常勝集団のプリンシプルの表紙

常勝集団のプリンシプル

自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント


本書の要点

  • 新入生は、新しい環境への適応に多くの心理的エネルギーを費やす。雑用を上級生が担当することで、1年生に心理的余裕ができるとともに、上級生への信頼感と、組織としての一体感が生まれる。

  • 人のモチベーションが最も高まるのは、外部から報酬を与えられた時ではない。内側から湧いてくる興味や楽しさを感じる時である。

  • 下級生は、上級生の行動を吸収し、蓄積し続けることで、やがて上級生のように行動できる人物となる。

  • 「今」に集中し、その瞬間を最大限に楽しむ「フロー状態」に入ると、人は100%の実力を発揮できる。

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【必読ポイント!】 業界の常識はたいてい非常識だ

「体育会系イノベーション」への取り組み

Wavebreakmedia/iStock/Thinkstock

上級生が絶対的存在である究極のピラミッド構造、それが体育会系のイメージだろう。4年生は神のごとく振舞い、1年生は100%上級生の命令に従って、あらゆる雑用を引き受ける。帝京大学ラグビー部も、その例に漏れなかった。しかし10年前、筆者はこれを覆す「体育会系イノベーション」に取り組み始めた。

帝京大学ラグビー部では、最上級生である4年生が最も多く雑用をこなす一方、1年生は雑用からほとんど解放されている。たとえば、学生寮やグラウンドの掃除、寮の食事当番などを、上級生が行う。

このように、著者が体育会系組織のピラミッド構造を逆さまにしたのには、理由がある。入学したばかりの1年生は、新しい環境や生活への適応に、膨大な心理的エネルギーを要する。この状態で雑用を押し付けられたら、勉学やラグビーに費やすべきエネルギーが枯渇してしまうだろう。1年生の雑用負担を軽くすることで、彼らの心理的余裕を軽減し、勉学やラグビーに打ち込めるようにする。そうすることで、下級生は上級生から「大事にされている」と感じ、彼らを敬うようになり、組織として一体感を持てるようになるのである。

「勝ちたい」から「勝たせたい」へ

著者が帝京大学ラグビー部の監督に就任してから10年間、帝京大学は、早稲田大学などの伝統校にまったく勝つことができなかった。当時著者は、自らが先頭に立って組織を牽引することがリーダーの役割と信じ、部員に細かく指示命令を出していた。しかしある時、試合に勝てないだけでなく、卒業後に社会人として活躍している部員がほぼいないことに気づく。さらに、負ければ4年生の引退試合となる関東大学対抗戦にて、観戦していた1年生部員が「負ければいいのに」とつぶやいたことを知る。著者は、「部員の成長を阻み、自分たちの先輩や仲間を応援できないチームをつくっているのは自分なのではないか」と考えるようになった。

こうした経験が、リーダーが1人で組織を引っ張ることの限界を著者に知らしめるとともに、著者のチームづくりや人材育成の転換点となった。目標は「帝京大学ラグビー部のファンは誰か?」という問いに「ラグビー部員」と自信を持って答えられるようにすること。そして、勝てなかった頃は自分自身が「勝ちたい」と誰よりも思っていたのに、強引に率いるスタイルをやめて「勝たせたい」と思うようになった。すると、少しずつ勝てるようになったという。

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モチベーション・マネジメント

選手の「内発的動機」を発動させる

Wavebreakmedia/iStock/Thinkstock

人のモチベーションが最も高まるのは、外部から報酬を与えられた時ではない。内側から湧いてくる興味や楽しさを感じる時である。お金などの報酬があるからその行為をするのではなく、その行為をすること自体が報酬になっている時にモチベーションが高まるといえる。こうした内から湧いてくる動機を「内発的動機」と言う。それに対して、アメとムチといった外部からの報酬のことを「外発的動機」と言う。人が高いパフォーマンスを発揮できるのは、内発的動機がうまく発動された時だ。

監督などのリーダーは、ついアメとムチで安易に人を動かそうとしてしまう。アメとムチはわかりやすいし、即効性があるからだ。でも、

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要約公開日 2018.07.06
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