なぜ、トヨタはテキサスに拠点を移したのか?

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なぜ、トヨタはテキサスに拠点を移したのか?
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なぜ、トヨタはテキサスに拠点を移したのか?
出版社
日本実業出版社

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出版日
2018年12月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

テキサスにはアメリカの、そして日本の未来があるのかもしれない。

テレビをはじめとしたメディアに映るアメリカは、政治のワシントン、経済のニューヨーク、エンタメのロサンゼルスといった具合に、ごく狭い範囲に限られる。その一方でテキサスの情報はほとんど伝えられていない。しかしこの地域は全米でいまもっとも経済成長しており、トヨタをはじめとした大企業、そしてアメリカンドリームを夢みるベンチャーがこぞって拠点を設立しているという。

どうしてテキサスなのか? 著者曰く、その大きな理由のひとつが「地の利」である。日本の25倍の国土面積を持つアメリカであるが、テキサス州ダラスの空港を使えば、ほとんどの都市に日帰りできる。また日本企業も協力している「テキサス新幹線」や、ウーバーによる大型ドローンを用いた「空飛ぶタクシー」の実用化など、新たな交通インフラの新設も計画されている。

カウボーイ文化と豊富な天然資源を背景に、巨大なハブ空港によって全米の交通の要衝として発展したテキサス州。実にアメリカらしい「体臭」が強く感じられる地域である一方で、本書を読めばこの地域がアメリカの未来を担っていることも理解できるはずだ。古くからあるエクソン・モービルやテキサス・インスツルメンツといった企業に続き、今後どのような企業がこの地で花開くのだろうか。本書を読みながら、そのような想像をたくましくするのも楽しいだろう。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

倉石 灯(くらいし あかり)
ルーク倉石。和魂リアルティ株式会社CEO。長野県出身。防衛大学校管理学部卒業。1984年、渡米。ダラス大経営大学院卒業(MBA取得)。1987年、米国三井不動産販売株式会社入社。同社副社長兼ブローカーオフィサーを務める。十数年の在職中には、主に米国商業不動産の小口化商品を日本の投資家向けに販売し、会社として総額約200億ドル分の不動産を証券化。1997年、米国最高峰の認定不動産投資顧問資格CCIM取得。同社退職後、日米で十数社の役員を務め、自らが代表取締役を務める会社を株式公開。テキサスで不動産のアセットマネジメント等、商業不動産投資専門家として活躍し、和の心(和魂)を伝える。共著書に『資産家たちはなぜ今、テキサスを買い始めたのか?』(ぱる出版)がある。

中野 博(なかの ひろし)
作家兼実業家。愛知県出身。早稲田大学商学部卒業。デンソー入社後、ジャーナリストとして活躍。1997年にエコライフ研究所設立。その後、ゴクー、未来生活研究所を設立し、代表取締役に就任。現在も3社の経営に当たる。2011年から「信和義塾大學校」を創設し、アメリカ、カナダ、タイなど世界各地で和魂洋才を教える。テキサスにも5年ほど前から注目して取材を開始、2年前に開校した。著作は『“強運を呼ぶ”9code(ナインコード)占い』(ダイヤモンド社)や「信和義塾シリーズ」(現代書林)など。本書が32冊目。

本書の要点

  • 要点
    1
    テキサス州の都市ダラスを中心とする「ダラス経済圏」がいま、力強く発展している。人件費や家賃など、あらゆるものが高くなりすぎた東海岸や西海岸の都市から移転してくる企業が続出している。
  • 要点
    2
    企業がテキサスに移転してくるのは、全米にアクセスが良い「地の利」と、州の法人税および個人所得税がゼロであるという「税制」の2点が主な理由である。
  • 要点
    3
    トヨタは全米の三都市に分散していた本社機能をテキサス州プレイノに集約し、従業員4000人を呼び寄せた。他の日本企業も続々とテキサス州に拠点を移したり新設したりしている。

要約

【必読ポイント!】 なぜ、トヨタはテキサスを選んだのか?

10年後、世界を牽引するテキサス
f11photo/gettyimages

「今後、世界を牽引していく国はどこか?」と質問されたら、その答えはもちろん米国だ。米国では日本や欧州の国々を尻目に、今後も人口(特に若年層人口)が増加し続けると予想されており、長期的な成長が見込まれる。

全米50州でも高い成長率が期待されているのが、テキサス州にある交通の要衝、ダラス市を中心とした「ダラス経済圏」だ。隣接するフォートワース市とともに「ダラス・フォートワース都市圏」とも呼ばれるこの経済圏には、2009年からの5年間だけで約800もの企業が移転や事業拡張を進めている。

これまで米国はニューヨークやワシントンを中心とする「東海岸経済圏」と、ロサンゼルスやシリコンバレーを中心とする「西海岸経済圏」の2軸で発展してきた。しかし両経済圏とも人件費や不動産価格、物価が高騰。企業は将来のために、さまざまな可能性を検討しなければならなくなった。そこで浮かび上がってきた選択肢のひとつが、次世代を牽引する第三の経済圏「ダラス経済圏」を核とする、南部経済圏への移転である。

トヨタを魅了した「テキサス・メリット」

トヨタは2014年、カリフォルニア州、ケンタッキー州、ニューヨーク州に分散して置かれていた米国本社機能をテキサス州プレイノに集約し、約4000名の従業員をこの地に異動させると発表した。プレイノはダラスの北に隣接する都市である。

この移転の理由、すなわち「テキサス・メリット」を一言で表現すれば、「地理的な優位性」と「圧倒的に優位な税制」の2つに集約される。海運と空運で全米有数の規模を誇る拠点があり、陸運でもダラス経済圏からトラックで48時間以内に全米の93%の地域に到達が可能だ。

また税制面でも恵まれており、州が徴収する法人税および個人所得税がともにゼロである。この他にも家賃や物価水準が比較的安価なこと、資源やエネルギーに恵まれていることなどもメリットとして挙げられる。

ダラス経済圏に集まる日本企業

トヨタの拠点集約に続くように、建機製造大手のクボタが米販売子会社の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移した。また電機大手のパナソニックも、デジタル関連の拠点をダラスに開設している。

このように大手メーカーが拠点を置くと、周辺には部品メーカーをはじめとした関連企業も集まるため、テキサス州では日本人コミュニティがいま急拡大している。ダラス日本人会は1983年に48社164世帯で発足したが、現在は142社946世帯の規模だ。

「カウボーイの街」から激変するテキサス

カナダや韓国をしのぐ経済規模
Luis M/gettyimages

テキサス州というと、どのようなイメージが浮かぶだろうか。西部劇のようにカウボーイが闊歩し、巨大なステーキにかぶりつく姿だろうか。たしかにテキサス州には西部劇をモチーフとした飲食店や建物がたくさんあり、食べ物は米国でも特にビッグサイズだが、人口や経済規模も巨大な州であることを忘れてはならない。

テキサス州は2800万人の人口を誇り、これは3900万人を擁するカリフォルニア州に続いて米国2位である。また各州の名目GDPでもカリフォルニア州に続いて2位だ。

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要約公開日 2019.02.07
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