日本の国益

未 読
日本の国益
ジャンル
著者
小原雅博
出版社
定価
968円(税込)
出版日
2018年09月19日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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著者
小原雅博
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968円(税込)
出版日
2018年09月19日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
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レビュー

日本のように他国を圧倒するような軍事力がなく、平和を志向する国にとっては、国際情勢の安定こそが国益に適うといえる。その実現のために著者が提唱するのが、国際協調によって国益を追求する「開かれた国益」という概念だ。

国際法の観点における国家とは、「国民」「領土」「政府(主権)」の三要素からなる国際社会の主体と定義される。したがってこれらの要素は、どの国にとっても普遍的な「死活的国益」だ。一方で具体的になにが国益なのかは、それぞれの国が置かれた状況によって異なる。それが2国間の国益が衝突するゆえんであり、同時にWin-Winの協力関係を築くことのできる理由でもある。また日本のような民主主義国家の場合、国益がときとして個人や地方の利益と対立することもありうることも忘れてはならない。

米中の貿易摩擦の勃発、安倍総理の訪中、EUとの経済連携協定、TPPの発効、そしてアメリカの中間選挙など、最近はほとんど週単位で大きな国際情勢のニュースが耳に届いてくる。そうした出来事が、わたしたちの日常にどのような関わりをもつのか。

本書が取り上げる「国益」という視座は、現実を読み解くうえで適切な座標軸を私たちに提供してくれる。現役の外交官からアカデミズムに転じたという著者の筆致は、終始穏やかでバランスがよい。しかしながらその行間からは、日本の未来に対する熱い想いが伝わってくる。これぞ良書だ。

しいたに

著者

小原 雅博(こはら まさひろ)
東京大学大学院法学政治学研究科教授。1955年、徳島県生まれ。博士(国際関係学)。東京大学卒、カリフォルニア大学バークレー校にて修士号取得。1980年に外務省に入り、アジア大洋州局審議官、在シドニー総領事、在上海総領事などを歴任した後、2015年より現職。復旦大学(上海)客員教授も務める。著書に、『東アジア共同体』『国益と外交』(ともに日本経済新聞出版社)、『「境界国家」論』(時事通信社)、『チャイナ・ジレンマ』『外交官の父が伝える素顔のアメリカ人の生活と英語』(ともにディスカバー・トゥエンティワン)『日本走向何方』(中信出版社)など。東大では、現代日本外交を担当。外交官としての実務経験と大学での理論研究に基づく国際政治学を探求。critical thinkingによる授業を重視。

本書の要点

  • 要点
    1
    2013年の「国家安全保障戦略」により、日本の国益は「国家・国民の安全」「国家の繁栄」「普遍的価値観にもとづく国際秩序(リベラル秩序)の擁護」と定められている。
  • 要点
    2
    日本の国益は、いま「北朝鮮の核・ミサイル」「東シナ海の尖閣諸島を巡る対立」「南シナ海における法の支配の問題」という3つの脅威にさらされている。
  • 要点
    3
    日本はアメリカと中国という2つの大国に挟まれた「境界国家」である。現実主義と理想主義を包摂した「開かれた国益」によって、戦略的に生き残るとともに、国際社会へ貢献していかなければならない。

要約

国益とはなにか

開かれた国益
Nuthawut Somsuk/gettyimages

日本における国益についての議論には、相反する2つの主張があった。ひとつは、国益を戦前の強硬外交を想起させる排他的で危険な概念と捉え、国益ではなく国際協調を重視すべきという主張である。もうひとつは、譲歩や国際協調を弱腰や追随と批判し、国益を優先させるべきという主張である。

しかし日本が取るべきアプローチは、国益と国際協調を二者択一に捉えるのではなく、国際協調によって国益を追求することだ。著者はこれを「開かれた国益」と呼ぶ。これが本書を貫く、核となるコンセプトである。

開かれた国益のために重要なのが、自国に国益があるように、他国にも国益があるという認識である。2国間・多国間で共有できる「国際益」から、グローバル化する世界全体の利益(「世界益」とも「地球益」とも呼べる)まで、その実現のために汗を流し、イニシアチブを取る「積極的国際協調」外交を推進することが、日本の国益を守ることにつながるだろう。

パワーと道義

国益をめぐる対立や紛争をどう解決するのか。軍事力や経済力といったパワー(権力)を重視するリアリズム(現実主義)と、法や道義を重視するリベラリズム(理想主義)は、長年ずっと対立してきた。

しかし現実問題として、国際社会では「パワーの優越」が見られる。これまでも小国は大国のパワーに対して道義で抵抗してきたが、最終的には強大な力の前に屈することになった。国際法という道義についても、大国はしばしば自国の国益に照らして、履行したりしなかったりしてきたという背景がある。

とはいえ道義を無視して、国際政治を語ることができないのもまた事実だ。そもそも「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配」といったリベラルな価値観を掲げ、長年にわたって国際社会をリードしてきたのが、ほかならぬアメリカであった。とりわけ「自由」はアメリカ建国以来の理念であり、「灯台」となって世界を照らしてきたという経緯がある。

日本の国益

2013年の「国家安全保障戦略」によって、戦後はじめて日本の国益が明確に規定された。そこでは「国家・国民の安全」「国家の繁栄」「普遍的価値観に基づく国際秩序の擁護」の3つが挙げられた。

国益において大前提となるのが、「国家・国民の安全」だ。しかしこれだけでは不十分である。平和が確保されることを前提に、国民は物質的豊かさや精神的快適さを求める――この「繁栄」が、平和に次ぐ重要な国益となる。

これに加えて「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールにもとづく国際秩序を維持・擁護すること」も、日本の国益として規定されている。

すなわち日本の国益とは、「安全」「繁栄」「リベラル秩序」という3つのキーワードにまとめられる。

【必読ポイント!】 3つの脅威

北朝鮮の核・ミサイルの脅威
Paul Campbel/gettyimages

日本国土を射程に入れる北朝鮮の核ミサイルが、日本の「国家・国民の安全」における最大の脅威であることはいうまでもない。

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