95歳まで生きるのは幸せですか?

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95歳まで生きるのは幸せですか?
出版社
出版日
2017年09月29日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「長生きしたいか?」と問われれば、多くの人はしたいと答えるに違いない。しかし、そこには当然「健康な状態で」という条件が付いているはずだ。

近頃は「健康寿命」という考え方が注目されており、平均寿命と比較すると10年程の差があることがわかっている。つまり、現実には、たとえ長生きできたとしても、人生の最後に「不健康」な期間を過ごす可能性が高い。しかも健康寿命と平均寿命の差は、今後も広がる傾向にあるという。はたして、長生きすることは本当に幸せなのだろうか。

この答えを探すべく、ジャーナリストの池上彰氏が、95歳の作家、瀬戸内寂聴氏と語りあった。その対談の様子をまとめたのが本書である。長生きの先にある幸せと不幸せ、「いただいた命」という考え方についてなど、異色の組み合わせの2人が語り尽くす。

ユーモアをまじえつつも宗教者としての重みのある寂聴氏の言葉、そして日本の現状をわかりやすく解説し「老い方」について語る池上氏の言葉によって、本書はとても読み応えのある内容になっている。

忙しい毎日を過ごす人々が日頃「老い」や「死」を考えることはほとんどないかもしれない。しかし、それらは誰に対しても平等に、いつか必ずやってくるものである。一度きりの人生を後悔なく生きるために、ときには立ち止まって、人生の先輩たちの声を聴く時間も大切なのではないだろうか。

ライター画像
二村英仁

著者

瀬戸内 寂聴 (せとうち じゃくちょう)
1922年、徳島市に生まれる。作家、僧侶。東京女子大学卒業。1957年、『女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)』(新潮社)で新潮社同人雑誌賞、1961年、『田村俊子』(文藝春秋新社)で田村俊子賞、1963年、『夏の終わり』(新潮社)で女流文学賞受賞。1973年、平泉中尊寺で得度受戒。法名・寂聴。1974年、京都・嵯峨野に「寂庵」を開く。1992年、『花に問え』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞、1996年、『白道』(講談社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。1997年、文化功労者に選出。1998年、『源氏物語』(講談社)現代語訳完訳。2006年、イタリア国際ノニーノ賞、文化勲章受章。2007年、比叡山禅光坊住職に就任。2008年、安吾賞受賞。最近の著書に『老いも病も受け入れよう』(新潮社)、『求愛』(集英社)、『わかれ』(新潮社)などがある。

池上 彰(いけがみ あきら)
1950年、長野県に生まれる。ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。慶應義塾大学卒業後、1973年NHK入局。報道記者として、松江放送局、呉通信部を経て東京の報道局社会部へ。1994年より11年間、『週刊こどもニュース』でお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題に。2005年にNHKを退職し、フリーのジャーナリストとして活躍中。著書に、『伝える力』『情報を活かす力』(以上、PHPビジネス新書)、『アメリカを見れば世界がわかる』(PHP研究所)、『池上彰の新聞ウラ読み、ナナメ読み』(PHP文庫)、『知らないと恥をかく世界の大問題8』(角川新書)、佐藤優氏との共著に『新・リーダー論』(文春新書)、『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    「老後」と呼ばれる年齢まで生きることができたら、それだけでもう十分に恵まれている。授かりものの命、すなわち「いただいた命」を大切に、自分らしく生きていけば良い。
  • 要点
    2
    「自分だけが幸せでも、幸せとは言えない」。本当の幸せとは、縁あって同じ時代に生きる全ての人々が幸せであることである。
  • 要点
    3
    人は老いや死を意識すると、「人はなぜ生まれ、死んでいくのか」といった根源的な疑問を抱くようになる。そのときこそ、宗教や哲学が役に立つし、人はその面白みを感じることができる。

要約

瀬戸内寂聴が語る、歳を重ねてわかる真実

本当の老後は88歳から
Highwaystarz-Photography/iStock/Thinkstock

誰もが「長生きの秘訣」を求めている。ただしそれは「元気な状態で」という条件付きだろう。寂聴氏も、88歳を過ぎた頃、入院や寝たきりの日々を経験し、95歳になった今は、長生きしすぎたかと切実に感じている。

それまでは、自分自身が老人である自覚さえなかったというが、圧迫骨折によって体が動かせなくなり、痛みと辛さに耐えることや人に世話をかけることが続いた。こんなことなら、88歳あたりでスッと消えてしまえればどんなによかったかという考えが頭をよぎったこともある。

しかし、私たちは自分の寿命を決めることはできない。人に迷惑をかける前に人生を終えたいと願っても、いつか来る死を事前に知る術はない。「人は自分の人生さえも自分でコントロールできない」、これが人間の根源的な「苦」であるとお釈迦様は説いている。この「苦」を、身をもって感じるのがだいたい88歳だと、寂聴氏は自らの経験をもとに語る。否が応にも肉体的に不具合が生じてくる、この年齢からが本当の「老後」であるといえる。

寂聴流健康法

小説を書くために徹夜もいとわず、講演や法話で全国を飛び回る日々。そのような生活の中、寂聴氏は健康に気を使った記憶はあまりないという。むしろ、気を付けている暇はなかった。

しかし、20歳と51歳のとき、体に大きな変化をもたらした出来事があった。まず、20歳のとき経験した断食である。もともと体が弱いと自覚していたため、新聞広告で見つけた大阪の断食道場の門を叩き、そこで40日間過ごした。断食によって体の毒素が全て排出される。それはまるで、細胞1つ1つが入れ替わったような感覚だった。そして断食後は、極端な偏食もすっかり治ってしまったそうだ。当然、断食には危険が伴うこともあり、全ての人に適しているわけではないが、寂聴氏にとっては良い結果となった。

もう1つの出来事が、51歳のときの「出家」である。僧侶としての修業は、毎日30キロの山道を登り降りする「三塔巡拝」や、全身を何百回と床に投げ出す「五体投地礼(ごたいとうちらい)」などの荒行があり、想像以上に過酷だった。こうした荒行を経て、全身はより一層丈夫になった。普段から足腰を鍛え、基本的な体力をつくることは重要なことだ。

また、好きなものを好きなだけ食べることも、寂聴氏にとっては外せない健康法だ。もちろん、医者のアドバイスには耳を傾けるが、自分の体の声にも従う。肉を好きなだけ食べることが寂聴氏の元気の源であるように、人それぞれにふさわしい食生活をすることが大切である。

自分らしく生きよう

病や老い、そして死と同様、人は生まれることについてもコントロールできない。自分の命は、自分の意思で生み出したものでなく、授かりものである。

人は生まれた瞬間、死に向かって歩き始める。幼くして命を落としてしまう子もいれば、80歳、90歳と長生きできる人もいるが、死はいつか必ずやってくる。それがいつかわからないからこそ、一日一日、一瞬一瞬に目を向け、大切に生きるべきである。

「過去を追ってはならぬ。未来を願ってはならぬ。過去はすでに捨てられ、未来はまだ来ていない。」これは『一夜賢者の偈(げ)』というお経の一節である。過ぎ去った過去ではなく、まだ見ぬ未来でもない、今この瞬間を一生懸命生きることで悔いのない人生を送ることができる、と諭している。

もし、「老後」と呼ばれる年齢まで生き抜くことができたら、それだけでもう十分に恵まれているのだ。せっかくいただいた命を大切に、周りの意見を聞くのもほどほどにして、自分らしく生きていけばよい。

【必読ポイント!】池上彰が瀬戸内寂聴に問う「命」について

「歳をとった」と感じるのはどのようなときか?
zhuda/iStock/Thinkstock

寂聴氏が歳をとったなと感じるとき、それは、昨日できていたことが今日にはもうできないと自覚するときである。たとえば、日課であった朝の散歩も今では辛くてとてもできない。庭に出るのもままならないという。

現在、世の中で問題になっているのは、平均寿命と健康寿命の差だ。日本人の平均寿命が80歳を超えたのに対し、健康寿命は70代に留まっている。つまり、多くの人が人生の最後には不自由な状態で過ごさなければならないということだ。

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要約公開日 2017.12.24
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