カレーライス進化論

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ジャンル
出版社
イースト・プレス

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定価
924円(税込)
出版日
2017年05月20日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

カレー界で知らない人はいない、スパイス&カレーの専門家である水野仁輔氏による著書である。2020年に東京でオリンピックが開催される時、著者は海外に向けて日本のカレー文化の魅力をもっと発信していきたいという。

日本には、独自の進化を遂げた「カレーライス」がある。日本にカレーが伝わったのはおよそ150年ほど前だという。もともとインドで生まれたカレーはイギリスに伝わり、ブリティッシュカレーとして日本にやってきた。その後、日本人の好みに合うような味が追求され、一般家庭でも食べられるようにカレー粉やカレールウ、レトルトカレーが開発されていった。さらにカレーは、さまざまな食べ物と組み合わさって、バラエティ豊かに発展している。ここまでカレーが国民に愛され、発展していった国はほかにはない。

本書には、そんなジャパニーズカレーの歴史から、大手カレーチェーン店「ゴーゴーカレー」や「カレーハウスCoCo壱番屋」の海外展開事情、カレーのおいしさの構造分析、衝撃的なドリップカレーについてなど、カレーについての知識やニュースがたっぷりつまっている。そして、著者だからこそ見通せるジャパニーズカレーのこれからについて、考察している。関心のあるところをパラパラとめくるだけでも、身近な存在であるカレーのいろいろな姿を、案外知らなかったということに気づくだろう。読後は、カレーを、いっそうおいしく味わえるようになる一冊である。

ライター画像
名久井梨香

著者

水野 仁輔(みずの じんすけ)
AIR SPICE代表。カレースター。
スパイス&カレーの専門家として、日本全国各地のイベントに出張して、ライブクッキングを行ったり、「カレーの学校」の講師をするなど、幅広く活躍している。『カレーの教科書』(NHK出版)、『スパイスカレー事典』(PIE BOOKS)などカレーに関する著書は40冊以上。

本書の要点

  • 要点
    1
    大手カレーチェーン店の「ゴーゴーカレー」や「カレーハウスCoCo壱番屋」は、海外にも出店し、成功を収めている。今、ジャパニーズカレーは世界へ進出している。
  • 要点
    2
    カレーは明治時代の文明開化のころに、インドからイギリスを経由して日本に伝わってきた。その後、日本では国産のカレー粉が開発され、カレールウ、レトルトカレーなどが誕生した。「カレー味」という概念も生まれ、日本独自のカレー文化が発達した。
  • 要点
    3
    これからの日本のカレー文化が進化していくためには、ジャパニーズカレーのおいしさの理由を体系的に整理し、開示して共有する「カレーのオープンソース化」が必要だ。

要約

世界へ羽ばたく日本のカレー

マンハッタンで成功をおさめたカツカレー
SeanPavonePhoto/iStock/Thinkstock

カツカレーは、日本のカレーを世界に広める潜在力を秘めている。それは、「ゴーゴーカレー」のニューヨーク進出のようすからもうかがい知ることができる。

「ゴーゴーカレー」は、日本国内では70店舗以上も展開するカレーチェーン店である。ライスの上にカレーソースとトンカツが乗り、カツにはトンカツ用のソースがかけられ、脇には千切りキャベツが添えられた「金沢カレー」を提供している。その「ゴーゴーカレー」は、2007年にタイムズスクエアへ出店し、2017年現在、マンハッタンに6店舗を展開している。アメリカでも混雑するほどの人気ぶりで、ニューヨーク1号店は月商300万円からスタートし、10年間右肩上がりの成長を続けているという。今では月商1000万円を売る店に成長しているそうだ。

実は、日本のフードチェーン店において、マンハッタンで大きな成功をおさめている企業は意外にも少ない。たとえば「牛角」と「大戸屋」は各3店舗、ラーメンブームを巻き起こした「一風堂」さえも店舗数は増えていない。マンハッタンで展開する日本のフードチェーン店では、「ゴーゴーカレー」の6店舗が最大の店舗数となる。

ただ、「ジャパニーズカレー」の知名度はまだまだのようだ。まだ、ニューヨークでは「カレー」というと、インドカレーかタイカレーを想起する人が多く、「ゴーゴーカレー」は、ジャパニーズカレーというよりもカツカレーの店として認識されているという。また一部のアメリカ人には、ゴーゴーカレーはニューヨーク発祥のカレーと思われているという。

「カレーの総合商社」を目指すゴーゴーカレーは、アメリカで1000軒、いずれは5大陸55か国に展開するという未来を目標にしている。

ココイチはインドに向かう

ちなみに、「世界で最も大きいカレーレストランのチェーン店」としてギネス世界記録に認定されているのは「カレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)」である。2017年2月現在、ココイチの店舗数は1457店。国内が1296店で、そのほかは海外だ。

これまでココイチは中国、台湾、韓国、タイなどに出店してきたが、2017年内にはイギリスのロンドンに出店することを発表している。イギリス出店は、じつはインド出店のための布石のようである。浜島社長は、カレーのルーツであるインドにココイチを出店したいという希望を持っているが、いきなりインドに出店するのはハードルが高い。そこで、インドからイギリスを経由して日本に伝わったというカレーのルーツを逆にたどって、まずはイギリス出店を目指すということになったそうである。

インドからイギリス、そして日本へ

日本にカレーが伝わってきたルート
Toa55/iStock/Thinkstock

そもそも、日本にカレーがやってきたのは明治維新(1868年以降)のころといわれている。文明開化が起こり、舶来のものには憧れがあった。その中にブリティッシュカレーがあったのだ。

カレーは、インドから日本に直接伝わったのではなく、イギリスから「洋食メニュー」や「海軍メニュー」として日本に伝わってきた。ブリティッシュカレーの特徴は、カレー粉を使う点だ。カレー粉とは複数種類のスパイスをブレンドしたもので、イギリス人が発明したといわれている。インド人のように単体のスパイスを自由自在に組み合わせる技術がなかったため、あらかじめ混ぜておけば簡単という発想である。

一方で、日本に本格的なインドカレーが登場したのは1920年代である。つまり少なくとも約60年間は「インドカレーは知らないが、カレーは知っている」という状態が続いたことになる。そして、そのあいだにも、ジャパニーズカレーは独自の進化を遂げていったのである。

カレー粉、カレールウ、レトルトカレーの誕生

日本でカレーがメジャーになるまで

日本で初めて外食カレーが提供されたのは、記録として残っているものをたどれば、1877年、フランス料理を看板に掲げた東京の「風月堂」による。もりそばが1枚1銭だった時代に、カレーライスはその8倍の値段がした。仮にもりそばが300円だとしたら、カレー一皿が2400円もすることになる。このように、当時のカレーは高級料理であり、ハイカラ品であった。

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要約公開日 2017.12.23
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