男性論

ECCE HOMO
未読
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ECCE HOMO
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出版社
文藝春秋
定価
836円(税込)
出版日
2013年12月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ヤマザキマリ」と聞いてピンとこないビジネスパーソンの方もいることだろう。累計900万部を超える大人気漫画「テルマエ・ロマエ」の作家と言えば、分かる方も多いかもしれない。俳優の阿部寛と女優の上戸彩が主演で映画化もされており、こちらも大ヒットを記録した。原作の漫画を読んだことがない人でもCMや雑誌などで、その特徴的な内容を一度は見聞きしたことがあるのではないだろうか。

この作品の内容を簡単に紹介しよう。古代ローマから主役のルシウスが現代の日本(それも毎回必ず銭湯のお風呂)にワープしてきて、日本のお風呂のすばらしさに感銘を受ける(このシーンには毎回思わず笑いがこぼれてしまう)。ルシウスは再び古代ローマへと戻ると、日本で見た技術を大いに参考にしながら次々とローマの街、宮殿に画期的なお風呂を創り上げていくのだ。

ヤマザキ氏は日本のお風呂をこよなく愛するだけでなく、日本の「古代ローマ的」な感性に深く傾倒している。そして「古代ローマ的」感性を持つ男性に深く魅力を感じているようだ。本書はヤマザキ氏の独断と偏見で理想的な男性像が語られている。そう聞いた私は「女性の書く恋愛本に違いない!」と思いながら本書を読んでみたのだが、実は「歴史的人物に学ぶリーダーシップの教本」というのが本質であった。

古代ローマで活躍したハドリアヌス帝にはじまり、現代のスティーブ・ジョブズまで「古代ローマ的」な魅力を持つ男性の性質について、ヤマザキ氏の独特な感性を軸に語られた本である。私たちも彼ら歴史的偉人に男としてのリーダーシップの在り方を学ぼうではないか。

著者

ヤマザキ マリ
漫画家。1967年、東京生まれ。17歳でイタリアに渡り、フィレンツェにて油絵を学ぶ。その後、エジプト、シリア、ポルトガル、アメリカを経てイタリア在住。『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    「古代ローマ的」男性は、大きな「寛容性」を持っている。自分の知らないことを素直に受け入れ、それを自分の糧としながら新しいものを次々と生み出していくのだ。
  • 要点
    2
    「古代ローマ的」男性は、「ボーダーを越える」力を持っている。文化や宗教の壁を越え、本来であれば敵である者までも味方にしてしまう力を持っている。
  • 要点
    3
    「古代ローマ的」男性には「変人」が多く存在する。スティーブ・ジョブズは古代ローマ的=ルネサンス的な感性を持つ現代の代表的な人物である。

要約

ヤマザキマリ、漫画的日常

古代ローマ的家族と結婚
alessandro0770/iStock/Thinkstock

本書は冒頭に記したとおり、ヤマザキマリ氏が古代ローマ的な魅力を持つ古今東西の男たちについて、独断と偏愛丸出しで語るというものだ。本論に入る前に、第一章ではヤマザキ氏がどのような家庭で育ち、いまどのような家庭を築いているかが紹介されている。

ヤマザキ氏は自らを半分外国人、半分日本人だと称している。幼いうちに亡くなった父は母と同じく音楽家。唯一勤め人であった祖父は銀行の海外支店で働いており、日本人的アイデンティティは薄かったそうだ。父が亡くなってからは、母の仕事で世界各地を飛び回っていた。幼少期から海外の空気の中で育っていったのだという。

現在、ヤマザキ氏は14歳年下のイタリア人の夫と息子と北イタリアで暮らしている。夫ベッピーノは比較文学の研究者で、最近まではシカゴ大学で教鞭をとっていた。ヤマザキ氏が結婚したのは2002年の話。ヤマザキ氏には、イタリア人で詩人の前夫との間で授かった、デルスという息子がいた。

再婚してからというもの、働き方や家族との過ごし方の違いなど、異文化ならではの難しい経験もしたという。しかし、ベッピーノの行動は家族のことを最優先に考え、物事に柔軟に対応する「古代ローマ的」な性質ゆえのものであり、そこに惹かれるのだ。

ヤマザキ氏を魅了する「古代ローマ的」男性とは一体どのような性質を持っているのだろう? 次章を見ていきたい。

男性論Ⅰ 「古代ローマ」な男たち

芸術家の顔を持つ政治家、ハドリアヌス

まず本書の初めに紹介される男性は、130年代に活躍したハドリアヌス帝である。

ハドリアヌス帝は他の皇帝とは少し毛色の異なる、複雑で多元性のある人物であった。喩えるならば、友達としてはいてほしいけれど、家族にしたら苦労しそうなマイペースの天才。ひとに仕事を任せるよりも、すべてを自分でやらないと気がすまない、探究心と自尊心が一緒になったタイプである。文化面でも多くの功績を残した彼は、「戦争よりも文化と芸術を愛する」皇帝として名を残した。ちなみにハドリアヌス帝は今なおローマに残るパンテオンの設計者でもある。

前皇帝トライアヌス帝が現在のハンガリーからルーマニアあたりまでを征服したのを受け、ハドリアヌス帝は「広げたのはいいのだけれども、これからローマをどうするべきか?」と考え、それまでの領土拡大路線から方向転換をはかった平和主義者として知られる。

ハドリアヌス帝の21年の治世のうち、視察旅行に費やした月日は実に13年。やみくもに戦うかわりに別部族の有力者たちと話し合っては、ローマ市民権を与えたり、和解調停案を提示したりと、発展よりも保守保全を重視していく。ハドリアヌス帝は「寛容性」を目指していたのだ。ギリシャをはじめ、各国の文化に傾倒し積極的にローマに取り入れた姿勢も「寛容性」のあらわれであろう。

ルシウスに見る古代ローマの寛容性
Igor Zakowski/iStock/Thinkstock

ヤマザキ氏が考える、古代ローマの美点とは「寛容性」である。この「寛容性」というキーワードに基づくと、『テルマエ・ロマエ』がいかに「古代ローマ的」思考によってできあがった作品であるかが理解できるのではないだろうか。

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