現代アートとは何か

未読
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現代アートとは何か
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現代アートとは何か
出版社
河出書房新社

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定価
2,970円(税込)
出版日
2018年03月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「最も強い影響力を持った20世紀のアート作品」に選出されたのは、パブロ・ピカソでもなく、アンディ・ウォーホルでもなかった。選ばれたのは、マルセル・デュシャンの「泉」――男性用小便器に、漫画のキャラクターを思い起こさせるサインを施しただけの作品――だ。この作品は、下ネタが御法度だっただけでなく、美術と言えば絵画と彫刻しかなかった時代に発表された。デュシャンはこの作品によって、アートの概念を根底から覆した――このエピソードに惹かれた方は、本書を読めばきっと興奮するだろう。

「現代アートを司るのは、いったい誰なのか?」――タイトルは別として、本書で最初に立てられるのが、この問いだ。現代アートには、良し悪しを決める基準が存在しないという。作品の価値と価格を決めているのは、現代アートに1000億円をつぎ込むカタール王女であり、1文字15円で批評を書くジャーナリストであり、アーティストである。そのかげには、ゴシップとも言うべき数々の出来事がある。

本書の前半では、現代アートを取り巻く人々について語られる。億万長者らによる作品をめぐる戦いや、美術館による作品の「検閲、もとい規制」については、アートに関心がない人でも興味深く読めるだろう。

後半では、現代アートの動機や、現代アートを鑑賞するプロセスなどが解説される。こちらは、現代アートを鑑賞してみたいがハードルが高いと尻込みしている人にとって、強い後押しとなること請け合いだ。

いずれにしても、現代アートのガイドブックとして、手元に置いておきたい一冊になるだろう。

著者

小崎 哲哉(おざき てつや)
1955年、東京生まれ。京都在住。カルチャーウェブマガジン『REALKYOTO』発行人兼編集長。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。同大学舞台芸術研究センター主任研究員。2002年、20世紀に人類が犯した愚行を集めた写真集『百年の愚行』を企画編集し、03年には和英バイリンガルの現代アート雑誌『ARTiT』を創刊。13年にはあいちトリエンナーレ2013のパフォーミングアーツ統括プロデューサーを担当し、14年に『続・百年の愚行』を執筆・編集した。

本書の要点

  • 要点
    1
    アートには、良し悪しを決める絶対的な基準はない。現代アートの価値と価格を決めているのは、「マーケット」「ミュージアム」「クリティック」「キュレーター」「アーティスト」「オーディエンス」である。
  • 要点
    2
    現代アート作家が抱く創作の動機は、大別して7種ある。その7種とは、「新しい視覚・感覚の追求」「メディウムと知覚の探究」「制度への言及と異議」「アクチュアリティと政治」「思想・哲学・科学・世界認識」「私と世界・記憶・歴史・共同体」「エロス・タナトス・聖性」だ。

要約

【必読ポイント!】マーケット――獰猛な巨竜の戦場

スーパーコレクター
photominus/iStock/Thinkstock

アートには、良し悪しを決める絶対的な基準はない。だから、「誰か」がアート史に残すべき作品を選び出し、現代アートの価値と価格を決めている。本書では、現代アートを取り巻く「誰か」、つまり、「マーケット」「ミュージアム」「クリティック」「キュレーター」「アーティスト」「オーディエンス」について考えている。要約ではそのうち、マーケットを紹介する。

超一級のアートコレクションを持っているのは、億万長者たちだ。たとえば、スーパーコレクターの1人であるピノーは、フランスで5番目の資産家で、その総資産はジャマイカのGDPを上回るという。彼は、ケリングというファッションコングロマリットの創業者だ。傘下に、グッチやボッテガ・ヴェネタといった有名ブランドを所有し、世界最大のオークションハウス、クリスティーズのオーナーでもある。

彼は、2500点を超えるとされる一大コレクションのオーナーだ。アート史に名を残すことがほぼ確実なアーティストの、第一級の作品を収集している。

では、彼のようなスーパーコレクターは、どのように作品の売買の情報を集めているのか。スーパーコレクターの周囲には、キュレーター、ギャラリスト、フランスの元文化相といった人物まで、様々なアート関係者がおり、情報を提供している。また、通常、アートフェアは作品の売買の場である。しかし実のところ、高額の作品は、フェアの開催前に内々に予約されている。業界内ルールに違反して、ギャラリーを介さずに作家から直接作品を購入するケースも多い。タックスヘイブンで取引すれば課税を免れるし、ギャラリーを通さなければ多額のコミッション(手数料)を支払わなくて済むからだ。

ギャラリスト
nata_zhekova/iStock/Thinkstock

『オックスフォード英語辞典』によると、ギャラリストは、「アートギャラリーを所有する者、もしくは、潜在的な購買者を惹きつけるために、ギャラリーや他の場所でアーティストの作品を展示し、販売促進する者」と定義づけられている。

現代アートにおけるギャラリーには、プライマリーとセカンダリーの2種がある。プライマリーとは、アーティストの代理人として、新作を販売するギャラリーだ。セカンダリーとは、一度市場に出回った作品を入手して転売するというギャラリーである。ただし今日では、プライマリーとセカンダリーの線引きのみならず、ギャラリストとブローカー、ギャラリストとコレクターの線引きも曖昧になっている。今や誰もがディーラー、つまり販売者であると言える。

現在、アートディーラーの「帝王」と呼べるのは、ラリー・ガゴシアンだろう。彼は2003年以来、雑誌『アートレヴュー』の「POWER100」(現代アート界でもっとも影響力のある人々のランキングリスト)において、毎年ベストテンにランキングされている。ガゴシアンは、ニューヨークに5軒、ロンドンに3軒、パリに2軒と、世界中に計16のギャラリーを保有し、2014年の売上は推計約1100億円にのぼる。これは、この年の全オークションハウスにおける現代アートの売上の半額以上だ。彼が扱うアーティストは、パブロ・ピカソから有望若手までと、幅広い。もちろん、世界中のスーパーコレクターたちを顧客としている。

ガゴシアン本人は、自身のことを「売買についてのセンスと才能が、生まれながらにしてDNAのうちに備わっている」「生まれつき目が良いんだろうね」と認めている。対してロイターの寄稿家、フェリックス・サーモンは、「ラリー・ガゴシアンは(中略)高価なものならなんでも買う傾向のある成金コレクターたちを通じて、世界中の美術館その他に自分の趣味を押し付ける」と評している。

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