拡張する脳

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ジャンル
出版社
新潮社
定価
1,870円(税込)
出版日
2013年09月18日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたは、「脳科学」という分野の最先端で一体今どのような研究が行われているか興味はないだろうか。本書を読むことで、気鋭の脳科学者「藤井直敬氏」の頭の中を覗き見て、常識を覆す研究がどのようにして生まれたのかを追体験することができるだろう。本書は近年、爆発的な発展を遂げている脳科学に興味がある人だけでなく、新しい発想や話題を求めるビジネスパーソンにとっても大いに刺激となるだろう。

著者の研究分野は、人と人との関係の中で脳がどのようにふるまうかという「社会脳」を明らかにすることである。この「社会脳」というテーマを探索するためには、再現性を担保することが困難であるという「一回性の問題」があるために、従来の脳科学の研究手法では解明が困難であった。そこで、著者藤井博士は全く新しいツールを生み出すことで、その問題を突破しようとしている。それが、現実では起こっていない状況(代替現実)をつくり出す「SRシステム」と呼ばれるツールだ。このユニークかつオリジナルなツールを使って、辿り着いた境地はSFの世界そのものである。

著者は本書終盤で「ツールに何を使うかによって、ぼくたちがどこまでいけるのかが決まる」という印象的な言葉を残している。過去にもインターネットやスマホといった画期的なツールにより、我々の生活は一新されたといっても過言ではない。本書では何とも不思議な「SRシステム」というツールが頻繁に登場するが、「このツールで何かが起こせることを既に知っている」という「メタ認知」があなたの脳にも起こるかもしれない。

著者

藤井 直敬
1965年広島県生まれ。東北大学医学部卒業。同大医学部眼科学教室にて初期研修後、同大大学院に入学、博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、McGovern Instituteにて研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター象徴概念発達研究チーム副チームリーダー。2008年より同センター適応知性研究チーム・チームリーダー。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明。主な著書に、『つながる脳』(NTT出版、第63回毎日出版文化賞受賞)、『ソーシャルブレインズ入門』(講談社現代新書)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    SRシステムは視覚と聴覚をハックすることで現実を操作することができるシステムである。このシステムを使用することで、人が社会の中でどう行動を変革するかを脳科学的に研究することが可能になる。
  • 要点
    2
    社会脳研究のために開発されたSRシステムは研究への利用にとどまらず、エンターテイメントへの応用など事業化への展開をみせている。
  • 要点
    3
    新しい研究ツールの開発は科学的発見へと続いている。そして、「知見」は陳腐化し書き換えられてゆくが「技術」は残る。

要約

【必読ポイント!】現実を操作して脳の秘密に迫る

現実とは曖昧なもの
Evgeny Sergeev/iStock/Thinkstock

あなたはいま目の前にあるものが、たしかにそこにあると証明することはできますか?

身の回りの景色や友人の存在など、本人が今そこに存在しているという確かな感覚は「現実感」と言われている。しかし、この現実感を保証するものは実のところは何もないと著者は主張している。今、私たちが存在している世界と、寸分たがわぬもう一つの世界があったとする。もしも一瞬のまばたきの間に今の現実世界がその別の世界に切り替わったとして、私たちはそれに気づくことはおそらく困難であろう。どちらの世界においても私たちが五感で受け取ることが出来る情報は、やはり寸分違わず同じだからだ。今の世界で見ている景色は、そのまま別の世界で見る景色と同じであり、今の世界で触れることができるものの触感は、別の世界でもまた同じなのである。

ここで著者は、今の我々がいる世界と全く同じパラレルワールドを作り上げることで「現実を操作することは原理的に可能」だと指摘している。そして、それを可能にするシステムが著者の研究室が開発した「SRシステム」なのだ。

視覚・聴覚ハックで現実を操作する

SRとはsubstitute reality、「代替現実(もう一つの世界)」を表している。SRシステムは「この世界」と「もう一つの世界」を実際に行き来するためのシステムだ。この二つの世界を行き来する体験はヘッドセット(カメラとヘッドフォンのついたヘッドマウントディスプレイ(HMD))を装着することから始まる。HMDは頭部に装着するディスプレイで、被験者の視界に映像が表示される。HMDの正面前方に位置したカメラは、被験者の目線の先と同じ方向の映像を録画し、そのままリアルタイムでディスプレイに映し出す。つまり被験者がヘッドセットを装着した時に見る映像は、HMDを装着していない時に見る映像と変わりなく、被験者は目の前で起こっている「現実」が表示されていると思う。しかし、いつの間にか映し出される映像は、あらかじめ撮影されてあった別の映像に切り替わっている。

驚くことに、この実験の結果では21人の被験者全員がその変化に気づくことはなかった。現実ともう一つの世界との違いを視覚と聴覚だけで区別することは困難だからだ。もう一つの映像では、被験者が座っている位置から360度パノラマカメラで撮影された映像が投影されている。

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