ブラック・フラッグス
「イスラム国」台頭の軌跡 上

未 読
ブラック・フラッグス
ジャンル
著者
ジョビー・ウォリック 伊藤真(訳)
出版社
定価
2,484円
出版日
2017年08月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
3.0
要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
この要約を友達にオススメする
ブラック・フラッグス
ブラック・フラッグス
「イスラム国」台頭の軌跡 上
著者
ジョビー・ウォリック 伊藤真(訳)
未 読
書籍情報を見る
ジャンル
出版社
定価
2,484円
出版日
2017年08月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
3.0
本の購入はこちら
レビュー

2004年、香田証生(こうだしょうせい)という日本のバックパッカーの青年がイラクで拉致され殺害されるという、とても痛ましい事件があった。

本書の主役は、その事件の首謀者アブー・ムサブ・アッ=ザルカウィだ。ザルカウィは「イスラム国」の前身グループのリーダーとしてテロを実行し、数多くの人を殺(あや)めていった。このような人道に反することを、なぜ彼は躊躇なく実行できたのか。本書によれば、そこには「罪」の意識が働いていたという。

もともとザルカウィは飲んだくれのごろつきとして地元では有名だった。だが更生を願う母親が、ザルカウィをモスクの宗教講座に入門させたことですべてが変わった。ザルカウィは禁酒を誓い、祈りの言葉を唱えるときはいつも涙した。そして「おれは過去の行ないのおかげで、シャヒード――殉教者――にならないかぎり、何をしたってアラーは許してはくれまい」と語った。

ザルカウィがかつての自分と、殺害対象である「背教者」たちの姿を重ねていたかどうかはわからない。だが「背教者」たちに対するあまりに強烈な敵意は、自分の過去となんとか決別しようとする現れのようにも映る。

ザルカウィが残した種は、犠牲者の血をすすりながら「イスラム国」として芽吹き、いまもなお醜い花を咲かせている。「イスラム国」が生まれた背景を理解したければ、ただちに本書を読むべきだ。まさしくピュリツァー賞受賞にふさわしい傑作である。

石渡 翔

著者

ジョビー・ウォリック (Joby Warrick)
1960年、米国ノースカロライナ州に生まれる。テンプル大学卒業。『ニューズ・アンド・オブザーヴァー』の記者として96年、環境問題に関する報道でピュリツァー賞(公益報道部門)を共同受賞。96年以来、『ワシントン・ポスト』で中東問題を中心に、安全保障・外交・テロ・環境などの分野を専門とするジャーナリストとして活躍している。2016年、本書 Black Flags でふたたびピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞。邦訳書に『三重スパイ――CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」』(太田出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    昔から手のつけられない荒くれ者として知られていたザルカウィは、イスラーム教に目覚めたことで、暴力の対象を異教徒に向けるようになった。
  • 要点
    2
    コリン・パウエル国務長官の演説によって、それまで無名だったザルカウィは世界的な有名人になり、大勢の支持を獲得した。
  • 要点
    3
    ザルカウィが求めていたのは単なる戦争ではない。イラクを不安定にし、憎むべき背教を根絶するため、自分と同じスンナ派信者たちに武器を取らせる。それが一連のテロ行為の目的だった。

要約

ザルカウィの台頭

最悪の監獄の最悪の政治犯
Evgeniy Anikeev/iStock/Thinkstock

ヨルダンで最悪の監獄、それがアル=ジャフル刑務所だ。峠を転用したこの監獄には、何十年間にもわたって凶悪犯が収監されていた。その後しばらくは使われずに放置されていたが、1998年から再び用いられるようになった。とある危険なイスラーム過激派セクトのメンバーを隔離するためだ。

そのセクトの中でも、ひときわ存在感を発揮していた男が2人いる。ひとりはマクディシというセクトのリーダーであり、説教の能力に秀でた神学者であった。だが真にセクトを支配していたのはもうひとりの男――それこそが、のちに「イラクのアル=カーイダ」の創始者となるザルカウィである。

ザルカウィは髪の色が濃く、背は低いががっしりとしており、まるでレスラーか体操選手のような見た目をしていた。かつて入れ墨が彫ってあった右腕の一部は無理やり剥ぎ取られており、縫合した跡が痛々しく残っている。

心の温かさや機敏というものが、ザルカウィにはまるで欠けていた。ひどくすさんだ界隈で生まれ育ち、高校を中退したあとは喧嘩と軽犯罪に明け暮れる日々を過ごした。アフガニスタン戦争では無謀なほど勇敢に戦い、気に入らない人間には暴力を振るった。

そんなザルカウィだが、イスラーム教に対してはひたすら熱心だった。監獄の中ではコーランの暗記に没頭し、かつての無秩序な暴力は鳴りを潜めた。

だがそれがかえって、ザルカウィの憤懣(ふんまん)を凝縮してしまったのかもしれない。アラーの敵と見なした者への、際限ない憎悪というかたちで。

そしてその男が解き放たれる
Evgeniy Anikeev/iStock/Thinkstock

ザルカウィの刑期は2009年まで続くことなっていた。だがヨルダンでは実際の刑期通りになることはほとんどない。

フセイン一世国王が死去し、長男のアブドゥッラーが新しい国王になると、アブドゥッラーは国内の囚人に対して大赦を宣言した。ヨルダンでは建国以来、新国王が暴力犯罪以外の囚人や政治犯に恩赦を与えることになっている。イスラーム主義者や各地の諸部族からポイントを稼ぎ、政権を安定させるためだ。

だがそれは痛恨のミスだった。国会議員らが釈放する価値のある囚人を選定していったのだが、そのリストにはザルカウィをはじめとした、例のセクトのメンバーも含まれていたのだ。のちにアブドゥッラーは側近に対して「どうして誰もチェックしなかったんだ?」と怒鳴りつけたが、すべては後の祭りだった。

こうしてザルカウィは5年ぶりに自由の身になった。ザルカウィは血のつながっている家族と獄中の仲間たちという、2つの「家族」の間で揺れた。刑務所でともに苦難を過ごした仲間たちはザルカウィに忠実で、どこへでも喜んでついてきた。しかしザルカウィにとって、とくに母親は大切な存在だった。

結局ザルカウィは両方を選んだ。釈放されて家族のもとに戻ったその日に、ふたたび刑務所に戻り、指揮官のごとく囚人たちの様子を確かめに行ったのだ。

当時、この刑務所の医師だった男は「これぞリーダーという姿でした」とザルカウィを称え、こう付け加えた。「この男の運命は2つに1つしかないと思いました。名を轟かすことになるか、さもなければ死だと」。

テロリストがアイドルになるとき

晴れて自由の身になったザルカウィは、その後いくつかの国を転々としながら、次の戦場をイラクに定めた。

当時のアメリカ政府がザルカウィに注目しはじめたのは、2002年10月28日のアメリカ人外交官暗殺事件がきっかけだ。アメリカ政府は、アル=カーイダと繋がりのあるザルカウィこそが暗殺を命じた張本人であること、そしてアル=カーイダとサダム・フセインのあいだには実行的な関係があることを確信していた。中央情報局(CIA)から「明確な証拠はない」と伝えられていたにもかかわらずだ。

そして2003年2月5日、世界ははじめてザルカウィを知った。

要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
「本の要約サイト flier(フライヤー)」は、多忙なビジネスパーソンが本の内容を効率的につかむことで、ビジネスに役立つ知識・教養を身につけ、スキルアップに繋げることができます。具体的には、新規事業のアイデア、営業訪問時のトークネタ、ビジネストレンドや業界情報の把握、リーダーシップ・コーチングなどです。
この要約を友達にオススメする
ブラック・フラッグス
ブラック・フラッグス
「イスラム国」台頭の軌跡 上
著者
ジョビー・ウォリック 伊藤真(訳)
未 読
書籍情報を見る
ジャンル
出版社
定価
2,484円
出版日
2017年08月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
3.0
本の購入はこちら
この要約を友達にオススメする
ブラック・フラッグス
未 読
ブラック・フラッグス
ジャンル
グローバル 政治・経済
著者
ジョビー・ウォリック 伊藤真(訳)
出版社
定価
2,484円
出版日
2017年08月10日
本の購入はこちら

related summaries
一緒に読まれている要約

チャヴ
チャヴ
オーウェン・ジョーンズ 依田卓巳(訳)
未 読
リンク
理化学研究所
理化学研究所
山根一眞
未 読
リンク
習近平が隠す本当は世界3位の中国経済
習近平が隠す本当は世界3位の中国経済
上念司
未 読
リンク
航空産業入門
航空産業入門
㈱ANA総合研究所
未 読
リンク
「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略
「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略
中村正人
未 読
リンク
若い読者のための第三のチンパンジー
若い読者のための第三のチンパンジー
ジャレド・ダイアモンド 秋山勝(訳)
未 読
リンク
セガ vs. 任天堂
セガ vs. 任天堂
ブレイク・J・ハリス 仲達志(訳)
未 読
リンク
不道徳な見えざる手
不道徳な見えざる手
ジョージ・A・アカロフ ロバート・J・シラー 山形浩生(訳)
未 読
リンク

weekly ranking
今週の要約ランキング

1
天才を殺す凡人
天才を殺す凡人
北野唯我
未 読
リンク
2
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
桑野麻衣
未 読
リンク
3
お金の流れで読む日本と世界の未来
お金の流れで読む日本と世界の未来
ジム・ロジャーズ 大野和基(訳)
未 読
リンク

Recommendations
イチオシの本

出版社のイチオシ#014
出版社のイチオシ#014
2019.05.17 update
リンク
【五月病予防】やる気を取り戻すための本5冊
【五月病予防】やる気を取り戻すための本5冊
2019.05.09 update
リンク
『儲けのしくみを誰でもつくれるすごいノート』酒井 威津善
【書店員のイチオシ】 『儲けのしくみを誰でもつくれるすごいノート』酒井 威津善
2019.05.03 update
リンク
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年5月号)
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年5月号)
2019.05.01 update
リンク

Interview
インタビュー

「人生で大事なことはティー道が教えてくれた」
【インタビュー】 「人生で大事なことはティー道が教えてくれた」
2019.05.20 update
リンク
人生という「ゲーム」を攻略するには?
【インタビュー】 人生という「ゲーム」を攻略するには?
2019.04.25 update
リンク
「勝間式超コントロール思考」で人生が変わる!
【インタビュー】 「勝間式超コントロール思考」で人生が変わる!
2019.04.08 update
リンク
「名著は『現代を読む教科書』」
【インタビュー】 「名著は『現代を読む教科書』」
2019.04.03 update
リンク
1
天才を殺す凡人
天才を殺す凡人
北野唯我
未 読
リンク
2
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
桑野麻衣
未 読
リンク
3
お金の流れで読む日本と世界の未来
お金の流れで読む日本と世界の未来
ジム・ロジャーズ 大野和基(訳)
未 読
リンク
出版社のイチオシ#002
出版社のイチオシ#002
2018.08.10 update
リンク
フリーランス書店員が語る、「知の探索」を促す書店とのつきあい方
フリーランス書店員が語る、「知の探索」を促す書店とのつきあい方
2019.01.16 update
リンク