人生の勝算

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出版社
出版日
2017年06月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

秋元康氏や堀江貴文氏など、各界の著名人が「天才」と呼び、いま最も注目される起業家の一人。それが著者の前田裕二氏である。本書を開けばすぐに、彼の成功を生み出したのは、決して天賦の才能のおかげだけではないことに気づくだろう。彼の人生は「血の滲むような努力」のもとに築かれているといってよい。

幼くして直面した両親の死、お金を稼ぐために街中でギターを弾いた幼少期、逆境を糧に大きな成功をめざして、寝る間も惜しんでがむしゃらに働いた証券マン時代、身近な人の死、そして起業。彼の人生を辿るとそこには必ず大切な人の死が存在する。時間は有限だということがはっきりと心に刻まれているからこそ、彼は「天に召されるその一瞬前までやりたいことをやり尽くす」と自分を追い込んでいるかのようだ。

著者が立ち上げたSHOWROOMは、コミュニティ形成を重視した仮想ライブ空間をつくり、アーティストなどがライブを配信でき、ユーザーと双方向のコミュニケーションを楽しめるサービスである。コミュニティが今後さまざまなビジネスの成功の鍵だという彼の見解は、読みどころの一つである。

何より注目すべきは、彼の死生観だ。死は全ての人に平等であり、今この瞬間も確実に人生は終わりへと近づいていることを気づかせてくれる。

「人生の勝算」、それは彼が必死に自分と向き合った末、手に入れた「人生のコンパス」である。彼の生き様にふれれば、一度きりの人生を力強く生きようと思わずにはいられないだろう。

ライター画像
二村英仁

著者

前田 裕二 (まえだ ゆうじ)
1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入行。2011年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億~兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があったDeNAのファウンダー南場智子に相談したことをきっかけに、2013年5月にDeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。2015年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM株式会社 代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。

本書の要点

  • 要点
    1
    「コミュニティ」とは人と人の絆の集合体である。モノの消費よりも「自分の物語」の消費が好まれる現代において、コミュニティの形成はあらゆるビジネスの成功の鍵になる。
  • 要点
    2
    ビジネスにおける成功の秘訣は、どんな相手でも好きになる努力をすること、そして当たり前のことを徹底的にやり切ることである。
  • 要点
    3
    「人生のコンパス」とは、自分の価値観が反映され、進むべき道を指し示す指標である。人生のコンパスを持つには、徹底的に自分と向き合うことが必要だ。

要約

人は何にお金を払うのか?

弾き語りから生まれたビジネス戦略
Mike Watson Images/moodboard/Thinkstock

著者は8歳の頃に両親を失い、いくつもの逆境を経験した。中でも、お金の不自由さは真っ先に払拭したいコンプレックスだったという。

当時小学生だった彼がお金を稼ぐために選んだのは、アコースティックギターによる路上での弾き語りだ。この経験こそが、後に事業を立ち上げる際の原点となる。

しかし、弾き語りを始めてすぐに壁にぶつかった。まず、行き交う人が立ち止まってくれない。歌がもっと上手になればいいのか、あるいは演奏技術を高めるべきか。そこで著者は、冷静にお客さんの立場になって考えた。「自分なら立ち止まるだろうか」。みすぼらしい感じの小学生の路上演奏なら、答えがNOなのは明らかだった。

著者は、演奏する曲をオリジナル曲からカバー曲へ変更した。提供するコンテンツを「未知から既知」にすることで、人々により大きな影響を与えられる、という仮説のもとである。結果は上々、立ち止まる人の数は徐々に増えていった。

しかし、すぐに収入という、第二の壁が目の前に立ちはだかった。音楽で食べることが最大の目的にもかかわらず、1ヶ月500円の売上ではあまりにも少ない。そこで、著者はセレブのイメージがある港区白金へと、場所を変えた。しかし、港区白金では、当時流行っていたカバー曲を歌っても道行く人は足を止めてくれない。今度は語り継がれていた名曲を演奏すると、街行く女性たちの興味をひくことができた。そうやって工夫を重ねるうちに、半年後のギターケースには、多いときには月10万円ほどのお金が入るようになっていた。

「濃い常連客」を獲得する3つのステップ

半年間の試行錯誤の末、お金を稼ぐために最も大切なことは「濃い常連客」を獲得することだと著者は学んだ。そのためには次の3つのステップがあるという。

1つ目は、お客さんを、会話のキャッチボールが成立する「コミュニケーション可能範囲」に引き込むことである。通常、人は警戒心を抱いて素通りして行く。

著者の場合は、演奏項目を手書きで書いたボードを掲げることだった。小学生が歌うとは思えない歌謡曲を提示することで、道行く人が立ち止まらずにはいられない仕掛けをつくり、これが奏功した。

続いて2つ目のステップは、お客さんからのリクエストに時間差で応えることだ。リクエストされた歌を無理して歌うのではなく、来週の同じ時間に来てほしいと、次回の約束を取りつけた。その背景には、歌の上手さとは別の土俵で戦うため、聞いてくれる人とより深く心を通じ合わせるため、という狙いがあった。1週間後に練習を重ねた曲を披露すると、お客さんには、「自分のために1週間も練習してくれた」というストーリーを付加価値として提供できる。

そして3つ目のステップでは、仲良くなれたお客さんにオリジナル曲を披露する。初めは見向きもされなかったオリジナル曲も、「絆」という価値が加わることで、聴く人にとって特別な曲へと昇華するのである。音楽を通じてしっかりお金を稼げるようになった経験は、のちに著者がSHOWROOMを立ち上げる際の重要な原体験となった。

あらゆるビジネスの鍵「コミュニティ」
PongsakornJun/iStock/Thinkstock

コミュニティは絆の集合体である。コミュニティの形成は今後あらゆるビジネスにおいて無視できないほど、重要な要素になる。なぜなら、コミュニティには現代人が望む価値が詰まっているからだ。

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要約公開日 2017.12.17
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