弟子・藤井聡太の学び方

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弟子・藤井聡太の学び方
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2018年02月15日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書の著者である棋士・杉本昌隆氏と藤井聡太氏の出会いは、2009年3月の東海研修会だった。この研修会は、本格的に将棋を指したい子どもたちが集まる場所である。小学校高学年から中高生が多いなか、将棋盤の前に座っていた、ひときわ小さな男の子が藤井氏だった。

とある対局でのこと。藤井氏は一見堅実な手を指して勝利したが、対局後の感想戦で明かされた手並みは実に鮮やかなものだったという。リスクをあえて負い、数手先で勝敗をひっくり返すような手を仕込んでいた。まだアマチュアとはいえ、豊かな発想力と天性のひらめきがあったと著者は当時を振り返る。

藤井氏は史上最年少の14歳2カ月でプロ棋士となった人材だ。天才的な資質をもっていることは想像に難くない。天賦の才に恵まれて羨ましいと思う人もいるかもしれない。しかし彼の強さは、才能の上にあぐらをかいてもたらされたものではない。本書を読んでいくと、そのことがよくわかる。

藤井氏は、いわゆる戦術書などに頼らない。戦いの場では常に最初から、自分の頭で考え抜く。好きだからこそ熱中できるという面もあるだろう。しかし決して楽をせず、手を抜かず、とことんまで追求する彼の姿勢には心を打たれるとともに、背筋が伸びる思いだ。

将棋がわからなくとも十分に楽しめる一冊である。将棋と真摯に向き合う棋士たちの姿は、私たちに学びの本質を示唆してくれる。目標に向かってがんばっている人にとっては、とくに得られるものが多いだろう。ぜひお手に取ってみていただきたい。

ライター画像
金井美穂

著者

杉本 昌隆 (すぎもと まさたか)
1968年11月生まれ、愛知県名古屋市出身。1980年6級で(故)板谷進九段門。1990年10月1日四段。2001年5月、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。2006年2月10日七段。2008年、「NHK将棋講座」の講師を務める。本格派振り飛車党で、特に相振り飛車については棋界きっての研究家として知られている。将棋の戦術書の著作は15冊以上になる。
地元の東海研修会では幹事、また杉本昌隆将棋研究室を主宰し、後進の育成にも力を注ぐ。藤井聡太の師匠として知られる。

本書の要点

  • 要点
    1
    将棋の世界でプロになれるのはごく一部のみだ。26歳までに四段になれなければ退会を余儀なくされる、厳しい世界である。
  • 要点
    2
    藤井氏は幼いころからバツグンの才能を見せる一方で、自らの鋭い手によって転んでしまうこともあった。だが欠点はそれ自体が「個性」だ。何事も平均的にこなすタイプは、自分の才能に気づきにくい。
  • 要点
    3
    著者が不調で負けがこんだとき、プロへの進退をも左右する大事な局面で師匠からもらった言葉。それはあえて苦境を笑い飛ばすような激励だった。

要約

将棋の世界

相手がうまいから負けるんじゃない
c11yg/iStock/Thinkstock

藤井聡太(以下、藤井)氏は幼いころ、対局で負けると火がついたように大泣きしたそうだ。それが単なる練習将棋だろうが、個人的な将棋だろうが関係なし。どんな将棋でも心底悔しがったという。

藤井氏は大差で負けている練習将棋でも、決して最後まであきらめない。とことん勝利にこだわる。そんな彼は天性の負けず嫌いであると同時に、天性の勝負師でもあると著者はいう。

将棋は一対一の勝負だ。負けても他人に責任を押しつけることはできない。だからこそ負ければ悔しい。

大事なのは敗因を見つけて、それを忘れないことである。将棋は相手がうまいから負けるのではない。自分がミスを犯すから負けるのだ。どの手が悪かったのか。どんな気持ちで、どこへ逃げたのか。同じ間違いを犯さないために、勝負がついた後の感想戦で、相手と一緒にそれを追求するのである。

プロへの狭き門と厳しい現実

当時小学3年生だった藤井氏は2011年、小学生倉敷王将戦の低学年の部で優勝。さらにJT将棋日本シリーズ子ども大会の東海地区大会・低学年の部でも優勝した。

とはいえプロになるには、日本将棋連盟のプロ棋士養成機関「新進棋士奨励会」(以下、奨励会)への入会が必要だ。その受験にあたってプロ棋士の師匠が必要となり、声がかかったのが著者だった。

奨励会に入った後も、プロになるための道は依然として険しい。原則として26歳までに四段になれなければ、退会を余儀なくされてしまう。プロになれるのは、全体のわずか2割程度だ。

プロ入り最後の難関を三段リーグという。これは30人前後の三段同士が半年間に渡り18局戦って競うもので、上位2人しか四段に上がれない。そのため四段に上がってプロになろうとする者には、嫉妬や羨望、ときには憎悪の眼差しが向けられることになる。とくに年下の後輩に抜かれることは、恐怖さえ感じるものなのだ。

四段になると、対局料や賞金などの収入が得られるようになる。逆に三段までは無給どころか、奨励会の会費を支払わなければならない。プロ棋士になることを目標とする人にとって、三段までは何の意味ももたないのだ。本当に厳しい世界である。

【必読ポイント!】 藤井聡太の将棋

強さをつくった基礎トレーニング
taka4332/iStock/Thinkstock

藤井氏は天性の勝負師であるとともに、最善手の研究者という一面ももっている。藤井氏は将棋で相手のミスを期待したりなどしない。相手が最善手を指してくることを前提にして対局に臨むのだ。

最善手を研究する将棋を詰将棋という。詰将棋は将棋のいわゆる基礎トレーニングに当たるものだ。あらかじめ答えが用意されたパズルで、最短で勝つための道を考え一人で解く。なかには三十手を超えるような難問もある。

詰将棋を学んだからといって、勝負に勝てるようになるわけではない。勝つことだけを考えるなら、戦術書で新しい戦法を覚えたほうがよっぽど実践的である。一方で詰将棋は継続するのが大変だし、地味な学び方だ。

しかし藤井氏は、時間さえあれば一心不乱に詰将棋を解いていた。そうした経験は藤井氏の「読みの原動力」となり、まっすぐに勝ちに行く正攻法の戦い方に影響を与えている。

弱い駒の使い方──将棋と組織の共通点

「将棋は歩から」という。歩は力こそ弱いが、歩がなければ自陣がむき出しになり、防御も攻撃も弱まってしまう。ある意味でもっとも力の弱い駒は、同時にもっとも大事な駒でもある。歩をうまく使えるようになると、将棋は強くなる。

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