サッカーマティクス
数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」

未 読
サッカーマティクス
ジャンル
著者
デイヴィッド・サンプター 千葉敏生(訳)
出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2017年06月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
3.5
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数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」
著者
デイヴィッド・サンプター 千葉敏生(訳)
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定価
1,800円 (税抜)
出版日
2017年06月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

サッカーの醍醐味はなにかと問われたら、とにかくチームの組織力が求められる点だと答えるだろう。1人のスター選手だけで勝つことが圧倒的に難しいスポーツ、それがサッカーだ。

すべての選手が自分の役割を果たし、パスや動きを通じて味方と連携することで、「チーム全体は部分の総和を上回る」。逆にいえば、どれだけのスター選手であっても、自分の手柄だけを考えていると害になってしまう。あらゆるスター選手がチームワークの重要性を強調するのはそのためだ。結局のところ、チームで求められているプレイをすることは、スター選手にとっても有益なのである。

本書のすばらしい点は、こうした知見を、数値として分析・呈示している点だ。読みすすめていけば、普段サッカーを観ない人であっても、「チーム全体が部分の総和を上回る」という現象が数学的に理解できるはずである。

もちろんこうした現象は、サッカーだけに見られることではない。たとえばある社員の能力がいくら突出していたとして、その人単体が出せる成果は、社員全員が連携して出す成果には遠く及ばないだろう。

サッカー観戦に新たな視点をもたらしてくれる読み物としても純粋におもしろいし、チームワークについて考える際にも有益なヒントが見つかる、知的好奇心を刺激する一冊である。サッカーに興味がある方はもちろんのこと、数学に関心がある方(ちなみに数学に関する専門知識は不要だ)、同僚や取引先と協働することが欠かせないビジネスパーソンに、ぜひ本書をおすすめしたい。

若旦那

著者

デイヴィッド・サンプター (David Sumpter)
ロンドン生まれ、スコットランド育ちの数学者。マンチェスター大学で数学の博士号を取得。オックスフォード大学とケンブリッジ大学で研究職に就いた後、スウェーデンに移り、現在ウプサラ大学の応用数学の教授。世界各地で、伝書鳩の飛び方、拍手の伝染、アリや魚の群れの動きなどの生物学的・社会学的現象を数学的に分析する研究に携わり、日本でも北海道の中垣俊之らと粘菌のネットワークについて共同研究した。大のサッカーファンで、ヨーロッパ各国のリーグから女子リーグまでに詳しく、空き時間には子供たちのサッカーチームで指導している。サッカーと数学を融合させた本書は、英国のスポーツ関連の新聞・雑誌・ウェブなどで好評を博している。

本書の要点

  • 要点
    1
    パスのネットワーク、攻撃の幾何学的構造、選手の動きの流れなど、さまざまなパターンが発生するサッカーは、もっとも数学的なスポーツといえる。
  • 要点
    2
    ゴールとはチームが築く「構造」の結果だ。
  • 要点
    3
    選手が互いを信頼しあい、自分の役割に専念し、互いの動きを同期させることで、チーム全体のパフォーマンスは部分の総和を上回る。
  • 要点
    4
    他の選手がチームのために力を出して自分の役割を果たしている場合、スター選手もチームのためにプレイしたほうが、より大きな利益を得られる。

要約

サッカーは数学的なスポーツである

数学はパターンを記述する言語

日本で「数字に馴染みのあるスポーツといえば?」と聞けば、きっと野球を思い浮かべる人が多いだろう。単打数、二塁打数、三塁打数、防御率、奪三振数、チーム順位、連勝数――野球ファンならこれらの数字を記憶し、選手やチームの優劣を論じるものだ。

しかし著者はサッカーがもっとも数学的なスポーツであると主張する。なぜならサッカーは「チームワーク」のスポーツだからである。パスのネットワーク、攻撃の幾何学的構造、選手の動きの流れなど、サッカーではじつにさまざまなパターンが発生する。数学はまさにそのパターン記述に適した言語なのだ。

パスの要衝――香川真司
ilyailya/iStock/Thinkstock

一流の日本人サッカー選手の多くが、チームワーク重視のドイツ「ブンデスリーガ」に所属しているのは興味深いことだ。

そのなかでもスター的存在なのが、ボルシア・ドルトムントのゲームメーカー香川真司である。著者は2015/16シーズンのドルトムント対ハノーファー96(1-0でドルトムントの勝利)で、パス・ネットワークがどうなっていたかを分析した。すると、香川が前にいる3人のアタッカーを結びつける役であること、そして左サイドからの攻撃の起点となるゲームメーカーだということがわかった。

当時のドルトムントは、センターバックのマッツ・フンメルス、ネヴェン・スボティッチが攻撃を組み立てていた。彼ら2人が左右にパスを出し合いながら前進の機会を伺い、左サイドの香川、右サイドのイルカイ・ギュンドアンというつなぎ役を介して、アタッカーへとパスを回していく。すべての選手が自分の役割を果たし、パスや動きを通じて連携する。だから「チーム全体が部分の総和を上回る」のだ。

バルセロナがくりひろげる幾何学

鉄道網とバルセロナの共通点

サッカーを俯瞰的にとらえようとするとき、もっとも適切な対象はフォーメーションである。

2011/12シーズンのバルセロナを例にとろう。彼らのパス・ネットワークを見ると、360度あらゆる方向に対してパスを出せるように、それぞれの選手の間に三角形が構成されていた。この三角形こそが、バルセロナの強みであるボール・コントロールとパス回しを可能にしていた。

大きな角度をもつ三角形で空間を埋め尽くすという意味では、バルセロナのフォーメーションと東京近郊の鉄道網は似ている。効率的な鉄道網が国じゅうを鉄道路線で埋めつくしているのに対し、バルセロナはピッチ上をパスという導線で埋めつくしているのだ。

ゴールはチームが築く「構造」の産物
natasaadzic/iStock/Thinkstock

鉄道網と異なり、サッカーのフォーメーションは状況に合わせて形を変える必要がある。

ここでバルセロナのリオネル・メッシと周囲のチームメイトに注目してみよう。メッシはアンドレス・イニエスタやシャビ・エルナンデスにパスを出すと、前方に入ってすぐにまたボールを受け取るという動きをくりかえしていた。

このパス回しにおけるメッシ、イニエスタ、シャビそれぞれの位置取りがすばらしい。彼らは相手チームのペナルティ・エリア際で、ゾーンを三角形で分割し担当していた。だから効率的なパス回しができたのだ。

これを数学的に、「パス回しを成功させるべく、ピッチ上で幾何学がくりひろげられていた」と表現したい。ゴールはチームが築く「構造」の結果として生まれるのである。

集団行動の法則

バルセロナはたしかにピッチ上で幾何学をくりひろげる。しかし選手たちは、なにも頭のなかで数学を実践しているわけではない。

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