、モバイルバンキングはそのコンサルタントをどこへでも連れていけるようなものだ。最近では、モバイル端末の機能向上にともない、インターネット通信ができればどこからでも送金ができるし、端末のカメラを通して二次元コードを読み取れば即時決済で買い物をすることもできる。まさに「指先の上の銀行」なのだ。

決済は天下に通ず

決済の大躍進
grapestock/iStock/Thinkstock

オンライン決済の発展は、インターネットショッピングの成長と共にある。アメリカ最大の決済プラットフォームであるPayPalは、電子商取引サイトのeBayの決済に利用されたことで大きなシェアを獲得したのは有名だ。

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要約公開日 2017.09.08
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