若い読者のための第三のチンパンジー
人間という動物の進化と未来

未 読
若い読者のための第三のチンパンジー
ジャンル
著者
ジャレド・ダイアモンド 秋山勝(訳)
出版社
定価
935円(税込)
出版日
2017年06月08日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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人間という動物の進化と未来
著者
ジャレド・ダイアモンド 秋山勝(訳)
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定価
935円(税込)
出版日
2017年06月08日
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3.8
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

人間は、チンパンジーと遺伝子を98%以上共有している。そういう意味でも、人間はまちがいなく哺乳類の一種だし、動物に区分されるべきだ。しかし同時に、私たちがチンパンジーと明らかに異なっているのも事実である。

本書は、人間とチンパンジーを分けているものは一体何なのか、さらには「人間とは何か」という疑問について、深く考えるための一冊だ。進化生物学者である著者は、人間だけを特別視しない。代わりに、人間を地球の歴史の一部として捉えることで、その進化について考察を進めていく。

人類には他の動物には見られないさまざまな特徴がある、と著者は語る。言語を使うこと、芸術活動をおこなうこと、性行為がかならずしも繁殖に直結しないことは、その代表例だ。こうした特徴について、本書では他の動物の行動と比較しながら考察がおこなわれており、これがなかなか興味深い。また、「大量虐殺をおこなうのは人類だけではない」という事実も意外なものであったし、人類の発展に大きく貢献した農業が、実は人類にネガティブな影響をもたらしていたことにも驚かされる。

なによりも、本書は専門的な研究やデータに基づいたものでありながら、初心者にもわかりやすく書かれている。進化生物学の領域に興味がある人、あるいは単純に人類の起源を知りたい人への「入門書」として、非常にすぐれた一冊である。

ライター画像
池田明季哉

著者

ジャレド・ダイアモンド (Jared Diamond)
1937年ボストン生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。進化生物学者、生理学者、生物地理学者。アメリカ国家科学賞受賞。著書『銃・病原菌・鉄』(草思社)でピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞。同書は朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位に選ばれた。他に『人間はどこまでチンパンジーか』(新曜社)、『セックスはなぜ楽しいか』(草思社)などの著書がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間を人間たらしめているのは「言語」である。複雑な発声を可能にする咽頭周辺の発達があったために、人間は言語を手に入れ、発展を遂げることができた。
  • 要点
    2
    人間の場合、子孫を最大数残すことが最大の目的とはかぎらない。繁殖とは無関係な性行動や、繁殖ができない年齢になっても生き延びる老人の存在は、人間に特有のものだ。
  • 要点
    3
    農業によって、人口は大きく増えた。しかしその代わりに飢饉や疫病が生じ、不平等な階級社会も誕生した。
  • 要点
    4
    ジェノサイド(大量虐殺)は人間だけに見られる特徴ではないが、他の動物をここまで急速に全滅させてきたのは人間だけである。

要約

【必読ポイント!】 哺乳類としてのヒト

ヒトになる
Goce Risteski/Hemera/Thinkstock

人間とチンパンジーの違いは、遺伝子で見ればごくわずかだ。しかし、このわずかな違いが、私たち人間とチンパンジーを決定的に分けている。では私たちとチンパンジーは一体何が違うのだろうか。

地球上に生命が誕生したのが数十億年前であることを踏まえると、人類の祖先がチンパンジーの祖先から分かれたのは、ほんの1000万年から600万年前と、ごく最近のことだ。人類の祖先は、400万年前に二足歩行を始めたと言われている。

250万年前ごろになると、より人間らしい特徴である道具の使用が見られるようになる。この時期にはいくつかの先行人類が存在していたが、生き残ったのは1種だけだ。それが現生人類の祖先であるホモ・エレクトゥスである。彼らは道具を使うことで、他の先行人類との生存競争を勝ち抜いたと考えられている。

その後、ホモ・エレクトゥスはホモ・サピエンスへと進化を遂げ、3種の原始人に分かれていく。(1)ヨーロッパと西アジアに住んでいたネアンデルタール人、(2)アフリカに住み、現代人と似た身体的特徴を持っていた集団、(3)東アジアに住んでいたと見られる集団である。

このうち、東アジアに住んでいたと見られる集団については、よくわかっていない部分が多い。一方、ネアンデルタール人とアフリカに住んでいた集団については、原始的な石器を用いていたことがわかっている。ただ、彼らには人間にとって最も重要な資質である「革新性」、すなわち、新しいものを生み出していく能力が備わっていなかった。では、人類の革新性は、どのように得られたのだろうか。

人類の大躍進
SIphotography/iStock/Thinkstock

人類の大躍進は、およそ6万年前に始まった。私たちの祖先(クロマニヨン人と呼ばれることが多い)が大きくその居住区を広げ、先住のネアンデルタール人にとって代わっていったのだ。

その大躍進を起こした要因は、DNAのわずか0.1%に起きた変化、すなわち「言語」の登場にあった。私たちの祖先は、ある時点から複雑な話し言葉を操れるようになった。そして、発明する力を急速に発達させていった。

類人猿も、口から出す音によってコミュニケーションを取っている。しかしヒトと違い、彼らに複雑な言語活動は見られない。では、なぜチンパンジーは複雑な自然言語を発達させてこなかったのか。それは、のど周辺の構造の違いに原因がある。

ヒトが言葉を話せるのは、声帯がある喉頭や舌など、たくさんの構成要素と筋肉が正しく機能しているためである。一方、類人猿は限られた母音と子音しか発音できない。そのため、複雑な言葉を話すことができない。ヒトをヒトたらしめたのは、声道に生じた、きめ細かく音声をコントロールし、幅広い発声を可能にするという変化だったのである。

言語が生まれたことで、狩りの段取りや道具の作り方など、複雑な情報のやり取りが簡単にできるようになり、自分とは異なる集団や、次の世代に知識を伝えることも可能になった。人類の革新性は、言語の獲得によって生まれたのだ。

ヒトの特殊なライフサイクル

ヒトの性行動

ライフサイクルという観点でも、人間と他の動物はずいぶん異なっている。

ライフサイクルは、1回の放卵や出産でどれぐらい子どもを生むか、母親や父親が子どもの世話をどれくらいおこなうか、大人はどのような社会的関係を結ぶのか、雄と雌はどうやって相手を選ぶのか、平均的な寿命はどれぐらいなのか等によって形づくられる。

特にヒトの性行動は、他の哺乳類とはまったく違う。

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