世界一訪れたい日本のつくりかた

新・観光立国論【実践編】
未読
世界一訪れたい日本のつくりかた
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新・観光立国論【実践編】
未読
世界一訪れたい日本のつくりかた
出版社
東洋経済新報社

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定価
1,650円(税込)
出版日
2017年07月20日
評点
総合
4.5
明瞭性
5.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

金融や財務に通じながらも、日本の自然や伝統文化に詳しい著者だからこそ書けた、渾身の一冊である。日本の観光産業の現状を分析し、今後取り組むべき観光戦略を丁寧に描いている。

観光は世界的に大きな産業になっており、今後も成長が期待されている分野だ。日本も海外観光客の誘致に力を入れており、2016年には2400万人を突破した。訪日観光客数は順調に増加しているといえる。

しかし、「日本の実力はまだまだこんなものではない」というのが著者の意見である。観光資源を磨いて整備さえすれば、2030年に6000万人の訪日観光客を迎えることさえ夢ではないという。

ただしそのためには、ニーズにあった設備やサービスの提供、そしてターゲットに合わせたPR戦略が必要不可欠である。特に、遠くの国から日本に来て長期滞在し、お金を落としてくれる「上客」は最大のターゲットだ。いま、訪日観光客の約半数が中国人と韓国人だという事実を踏まえると、「今後は欧州の観光客を開拓することに力を入れていくべき」という著者の意見は傾聴に値する。

観光の基本となる要素は、自然、気候、文化、食の4つだ。そして日本は、これら4つの要素すべてに恵まれている。日本が持っている強みを活かし、世界屈指の観光立国になる方法とは何か。日本のこれからに関心があるのであれば、迷わず本書を読むべきだ。

ライター画像
河原レイカ

著者

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社代表取締役社長。三田証券社外取締役。元ゴールドマン・サックス金融調査室長。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年に同会長兼社長に就任。日本の伝統文化を守りつつ、旧習の縮図である伝統文化財をめぐる行政や業界への提言を続ける。2015年から対外経済政策研究会委員、京都国際観光大使、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議委員などを務める。2016年には財界「経営者賞」受賞。『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『国宝消滅』『デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論』(いずれも東洋経済新報社)、『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』(講談社+α新書)等著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界全体で、観光業は今後も順調に伸びていくと予想される。
  • 要点
    2
    訪日観光客は2016年に2400万人を超えた。しかしやり方次第では、2030年に6000万人へ到達するのも夢ではない。
  • 要点
    3
    観光の基礎の4条件は、自然、気候、文化、食である。日本はこれらすべてに恵まれているうえ、多様性に富んでいるのも強みである。
  • 要点
    4
    欧州へのPRを強化するべきだ。特に、観光好きといえるドイツ人を対象にした誘致策に力を入れるのが望ましい。
  • 要点
    5
    日本はこれまで文化観光に力を入れてきたが、今後は自然観光にも力を入れていくべきである。

要約

観光業における日本の実力

観光産業は無視できない

世界旅行ツーリズム協会(WTTC)の試算によると、観光産業は全世界のGDPの10%を占めており、雇用全体の11分の1を生み出している。また、国連の世界観光機関(UNWTO)は観光輸出の総計を1.5兆ドルと発表している。これは世界総輸出の7%に当たる数字だ。

かつては、「観光に力を入れるのは途上国」というイメージがあったかもしれない。しかしいまの観光業は約170兆円規模という、先進各国にとっても無視できない巨大産業と化している。

観光産業の成長性
anyaberkut/iStock/Thinkstock

UNWTOによると、全世界の国際観光客数は1950年の2500万人から増加を続けており、2015年には11.9億人に達した。今後も順調に伸びる見込みで、2030年には延べ18億人になると予測される。2030年の世界総人口はおよそ85億人と予測されていることから、地球上の5人に1人に相当する国際観光客が海外旅行を楽しむ「大観光時代」に入る計算になる。

国際観光客の出身国を見てみると、海外に旅行する人(アウトバウンド)は欧州からが一番多く、5.9億人となっている。次がアジアの2.9億人であり、これにアメリカ大陸諸国が2.0億人と続いている。

このなかでも際立っているのがアジアの伸びだ。1980年から2015年までの世界全体の増加率が4.3倍だった一方で、アジアでの増加率は12.2倍であった。

日本のポテンシャルはすごい

2016年、日本を訪れた外国人観光客は2403万9053人であった。これは前年比と比べると21.8%の増加だ。しかし、日本の観光が持つ潜在能力から考えると、この実績でも十分とはいえない。

観光産業の基礎の4条件は、自然、気候、文化、食であり、日本はそのすべてを備えている。しかも、日本には「多様性」があふれている。観光資源が多様であればあるほど、観光客数は増えるものだ。

このまま観光資源を磨いて整備していけば、2030年に6000万人の訪日観光客を迎えることも夢ではないだろう。

【必読ポイント!】 観光戦略の進捗と今後の誘致戦略

訪日客の約半分は中国人と韓国人
kitchakron/iStock/Thinkstock

いまのところ、訪日外国人観光客の85%がアジアからの観光客だ。なぜなら、これまでの誘致策は、近隣諸国を対象としたものが主だったからである。特に、中国人ツアー客や韓国からの観光客をターゲットとしたものが多く、中国が26・5%、韓国が21・2%と、2カ国で全体の47・7%を占めている。

このような、近隣諸国を対象とした誘致策自体は間違いではない。しかし、2030年に訪日外国人観光客を6000万人にするという目標を達成するためには、長期滞在して日本にたくさんのお金を落としてくれる「上客」を、より多く確保しなくてはならないのも事実だ。

幸運なことに、日本には地理的なアドバンテージがある。世界の観光客のおよそ半分は欧州に住む人々であり、彼らは観光にお金を使う傾向にある。しかも、遠い国に旅行した時のほうが、隣国へ旅行した時よりも、お金を落としてくれるのだ。

欧州からのインバウンドを狙え

2015年のデータを見ると、欧州からは142万人しか日本に訪れていない。これは訪日観光客全体のわずか5.9%だ。欧州の潜在市場は1億1880万人と見積もられていることからも、日本にはまだまだ大きな伸び代が残されているといえる。

とはいえ、欧州といってもさまざまな国があり、観光への嗜好も多種多様なため、計画性と戦略性に富んだPR戦略が必要である。

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