立て直す力

感情を自覚し、整理し、人生を変える3ステップ
未読
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感情を自覚し、整理し、人生を変える3ステップ
未読
立て直す力
出版社
出版日
2017年02月07日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

人は、物語を紡ぐ生き物である。その能力は、太古から、神話や民話を通して、危険や教訓を他者に伝えるためにも使われてきた。また、リサーチによれば、健康な精神状態の人でも、選択や決断などに際して驚くほどたくさんの物語を作話しているのだという。

本書が着目するのはこの能力である。失敗や挫折を経験したとき、脳内で安心や納得を得るためにも、物語をつくる能力は発揮される。たとえば、仕事がうまくいかないとき、たまたま不運だっただけかもしれないのに、自分の能力が足りないせいだと急いで辻褄を合わせてしまう。込み入った事情が薄められた、単純でわかりやすいストーリーを脳が好むためだ。

このとき、辻褄合わせのストーリーに身をゆだねず、自分の感情を見つめ、なぜそうしたストーリーを選択してしまったのかを突き詰めれば、新しい結末を得るために何をすればいいかが見えてくる。それこそが、著者が事例研究の末にたどりついた、「逆境から自分を立て直す」プロセスだ。

なんとなく立ち直るのではなく、「立て直す」。つまり本書は「失敗は成功のもと」のプロセスを、理論として提示しているといえる。つまずいて転んだら痛い。心身も傷つく。ただ、あきらめずに気持ちを立て直して進んでいけば、成功だけではなく、豊かな人間性や感性、より幸せな人生を手に入れることができる。本書から得られる学びを、多くの方に活かしていただきたい。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

ブレネー・ブラウン
ヒューストン大学ソーシャルワーク大学院研究教授。The Daring Way社CEO。人間の弱さと勇気、恥と信頼について長年の研究をまとめ、企業やNGO、NPO、学校、家族のなかで役立つメソッドを提唱。その画期的な研究はアメリカの公共放送PBSと公共ラジオ放送NPRで紹介されている。また、2010年に行われたTED×ヒューストン大学のトーク「傷つく心の力(The Power of Vulnerability)」は圧倒的な共感をもって支持され、「もっとも視聴されたTEDトーク ベスト5」に入った。著書『「ネガティブな感情(こころ)」の魔法』(三笠書房)、『本当の勇気は「弱さ」を認めること』(サンマーク出版)に続き、本作も「ニューヨーク・タイムズ」紙のNo.1ベストセラーに輝く。テキサス州ヒューストンに、夫と二人の子どもとともに暮らしている。

本書の要点

  • 要点
    1
    逆境から自分を立て直すプロセスは、まさにその逆境の中にいるときに起こる。自分の感情を自覚し、自分がつくりあげたストーリーを整理し、修正すべきポイントを見つける。そして、偽りのない力強い結末に書き換え、新たなストーリーを生きることができれば、人生を変えられる。
  • 要点
    2
    ストーリーを整理すると、その時の自分を支配しているテーマが浮かび上がってくる。たとえば、期待どおりにならなかったことへの失望や、失敗を恥じる気持ちなどだ。自分でつくったストーリーと現実の差を冷静に見つめれば、新たなストーリーを描くために役立つ、多くのめぐみを得られる。

要約

立て直すプロセス

大事なのは第二幕
haveseen/iStock/Thinkstock

ある休暇のこと、著者は、夫と湖で泳いでいた。よい気分になった著者は、夫と気持ちを通じ合わせたかったが、夫にそっけなくされ、傷つけられたように感じた。激しい怒りと不安でいっぱいになり、著者は泳いで桟橋まで戻った。水からあがって夫と話すとき、著者は不名誉な思いに耐え、相手を信頼する勇気を奮い起こした。結果、このいさかいは大喧嘩に発展せずに済んだ。

このできごとは、ある特別なこととして著者の心に残っていたが、「逆境から自分を立て直すプロセス」として、大きな気づきを得たのは少し後のことになる。

講演で招かれたピクサー・アニメーション・スタジオで、著者は、「物語の第二幕にいちばんてこずらされる」という言葉に出会った。ストーリーテリングの伝統的な三幕構成は、主人公が(1)冒険に出かける(2)問題を解決するための方法を探す(3)学んだことを実行し、帰還する、である。第二幕には、「どん底」の状況が含まれ、「闇のなか」にたとえられる。この第二幕は面倒で厄介だが、しかし、魔法が起きるのはまさにここなのだという。

著者夫婦のいさかいの第二幕にあたるのは、「激しい怒りと不安でいっぱいになり、泳いで桟橋まで戻った」部分だ。水の中で著者は、激しい怒りにかられて、自分は被害者で夫は報いを受けるという筋書きを考えていたが、やがて、夫が報いを受けるべき結末を望んでいるわけではないことに気づいた。そして、結末を変えたいのなら、別の筋書きを紡げばいいと考えた。夫には何の悪意もなかったという筋書きを。

自分のつくった筋書きにふりまわされなかったことが、よい結果を生んだのだ。これこそ、「逆境から自分を立て直す」プロセスだったのだ、と著者は思い至った。

自分を立て直す3つのステップ

挫折や失敗をして傷ついても、本心からではない筋書きにふりまわされず、最良のストーリーを改めて描けば、人生を変えられる。より上質で幸せな人生を実現することができるのだ。

ストーリーを描きなおし、自分を立て直すプロセスには、3つのステップがある。

まず、「感情を自覚する」こと。自分の気持ちをしっかりと見つめ、現在のストーリーを理解する。

次に「整理整頓する」こと。自分を支配している、自分がつくりあげたストーリーを客観的に点検し、修正すべきキーポイントを見つける。

そして最後は「劇的に変わる」。ストーリーを、偽りを排した力強い結末に書き換えると、自分も世界も変わる。

自分の感情を自覚する

なぜ、自分の感情を自覚できないのか
NiroDesign/iStock/Thinkstock

自分を「立て直す」ためには、最初のステップとして「感情を自覚する」ことが必要だ。

しかし、気持ちの上で「自分をさらけ出して、失敗した」状態であることを認めるのが苦手な人はとても多い。「なぜかわからないけれど、どこかに隠れてしまいたい」「胸になにかつかえているような感じ」といったことを意識できればいいのだが、自分の感情に無頓着な人は、気持ちを特定しない。そして、「自分は負け犬だ」など、別のことに置き換えてしまうのだ。

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要約公開日 2017.12.27
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