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本書の要点

  • 1つの企業に一生頼れなくなった今、副業によって収入を確保し、多様なキャリアの選択肢を持つことが重要になっている。

  • 厚生労働省の「モデル就業規則」でも、副業を原則容認する方針へと転換した。インターネットの普及により空間・時間的な制約がなくなり、制度的にも環境的にも副業がしやすくなりつつある。

  • 社会のグローバル化が進む中、究極的には個人の多様性が求められるようになる。複(副)業は個人の多様性に寄与する。

  • 副業を解禁する際は、組織を構成する他の要素との整合性がとれていることが重要となる。

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なぜ今「複(副)業」なのか

終身雇用の崩壊と家計のリスク

本書では複(副)業を、「雇用関係を結んでいる組織以外の仕事を、継続性を持って行うこと」と定義する。フリーランスのような、どの組織とも雇用関係を持たない働き方は副業には含めない。また、「副業」は本業に対する補助的な収入を得ることを意味し、「複業」は本業との主従関係なく複数の仕事をすることを意味する。

日本企業の終身雇用は、実質的には崩壊の一途をたどっている。業務効率向上のため、余分なポストを削減し、人員を減らす企業も少なくない。社員側から見ても、もはや新卒で入社した会社に一生しがみつける状況ではなくなってきている。

しかも賃金の面でも、50歳頃で頭打ちになる企業が増えてきた。役職定年制により、50歳頃からむしろ年収が下がる企業も珍しくない。成果主義の企業では、そもそも年収と年齢はリンクしなくなっている。もはや年功序列的な昇給は見込めない。また、自社の業績が悪くなくても、企業の合併により突如、人員削減の対象となってしまう可能性もある。こうした状況の中で、副業の収入は家計のリスク・マネジメントの観点からも、重要性を増している。

人手不足と空間・時間的制約からの解放

UberImages/iStock/Thinkstock

今、日本全体で労働力不足が起きている。特に人手を要するサービス業で顕著だ。今後は確実に15歳以上の人口が減っていく。それを補うのが、就業を希望しているが求職活動をしていない「非労働力人口」と呼ばれる人々である。最近は週に数時間でもいいから働き手がほしいという企業も多く、こうしたニーズは複(副)業ともマッチしやすい。

また、インターネットの普及により、副業が行いやすくなった。ネットを使えば、仕事の受注も物理的な移動なしで行える。会社に在籍したまま仕事を始めることも容易になった。仕事の進め方についても、こま切れの時間をビジネスに使えるようになったことで、より柔軟になったといえる。このように、副業を行う空間的・時間的制約はどんどんなくなってきている。

モデル就業規則の転換

企業が就業規則を定める際に参考にする、厚生労働省の「モデル就業規則」がある。このモデル就業規則の副業・兼業禁止規定が2018年1月に廃止され、「原則禁止」から「原則容認」へと変更された。「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言が、「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」に改定されたのだ。

また雇用保険についても変化が生まれようとしている。現在は1つの会社で週20時間以上働く人が対象となっている。しかし、今後は複数の会社に勤務して合計20時間以上働く人も対象となり、失業手当をもらえるようにする方針だ。

もちろん、モデル就業規則に企業への強制力はない。だが、これをそのまま自社の就業規則に反映している企業も多く、この改定が企業に与える影響は大きい。このように、国の制度面での方針も、複(副)業を推進する方向へ動いているといえる。

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「複業」のメリット

経営スキルが身に付く

BrianAJackson/iStock/Thinkstock

複業には、会社以外から収入が得られるという大きなメリットがある。しかし、メリットは収入面だけにとどまらない。

大企業に入社すると、全社的な意思決定が下せる立場になるまで、30年ほどはかかってしまう。その点、複業ではすべての意思決定を自分で行わなければならない。会社員のままではなかなか身につけられない経営スキルが身につけられる。

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要約公開日 2018.10.15
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