ソクラテスの弁明・クリトン

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ソクラテスの弁明・クリトン
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ソクラテスの弁明・クリトン
出版社
定価
572円(税込)
出版日
1964年08月16日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ここでまず、本書の概要と時代背景を記しておこう。

本書の舞台は、紀元前399年、アテネの民衆裁判所である。70歳のソクラテスが、3人のアテネ市民から訴えられた。職人で民主派の政治家でもあったアニュトス、本書の登場人物でもある詩人のメレトス、演説家として名を馳せたリュコンである。

当時、アテネには「民主派」「寡頭派」と呼ばれる2大政党があった。民主派はアテネ伝統の民主制を、寡頭派は都市スパルタをモデルとする、少数エリートによる支配体制を主張した。

本書に描かれた裁判の数年前、アテネとスパルタの対立からペロポネソス戦争が起きる。結果はスパルタの勝利に終わり、敗戦を機にアテネの政権は民主派から寡頭派に移った。これを「三十人政権」という。この政府の中心となったのが、著者プラトンの母親のいとこ、クリティアスだった。

名門の血筋クリティアスは、当初は歓迎されたが、やがて反対勢力を不当に弾圧する「恐怖政治」を実施し、半年足らずで政府を崩壊させてしまう。このクリティアスの教育者といわれるのがソクラテスである。告訴人の中でもアニュトスは、三十人政権に深い恨みがある人物だった。何の責任も問われず、今までと同様、アテネの広場で問答を続けるソクラテスを見過ごせなかった。

500人の市民陪審員を前に弁明を行い、途中、無罪か有罪かの決定、量刑確定の2回の投票を経て、死刑が確定したソクラテス。最後に聴衆に向けて演説をする場面は胸を打つ。時を経てなお古びることのない思想を堪能していただければと思う。

著者

プラトン
ギリシアの哲学者(前427-347年)。アテネの名家の出身。政治家を志すが、ソクラテスの事件などにあい現実の政治に絶望した。各地を遍歴後、アテネ郊外にアカデメイアという学園を創設して弟子たちの教育に専念した。主著『ソクラテスの弁明』『饗宴』『国家』(出典 『現代倫理 改訂版』清水書院)

本書の要点

  • 要点
    1
    ソクラテスは、自身の無知を自覚しているぶん、自分は他の人たちよりも賢明だと考えた。
  • 要点
    2
    死が最上の福ではないとは誰も言い切れない。ソクラテスは、悪か福かわからないことを恐れたり避けたりしない。
  • 要点
    3
    賢者と評される人々と対話し、彼らの無知を暴くことになってしまったソクラテスは、市民に嫌われ、死刑を宣告されることとなった。
  • 要点
    4
    死刑になるソクラテスと裁判の列席者たち、どちらに良い運命が待っているのかは、神にしかわからないことだ。

要約

【必読ポイント!】弁明

私が地位を得たのは人間的知恵があるからだ
utah778/gettyimages

本書は、告発を受けたソクラテスの弁明から始まる。要約では、弁明の冒頭部分をはじめとして、いくつかの場面を紹介する。

裁判官諸君、私を告発した者たちの弁論は説得力があった。そのすばらしさに、私も心を奪われそうになったほどだ。一方、私は巧みな語り手ではないし、そもそも法廷に立つのは初めてだ。だから諸君には、私の言葉遣いではなく、私の話す内容が正当なのかどうかの一点のみに注意を向けてほしい。

私はなぜ訴訟されているのか。告発者らによると、私は不正を行い、無益なことに従事し、地下と天上の事象を研究し、悪事を善事とし、他人にもそうしたことを教えているという。私が分不相応にも人を教育し、謝礼を要求していると言う人もいるようだ。いずれも事実無根である。そもそも私は、そのような知識を持ち合わせていない。

こう言うと諸君は、私がなぜこのような悪評を流されているのかと不思議に思うだろう。私は人と違うことをしていたに違いない、そうでなければこんな名声を得られるはずもないとも思うだろう。私が名声を得たのは、私に一種の人間的知恵があるからだ。疑う向きもあるかもしれないが、デルフォイの神が証人である。

諸君は、私の弟子であり友人でもあるカイレポンをご存じであろう。彼はあるときわざわざデルフォイまで出かけていき、大胆にも、「ソクラテス以上の賢者はいるか」と神託を求めたのである。するとデルフォイの巫女は、私より知恵ある者はいないと答えたそうだ。

このことを聞いたとき、私は次のように考えた。「神は何を言おうとしているのか。私は、自分が知恵ある者ではないということをよく自覚している。私がもっとも知恵ある者だと言うことによって、神はいったい何を伝えようとしているのか。神が嘘を言うはずもない。それは神にあるまじきことなのだから」と。

私は何も知らないということを知っている
renaschild/gettyimages

いろいろと考えを巡らせた結果、私は賢人と評されている人のところへ行った。できるなら、神託に対して「この人のほうが私よりも知恵ある者です。それなのにあなたは私のほうが知恵ある者だとおっしゃいました」と申し立てたいと考えたからである。

私が訪ねたのは政治家だった。ところがその人をさまざまな仕方で吟味し、彼と問答を交わすうちに、「この人は多くの人たちから賢いと思われているし、自分自身でも知恵があると思い込んでいるが、実はそうではないのだ」と感じたのである。

私は、彼自身は自分を賢いと思っているが、実はそうではないということを示してやろうとした。その結果私は、彼からも、またそこに居合わせた人たちの多くからも憎まれることになったのである。

それでも、彼のもとを立ち去りながら、私はひとり心の中で考えたのであった。私たちのどちらもが善についても美についても何も知らないようだ。しかし彼のほうは、自分は知っていると思い込んでいる。一方私は、何も知らないということを知っている。

だから私は、

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