学問のすゝめ

未読
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学問のすゝめ
出版社
出版日
1942年12月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

『学問のすゝめ』といえば、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」という冒頭の一節が大変有名である。他人の自由を妨げずに安楽に生きていくことにおいて、人間は平等だ。だからこそその権利を行使して、快適な生活をするために学問をしようと著者は主張しているわけである。

このあまりにも有名な冒頭の一節や本のタイトルから、学問の大切さを説いた書物であると思っている人は多いかもしれない。たしかに、学問は本書における大きなテーマのひとつだ。

しかし本書を構成する17編すべてを通して見ると、著者が本当に意図しているのは、日本を近代国家に導き、国民を近代市民に育てることであったと考えられる。

維新という国家的大変革の時代にあって、声を大にして文明開化論を主張していた著者は、時には乱暴な意見であるとして批判され、脅迫状を受け取ったり、命を狙われたりすることもあったという。

それでも著者は、新しい日本の思想的指導者としての任務を自らに課し、国民を奮い立たせた。だからこそ国民の多くに受け入れられ、本書は驚異的なベストセラーとなったのだ。

当時の我が国におけるさまざまな封建的旧物が撤廃される時代の流れと、人心の戸惑いや期待感などを肌で感じながら、じっくりと読んでいただきたい一冊である。

ライター画像
金井美穂

著者

福沢 諭吉 (ふくざわ ゆきち)
(1834~1901) 思想家・教育家。慶応義塾の創立者。豊前中津藩士。大坂の緒方塾で蘭学を学んだのち、江戸に蘭学塾を開き、また英学を独習。幕府の使節に随行し三度欧米に渡る。1868年塾を慶応義塾と命名。73年(明治6)明六社の創立に参加。82年「時事新報」を創刊。個人および国家の独立自尊、社会の実利実益の尊重を主張した。著「西洋事情」「学問ノススメ」「文明論之概略」など。

本書の要点

  • 要点
    1
    「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」とは、すべての人は平等であり、生まれながらにして上下の区別はないという意味だ。しかしこれは暮らしぶりの平等ではなく、権理通義の同等を指している。
  • 要点
    2
    政府は国民の代理人である。法律を実施する権力を政府に任せたのだから、国民は国法に背いてはならないし、政府の諸経費はすべて国民が負担する税金でまかなわれてしかるべきである。
  • 要点
    3
    人は誰しも、多少なりとも身につけたものがあれば、それを社会のために役立てたいと考えるのが普通だ。そうして文明の恩恵が後世に伝わっていくのである。

要約

学問

賢人と愚人を分けるもの

すべての人は平等であり、生まれながらにして貴いとか卑しいとかいう違いはない。

しかし世の中には、お金持ちもいれば貧しい人もいる。あるいは、位の高い人もいれば位の低い人もいる。いったいなぜ平等に生まれたはずの人間に、このような差ができてしまうのだろうか。

江戸時代に寺子屋の教科書として使われた『実語教』には、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」という一節がある。賢い人と愚かな人の差ができてしまうのは、その人がしっかり学んでいるか学んでいないかによって決まるのである。

学ぶべきは「実学」
CherriesJD/iStock/Thinkstock

世の中には、医者や学者、政府の役人、経営者などの頭を使う難しい仕事もあれば、単純な力仕事のように頭よりも体を使う仕事もある。

頭を使う難しい仕事にはどうしても学んでいる人が就くことになるため、身分は高く、収入も多くなる。一方、学んでいない人には体を使うだけの簡単な仕事しか回ってこない。しっかりした仕事につきたいのならば、学問に励む必要がある。

学ぶべき学問とは、難解な古文を読み、和歌を楽しみ、詩を作るといった文学ではなく、日常生活の役に立つ学問、つまり「実学」である。たとえば文字を習い、手紙の書き方や帳簿のつけ方を学び、そろばんを練習してはかりの使い方を覚えることだ。そのほか、地理学や究理学(物理学)、歴史、経済学なども「実学」に数えられよう。

実学は誰もが身につけるべき学問である。こうした学問を学ぶからこそ、身分や職業に関係なく、それぞれ自分の務めを果たして家業を営んでいけるからだ。そして一人一人の独立が、一家の独立、ひいては国家の独立にもつながっていくのである。

分限を知る

学問をするうえでは、分限(自分の身の程)を知ることが重要である。人は生まれたときから自由自在に生きられるが、自由ばかりを主張していては、自分勝手な我がまま者になって身を持ち崩すことになるからだ。

分限というのは、人の心を大切にし、他人に迷惑をかけずに自分自身が自由に振る舞える限界のことをいう。たとえば「自分のお金で酒に溺れて身を持ち崩そうと自由ではないか」と思うかもしれないが、決してそうではない。一人の放蕩ぶりが周囲に悪影響を与えて社会の風俗を乱すのであれば、その罪を許してはいけない。

また、これは個人だけでなく国についてもいえる。日本も西洋諸国も同じ天地の間にあって、互いに通い合う心を持った国民だ。恥じることもなく誇ることもなく、互いに相手国の便宜を図り、幸せを祈るべきである。自然の道理と人として行なうべき正しい道に従って国際交流を深め、自国の身の程というものを知らなければならない。

権理通義

人が同等なのは権理通義
XtockImages/iStock/Thinkstock

はじめに書いた「人間は生まれたときから上下の区別なく、みんな等しく自由自在に生きていける」というのは、生活状況が同等といっているわけではなく、権理通義の同等を意味している。

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要約公開日 2017.12.31
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