入門クラウドファンディング

スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達法
未読
入門クラウドファンディング
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スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達法
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入門クラウドファンディング
ジャンル
出版社
日本実業出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2014年02月22日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

多くの人から少額を集める「クラウドファンディング」。近年スタートアップだけでなく大企業もプラットフォームを次々と構築しており、新規参入の話題が絶えない。さまざまなパターンが存在しており、クラウドファンディングについて、体系的に仕組みや活用事例を理解できている方は多くないのではなかろうか。そうした中で、本書はタイトル通り、クラウドファンディングの入門書として、最新の事例も交えて丁寧に解説された良書である。

私が感銘を受けたのは、クラウドファンディングを利用し、卸価格でハンドメイドのジーンズを資金提供者に直接販売した「ガスティン」、調達額に応じてゲームを発展させていく「スター・シティズン」の2つの事例だ。「ガスティン」は、これまでの非効率な流通構造を破壊し、顧客とダイレクトに繋がることで成功を収めた。「スター・シティズン」は、リリース前からファンを育て、資金面でもリスクフリーでゲームを構築している。同社の調達額は3400万ドル以上を調達し、現時点でもっとも規模の大きなクラウドファンディング・プロジェクトと言われている。

顧客と資金提供者を一致させるクラウドファンディングの活用は、ファイナンスというよりマーケティング手法として捉えると興味深い。ファンの拡大や事前購入者の確保を志向する、多くのスタートアップや大企業の新規事業担当者が活用できる革新的な仕組みであろう。本書は企業経営者、ファイナンス担当者だけでなく、マーケティング担当者にも一読いただきたい一冊だ。

ライター画像
大賀康史

著者

山本 純子
株式会社アーツ・マーケティング代表。1997年、慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。大学在学時よりゲーム業界に携わり、主にオンライン・ゲームのマーケティング、調達、事業開発等に従事。2009年、慶応義塾大学大学院アート・マネジメント分野修士課程に入学。同年末にITの力で芸術を広めるために(株)アーツ・マーケティングを創業。2011年、修士課程修了後よりクラウドファンディングの研究を始め、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、現在、企画・コンサルティング・事業開発、および講演・レクチャー等に取り組む。

本書の要点

  • 要点
    1
    クラウドファンディングとは、寄付、もしくは、将来できる製品や何らかの特典と交換する形で資金を提供する一般公募を意味する。寄付型、購入型、株式型、融資型、投資型の5つのタイプがあり、近年は購入型の成長が著しい。
  • 要点
    2
    クラウドファンディングでは、そのゲーム性によって、応募者と資金提供者が感情的な繋がりを持つ「仲間」にすらなる。
  • 要点
    3
    クラウドファンディングによって資金提供者と顧客を一致させることで、顧客が満足する商品の開発に集中できるようになる。更に、需要の見込み違いで失敗するリスクが回避できる。

要約

クラウドファンディングとは何か

劇的に進展するクラウドファンディング
Tashatuvango/iStock/Thinkstock

「クラウドファンディング」とは、その名の通り「クラウド(Crowd)=人々、大衆」からの「ファンディング(Funding)=資金調達」のことを指す。つまり、金融の専門家ではない一般の人びとから資金を集めることである。インターネット環境の改善やSNSの発達に伴い、最近はインターネットを介して行われることが多くなっている。

クラウドファンディングの定義は様々あり、例えば次のようなものである。「クラウドファンディングとは、特定の目的への独創性を支援するため、寄付もしくは将来できる製品や何らかの特典との交換という形で経済的なリソースを提供する一般公募を意味する。」

IT系ビジネスを中心として、初期の設備投資額が少ない「リーンスタートアップ」の概念に従ったビジネスの立ち上げ事例が近年増えている。IT系ビジネス以外でもCDの制作、イベント開催、スマホ関連製品の制作など、比較的少ない資金でビジネスを立ち上げられる事業アイデアは多い。こうした事業を具現化する際に、クラウドファンディングが活用されやすく、多くの人から少額ずつ集めるという手法が取られている。

クラウドファンディング世界市場

アメリカのコンサルティング会社、マス・ソリューション社によれば、クラウドファンディング市場は2010年時に843百万ドルだったのに対し、2013年には5138百万ドルに拡大する見通しであり、近年は1年ごとに倍増するペースで拡大している。

世界銀行のレポートによれば、2012年時点では、北米が全体の59・5%を占め、次いで欧州が35%であり、アジアは1%強に留まっている。

しかし2011年頃を境に、日本をはじめ、韓国、香港、シンガポール等のアジア各国でクラウドファンディング・プラットフォームが多く誕生している。世界銀行は2025年には市場規模が960億ドルにも拡大、その約半分を中国が占めるという見通しを示している。近年アジアにおいてもクラウドファンディングへの注目度は増すばかりだ。

日本におけるクラウドファンディング
olm26250/iStock/Thinkstock

日本においても、2009年には「セキュリテ」、2010年には「ジャスト・ギビング・ジャパン」が開始されている。更に2011年には投資でも寄付でもない、購入型のクラウドファンディング・プラットフォームが発展し、「クラウドファンディング」という言葉が本格的に知られ始める。2011年3月に「レディーフォー」、6月に「キャンプファイヤー」、7月に「モーションギャラリー」がサービスを開始する。その後も続々と参入が相次ぎ、既にすべてを把握するのが困難な程だ。

面白い事例として、出版企画に活用されているものもある。日本最大の印刷会社である大日本印刷とクラウドファンディングのコンサルティング、プラットフォーム運営等を行うワンモアが提携してスタートする「ミライブックスファンド」だ。

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