ツァラトゥストラかく語りき

未 読
ツァラトゥストラかく語りき
ジャンル
著者
フリードリヒ・W. ニーチェ
出版社
河出書房新社 出版社ページへ
定価
1,296円
出版日
2015年08月20日
評点
総合
4.7
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
5.0
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ツァラトゥストラかく語りき
ツァラトゥストラかく語りき
著者
フリードリヒ・W. ニーチェ
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定価
1,296円
出版日
2015年08月20日
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総合
4.7
明瞭性
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革新性
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レビュー

19世紀に生き、不朽の思想を遺したニーチェの主著である。哲学に特別関心のない層にも広く知れ渡っており、印象的なタイトルに興味をそそられたという人も多いだろう。本書は主人公ツァラトゥストラが「超人」や「永劫回帰」といった思想を語るという体裁をとっており、その内容は哲学思想の枠にとどまらず、文学や芸術など多方面に絶大な影響を与え続けている。

最初に断っておくが、決して読みやすい本ではない。しかし歴史に名を残す哲学書なのも間違いない。辛抱強くニーチェの思考の足跡をたどっていけば、頭がしびれるほどの読書経験になるはずだ。これまでの自分の経験や考え方が根底から覆されることも覚悟してほしい。ある意味で非常に危険な本なのである。

圧縮しすぎることで書籍の味わいをなくしてしまうのを避けるため、本要約では主に「超人」の理想が語られる第一部を取り上げた。このあと第二部、第三部と進むにつれ「永劫回帰」の思想が徐々に姿をあらわし、最終部ではさまざまな苦悩を乗り越え、圧倒的な肯定へと至る様子が描かれる。

なお本書は気鋭の哲学者による新訳である。ツァラトゥストラの言葉を理解しようとして挫折した経験のある読者も、ぜひあらためて挑戦し、世界的名著の凄みを味わっていただければ幸いだ。真に人生が変わる読書になるかもしれない。

金松 豊

著者

フリードリヒ・W・ニーチェ (Friedrich Wilhelm Nietzsche)
1844-1900。哲学者。著書『悲劇の誕生』『反時代的考察』『人間的な、あまりに人間的な』『曙光』『喜ばしき知恵』『善悪の彼岸』、『道徳の系譜』『偶像の黄昏』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    山に入り、孤独のなかで思索を深めたツァラトゥストラは、人びとにその知恵を贈るために山を下りた。しかし民衆はツァラトゥストラの語る言葉に聞く耳をもたなかった。
  • 要点
    2
    街に滞在したツァラトゥストラは、創造へと向かう精神がたどる3つの変化について、そして高潔な精神が陥る危機について語った。
  • 要点
    3
    最高の徳は贈り与える徳だと語ったツァラトゥストラは、弟子たちに「みずからを見出せ」と語って街を去り、ふたたび山に入り孤独にかえった。

要約

【必読ポイント!】ツァラトゥストラの最初の演説

ツァラトゥストラの没落
francescoch/gettyimages

三十路になり、故郷を捨てて山に入ったツァラトゥストラは、それから十年のあいだ孤独を楽しんで飽きることがなかった。しかしあるとき心が変わり、太陽にこう語りかけた。

わたしは知恵を贈りたい。分け与えたい。知者たちが己の無知に気づくまで。貧者たちがふたたび己の豊かさに気づくまで。そのためにわたしは低いところへと下っていかなければならない。

こうしてツァラトゥストラの没落は始まった。

山を下り、森に入ると白髪の老人に出会った。老人はツァラトゥストラを止めようとした。人間に何も与えるな。世捨て人が贈り与えるためにやってくるなど彼らは信じない。人間たちのとこへなど行かず、森にとどまるべきだというのだ。

ツァラトゥストラは尋ねた。「それで、聖者たるあなたは、森のなかで何をしているのですか」。聖者は答えた。「歌い、泣き、笑い、呻いて神を讃えている。ところで、君はわれわれには何を贈ってくれるのか」。

ツァラトゥストラは「何もありません。すぐに立ち去らせてもらいます。あなたがたのものをわたしが取ったりせずにすむように」と言って立ち去った。そして一人になったとき、己の心にこう言った。「こんなことがあっていいものだろうか。この老いた聖者は、森のなかにいて、まだ何も聞いてはいない。神は死んだ、ということを――」。

最初の演説
bestdesigns/gettyimages

森のはずれにある最初の町に着いたとき、多くの人が綱渡り舞踏家を観るために市場へ集まっていた。そこでツァラトゥストラは超人についての演説を始めた。

「わたしは諸君に超人を教える。人間とは克服されなければならない何かである。おのれ自身の幸福を軽蔑し、理性を軽蔑し、徳を軽蔑し、正義を同情を軽蔑せよ。そうすることによって身をもって生きることができる」。しかし群衆は耳を貸さなかった。

綱渡り舞踏家が芸にとりかかったとき、ツァラトゥストラはこう語った。人間は綱だ、動物と超人とのあいだに掛け渡された――深淵の上に掛かる、一本の綱だ。

ふたたび群衆を眺めると、ツァラトゥストラは思った。彼らはわたしを理解しない。わたしは彼らの耳のための口ではない。彼らはみずからを軽蔑すべきだなどと語られるのを嫌う。では彼らの誇りに訴えかけよう。もっとも軽蔑すべき者、「最後の人間」について語ろう。そして語りだした。

「僕らは幸福を発明した」――最後の人間はそう言ってまばたきする。彼らは隣人を愛する。温もりが要るから。彼らはときどきわずかな毒を飲む。心地よい夢が見られるから。彼らは働きもする。労働はなぐさめになるから。身体をこわさないように気づかいながら、小さな昼の快楽、小さな夜の快楽を享受する。「僕らは幸福を発明した」――最後の人間はそう言って、まばたきする。

唐突にツァラトゥストラの演説は終わった。群衆がそれを遮ったからだ。彼らは「俺たちをこの最後の人間にしてくれないか。超人はお前にくれてやる!」と叫んだ。

ツァラトゥストラは悲しみ思った。「彼らはわたしを理解しない。わたしはこの耳のための口ではない」。

最初の道連れ

しかしそこで何かが起きた。市場と群衆の真上、二つの塔のあいだに張られた綱を綱渡り舞踏家が渡りはじめ、ちょうど半ばまで来たときのことだ。道化がその後方から飛び出してきたのである。道化は綱の上を足早に進み、「進めよ、のらくら野郎!」と怒鳴りながら綱渡り舞踏家を追いかけたかと思うと、悪魔のような叫び声をあげて彼を飛び越した。綱渡り舞踏家は動揺して足を踏み外し、一直線に地上へと墜ちた。群衆は我先にと逃げだしていく。

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