WORK DESIGN(ワークデザイン)

行動経済学でジェンダー格差を克服する
未読
日本語
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行動経済学でジェンダー格差を克服する
未読
日本語
WORK DESIGN(ワークデザイン)
出版社
定価
2,970円(税込)
出版日
2018年07月06日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本で女性活躍が進まないのはなぜか。日本の女性活躍のレベルは、国際比較でも異例の低さだ。世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」(2017年)での日本の順位は、144か国中114位にとどまるという。

今の日本では、働く人の生産性を上げること、働く人を増やすことが欠かせない。女性活躍推進にはそんな効果も期待されており、さまざまな法律や制度が整備されてきた。もちろん、女性活躍が進まない原因は複数あるだろう。たとえば、一般に女性より男性のほうが自信過剰で、競争やリスクテイクを好む傾向にある。そのため、仮に能力水準が同じでも、男性のほうが昇進しやすくなると考えられる。一方で、採用や昇進において、評価する側に無意識のバイアスが働いているのも事実だ。男女差別をするつもりなどなくても、いつのまにか女性の活躍する機会を奪っているかもしれない。

本書が教えてくれるのは、こうした思考バイアスとの付き合い方だ。バイアスに対処するには、自らのバイアスを認知し、考え方や行動を改め、それを定着させることが必要となる。だが、こうした取り組みは苦労を伴う。

そんなときこそ本書が紹介する「行動デザイン」の出番だ。個人の価値観が変わらなくても、環境を変えることで行動を変えられる。それは根強いジェンダー格差の解消はもちろん、より公正な社会の実現につながる。そんなアイディアが詰まった一冊だ。男女共同参画を進める人たちの必読書が今ここに。

著者

イリス・ボネット
スイス生まれの行動経済学者。ハーバード大学ケネディ行政大学院教授。専門はジェンダー・異文化間の平等を実現するための行動デザイン。同大学院「女性と公共政策プログラム」所長、「行動インサイト・グループ」共同座長、「ハーバード意思決定科学研究所」副所長等を務めるほか、世界経済フォーラム「行動科学に関するグローバル未来会議」の共同議長、クレディ・スイス・グループの社外取締役も歴任。本書は「女性と公共政策プログラム」の10年間の研究成果であり、エビデンスに基づくジェンダー・ギャップ解決策を示した書として、フィナンシャル・タイムズ/マッキンゼーの年間最優秀ビジネス書(2016)の最終候補に選ばれている。

本書の要点

  • 要点
    1
    直感的な思考モードである「システム1」は、元々の思い込みを助長するような判断を導きがちである。そのため人々は「代表性ヒューリスティック」などのバイアスに陥りやすくなる。
  • 要点
    2
    行動デザインは、人々が自動的に好ましい行動をとるように促す方法である。価値観や思考様式が変わらなくても、環境を変えることで行動を変えることは可能だ。
  • 要点
    3
    人事評価で性別や人種によるバイアスを排除するには、複数の候補者を比較して評価する手法が有効だ。比較により、無意識のバイアスでなく、個々人の成績に注目できるようになる。

要約

行動デザインの力

カーテンの向こうのバイオリン
SonerCdem/iStock/Thinkstock

1970年代後半、アメリカの五大オーケストラでは、女性演奏家の割合がわずか5%にすぎなかった。しかし今、一流オーケストラでは、演奏家の35%以上を女性が占めている。こうした変化をもたらしたのは、「ブラインド・オーディション」の導入である。

これは、演奏家の採用試験で審査員と演奏家の間をカーテンなどで隔て、誰が演奏しているのかを、審査員から見えなくするやり方だ。有力オーケストラが相次いでこの手法を取り入れた結果、女性演奏家が採用される割合は飛躍的に高まった。

本来、演奏家の採否を決めるのは演奏能力のみである。人種や民族、性別などは関係ないはずだ。だが現実は違った。たとえば、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団には1997年まで、女性演奏家は一人もいなかった。そもそも、演奏家の採用を決める審査員たちは、楽団が白人男性のみで構成されることに、何の違和感も覚えていなかった。ましてや、自分たちがバイアスを持っているという認識もなかっただろう。

状況を変えるのに必要だったのは、問題についての認識と、一枚のカーテン、そして選考プロセスのデザインに関する決断だけだった。こうして採用候補者の母集団は、男性だけから男女両方へと2倍に拡大した。幅広い母集団から団員を選べることは、団員とその演奏の質を向上させ、オーケストラのビジネスにも好影響をもたらしたのである。

行動経済学のアプローチ

プロの演奏家は、演奏を評価される際に視覚的要素に強く影響されていることを知ると、たいていショックを受ける。音楽コンテストの審査員たちは、意識レベルでは音楽的要素を中心に評価しているつもりでいても、実際には視覚的要素に大きく左右されるという。演奏家が審査員の視界に入るという、審査プロセスという行動デザインは、審査結果に思いがけない影響を及ぼしていたわけだ。

バイアスは私たちの意識だけでなく、制度や慣習にも根を張っている。良いデザインは良い結果を、悪いデザインは悪い結果を生む。行動デザインは、リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンの名著『実践 行動経済学』では「選択アーキテクチャー」と呼ばれている。人々の行動を変化させるのに、法規制やインセンティブ制度を上回る効果が期待できる。

もちろん、法規制やインセンティブ制度も重要であるが、これらがいつも上手く機能するとは限らない。行動デザインは、人々がインセンティブに反応することを当てにせず、人々が自動的に望ましい行動を取るように仕向けるものだ。私たちは、自分自身や組織や世界のために好ましい行動をとれるよう、ときには、軽く背中を押してもらう必要があるのだ。

無意識のバイアス

システム1とシステム2
wildpixel/iStock/Thinkstock

たいていのアメリカ人は、フロリダの住民のほとんどが高齢者だというステレオタイプを持っている。温暖なフロリダは老後の移住先というイメージが強いからだ。しかし実際には、フロリダ州の住民の82%が65歳未満で、この割合は全米平均の86%とほとんど変わらない。

フロリダと言われて老後生活を送る人々を連想するのは、代表的だと感じられる住民の属性(「フロリダといえば高齢者」)に基づいている。これは、「代表制ヒューリスティック」という思考バイアスの一つだ。

このようなバイアスによる発想や判断をしてしまうのは、思考がシステム1に支配されているからである。

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