ドキュメント 金融庁vs.地銀
生き残る銀行はどこか

未 読
ドキュメント 金融庁vs.地銀
ジャンル
著者
読売新聞東京本社経済部
出版社
定価
760円 (税抜)
出版日
2017年05月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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ドキュメント 金融庁vs.地銀
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生き残る銀行はどこか
著者
読売新聞東京本社経済部
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定価
760円 (税抜)
出版日
2017年05月20日
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総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

いま、地方銀行が空前の再編ラッシュを迎えているのをご存知だろうか。その理由は簡単、稼げなくなっているからだ。日本の人口減少はこれからも加速していくと予想されるため、この先の経営環境はますます厳しいものになっていくと思われる。

そのうえ、地銀は根本的な問題も抱えている。バブル崩壊後、不良債権問題の後処理に追われた地銀は、リスクを恐れて担保や保証に頼る融資を続けた。その結果、取引先の成長性を見極めて融資する「目利き力」が衰えてしまったと本書は指摘する。こうした地銀に対し、将来を見すえた経営改善に取り組むよう、テコ入れを始めたのが金融庁である。地銀が再編の動きを見せているのは、金融庁による業界改革の流れとけっして無関係ではない。

本書が秀逸なのは、金融業界の現状とこれからを、金融庁と金融機関の両方の視点から描いているところだ。地銀だけでなく、金融行政に関わる幅広いテーマが扱われているため、日本の金融業界全体を俯瞰するうえでも役に立つ。また、金融とテクノロジーを融合した新たなサービス「フィンテック」の登場が、日本の金融業界にどのようなインパクトをもたらしているのか(あるいは、もたらしていないのか)についても言及されており、こちらも興味深い。

いずれにせよ、金融業界が時代の大きな変わり目に直面しているのは間違いない。日本の「いま」と「これから」を捉えるうえで、大きな示唆を与えてくれる一冊である。

石渡 翔

著者

読売新聞東京本社経済部(よみうりしんぶんとうきょうほんしゃけいざいぶ)
読売新聞東京本社経済部の担当記者が、金融庁、金融機関などに行ってきた取材をまとめた。

本書の要点

  • 要点
    1
    金融庁は、森信親氏が長官に就任したことで、その影響力を拡大し続けている。
  • 要点
    2
    人口減少やマイナス金利導入の影響などにより、従来のやり方だけで地域金融機関が生き残るのは難しくなっている。
  • 要点
    3
    金融庁が地域金融機関に求めているのは、顧客からの信頼を勝ちとり、豊かな生活を送るうえで役立つ金融サービスを提供することだ。
  • 要点
    4
    これからの金融庁の役割は、金融機関の間違いを正すだけではなく、将来を予測し、あるべき方向に導くことだと森氏は考えている。

要約

新・最強官庁としての金融庁

弱くなる財務省、強くなる金融庁

長きに渡り、霞が関における「最強官庁」といえば財務省であった。

しかし、2012年に発足した第2次安倍内閣が、その構造に決定的な変化をもたらした。「官邸主導」の政治スタイルを完全に定着させたのだ。これにより、それまで大きな存在感を発揮していた財務省の影響力は、陰りを見せることになった。

財務省の代わりに存在感を高めたのが、財務省の「弟分」である金融庁である。特に、森信親氏が長官に就任した15年から、その影響力は強まりつつある。経済成長のために打ち出された新たな政策を、金融庁は着実に実現させており、首相官邸からの信頼も厚い。こうした活躍により、いま金融庁は「新・最強官庁」とも呼ばれ始めている。

森改革の3つの特徴
phototechno/iStock/Thinkstock

金融庁長官である森氏は、自らが先頭に立って問題を解決しようとし、自分が納得できない政策についてははっきりと否定する、「尖った」スタイルの人物だ。

森氏が進めてきた改革には、3つの特徴がある。

1つ目の特徴は、金融機関などの自主的な努力を促すため、「コード」(原則)を活用していることだ。金融サービスの質や、日本の金融市場の魅力を高めたい場合、法令だけではどうしても限界がある。そこでコードの出番である。コードとは、企業がサービスや市場の品質向上に向けて取り組むべき原則のことを指す。コード自体はあくまで指針であるため、コードに同意するかどうかは企業の判断に委ねられる。しかし、その場合は理由を説明しなければならない。

2つ目の特徴は、銀行経営の実態を客観的なデータで把握しようとすることである。「地域経済の活性化に全力を尽くしている」とアピールする地方銀行(地銀)は多いものの、行動が伴っているかどうかは千差万別だ。そこで、客観的な数字を示させることにより、必要であれば金融機関に経営改善を求めていく。

3つ目の特徴は、PDCAサイクルの導入だ。具体的には年に1度、「行政方針」といった形で、年間の行動計画を具体的に提示している。金融庁のやり方が適切かどうか、中立的な外部の専門家を金融行政の「モニター委員」として配置して意見を聞く。そして年間結果を「金融レポート」の中で明示し、翌年以降の改善につなげていくのである。

「森を見ろ 森だけを見ろ 森を見ろ」
Rawpixel/iStock/Thinkstock

金融庁がさまざまな改革を推し進めることができたのは、ひとえに森氏の強いリーダーシップがあったからこそだ。だがその結果として、金融庁は森氏個人への依存度を高めてしまった。それは2016年夏、金融庁の若手職員が作った「森を見ろ 森だけを見ろ 森を見ろ」という川柳が、庁内だけにとどまらず、あっという間に金融業界に広まったことからも明らかである。

こうした状況下で、森氏が長官の座を退くと、改革が中途半端になってしまうリスクがある。また、あまりに森氏の存在感が強いことから、金融庁にとって不都合な意見が無視されてしまう危険性も憂慮されてしかるべきである。

いずれにせよ、この問題を最も気にかけているのは森氏自身だろう。だが、どのようにしてこの問題を解決していくかについては、不透明なままだ。

【必読ポイント!】 地域金融機関のいま

このままでは生き残れない

地域金融機関はいま、激動の中にいる。人口減少が進み、融資先を得るのがますます難しくなっている。

民間有識者の組織「日本創成会議」は2014年、全国の約半数にあたる896自治体が消滅の危機に直面すると分析した。しかも、海外に活路を見いだせるメガバンクと異なり、地域金融機関に逃げ場はない。もはや、従来のやり方だけでは生き残りは難しい。

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