コトラーの「予測不能時代」のマネジメント

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コトラーの「予測不能時代」のマネジメント
ジャンル
著者
フィリップ・コトラー ジョン・A・キャスリオーネ 齋藤慎子(訳) 高岡浩三(解説)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,592円
出版日
2018年03月08日
評点(5点満点)
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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レビュー

「経済危機」や「不況」という言葉は、とかく目標の未達や失敗の言い訳に使われがちだ。だがそもそも私たちは、いまの景気情勢を正しく捉えられているのだろうか。

経営学の第一人者である著者は、好況と不況を緩やかにくりかえす「ノーマル」経済は終焉を迎え、景気がつねに乱高下する「ニュー・ノーマル」経済の時代に入ったと見ている。各国政府の思惑と経済が密接にかかわり合い、情報が瞬時に駆け巡るようになった結果、コストダウンや経済活動のスピードアップといったポジティブな効果がもたらされた一方で、脆さも生まれたわけだ。景気が悪くなると、大きな痛みと損害が急速に撒き散らされるのが、経済の基本状態となったのである。

従来の「ノーマル」経済下の経営手法では、数値にもとづいて計画を遂行し、想定しなかった事態が発生した場合は、直感やひらめきで決定をおこなっていた。だが想定外の出来事がつねに発生する「ニュー・ノーマル」時代において、こうしたやり方は不適当だ。

著者はこの「波乱の時代」における経営を「カオティクス」と名づけ、「ニュー・ノーマル」経済下の環境の変化の原因とその特性を分析・整理。カオティクス時代の企業マネジメントの手法を提示している。

新時代のフレームワークを、本書を通してあなたも学んでみてはいかがだろうか。

西 広海

著者

フィリップ・コトラー(Philip Kotler)
ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院インターナショナル・マーケティングS・C・ジョンソン・アンド・サン・ディスティンギッシュド・プロフェッサー。「近代マーケティングの父」と目されている。代表的な著書である『マーケティング・マネジメント』は第13版まで出ており、MBA(経営学修士号)取得を目指している人々に世界中でもっともよく読まれているマーケティングのテキストとなっている。『マーケティング原理』『コトラーのマーケティング・コンセプト』『コトラーのマーケティング思考法』『地域のマーケティング』『社会的責任のマーケティング』ほか、30冊を超える著書がある。IBM、バンク・オブ・アメリカ、GEほか、さまざまな企業の顧問も務めている。

ジョン・A・キャスリオーネ(John A.Caslione)
グローバル経済の専門家。現在、世界規模のM&Aのアドバイスを行なう、GCSビジネス・キャピタルの創設者兼社長である。国際経営コンサルタント会社のアンドリュー・ウォード・インターナショナルの創設者兼社長でもあった。これまでに経営戦略の実施にかかわったのは、アジア・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ・南アメリカ・オーストラリアの88カ国に広がっている。現在、顧問を務めている企業の中には、ABB、エクソンモービル、GE、ヒューレット・パッカード、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM、フィリップスなどがある。ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院では客員講師として、グローバル・ビジネスについて講義している。グローバリゼーションと、新興成長市場も含めたグローバル・ビジネス戦略に関する著作もある。ニューヨーク州立大学(バッファロー校)でMBA、シカゴケント法科大学院で法務博士を取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    景気が乱高下する現在、ビジネスリスクを高めている主要因は、(1)技術の進歩と情報革命、(2)破壊的テクノロジーと破壊的イノベーション、(3)非欧米諸国の台頭、(4)超過当競争、(5)政府系ファンド、(6)環境問題、(7)顧客とステークホルダーの発言力の高まりである。
  • 要点
    2
    カオティクス・マネジメントは、カオスを検知・分析し、それに対応するための体系的手法だ。(1)「早期警報システム」の開発、(2)「キーシナリオの構築」、(3)シナリオの優先順位づけおよび「戦略の選択」が、カオティクス・マネジメントでは重要視される。

要約

【必読ポイント!】なぜカオティクス・マネジメントが必要なのか

7つのビジネスリスク(その1)
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

各国政府の思惑とグローバル市場の連携性が絡み合った結果、市場はある種の脆さをもつようになった。それが「ニュー・ノーマル経済」だ。企業は経営に多大な影響を及ぼすリスクに、数多く直面することになる。ビジネスリスクを高めている重要な要因として、次の7つが挙げられる。

第1の要因は、技術の進歩と情報革命である。これらは情報過多を招き、さらなる乱気流(位置組織の内外で起こる予測困難なすばやい変化)やカオスを引き起こす。

第2の要因は、破壊的テクノロジーと破壊的イノベーションだ。こうしたテクノロジーをもつ企業は業界の勢力図を一変させ、カオスを生み出す「ゲーム・チェンジャー」となる可能性を秘めており、乱気流を追い風として成長する。

第3の要因は、非欧米諸国の台頭である。なかでも目立っているのが、いわゆるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)および資金力のある中東諸国だ。『ニューズウィーク』国際版編集長のファリード・ザカリアによると、世界はいまや「現代史で3番目に大きなパワーシフト」の時代に入りつつあるという。

7つのビジネスリスク(その2)

第4の要因は、超過当競争である。技術や売りものが根本から変わると、基準やルールが流動的になり、それまでの競争優位性は時代遅れとなる。もっとも成功している企業とは、この乱気流とカオスのさなかに、競争の場を次々と移していける企業ということになるだろう。

第5の要因は、政府系ファンドである。国が所有する投資ファンドは、2000年以降激増した。新興国のファンドによる欧米市場への投資を“攻撃”とみなす、愛国主義と保護貿易の鬱積した感情が、経済の乱気流をもたらすかもしれない。

第6の要因は、環境問題だ。どの企業も少ない天然資源を大切に使い、汚染を減らし、地球温暖化を防ぐように強く求められている。こうした要求で、ビジネスコストは必然と上がる。

第7は、顧客とステークホルダーの発言力の高まりだ。彼らはマーケティング活動において、もはや受け身の存在ではない。口コミには、大きな乱気流とカオスを生み出すポテンシャルがある。

カオティクス・マネジメント
JONGHO SHIN/iStock/Thinkstock

いま必要なのは、乱気流に直面しても機能する、新しい戦略のフレームワークだ。ビジネスにおける乱気流はもはや避けられない。だがそれにどう立ち向かうかは、みずからの意志で選ぶことができる。

多種多様なリスクが頻発する世界にあって、効果を発揮するのが「カオティクス・マネジメント」だ。カオティクス・マネジメントでは、(1)早期にアラームが上がる仕組みを作ること、(2)キーシナリオを作ること、(3)シナリオの優先順位づけをおこない、状況に即して選択をすること、という3つの手順が重視される。

いずれにせよ重要なのは、こうした検討プロセスのなかで、企業の経営参画者の誰もが納得できる戦略にたどり着くことだ。

早期警報システムの確立

8つの質問

ここからは米国自動車会社のビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)が救済要請をおこなう5年前にさかのぼったと仮定して、実際のカオティクス・マネジメントの手順を見ていこう。

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