知ってはいけない2

日本の主権はこうして失われた
未読
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日本の主権はこうして失われた
未読
知ってはいけない2
ジャンル
出版社
出版日
2018年11月13日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

現在の日本とアメリカの関係の本質は何か。それは、日本独立直前に起こった「米軍への主権なき軍事支援体制」、いわゆる「朝鮮戦争レジーム」にある。独立交渉において、米軍から圧力をかけられて結んだのが、旧安保条約と行政協定であった。

著者の矢部宏治氏は、10万部のベストセラーとなった前著『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』で、この体制がなぜ始まったのかを解説した。戦後日本は、朝鮮戦争がまだ正式に終わっていないことを法的根拠として、米軍への軍事支援を継続する「準戦時体制」が続いていたのだ。本来であれば、日本が自力で解決すべき課題であった。

2018年3月、朝鮮半島で突如として南北の劇的な緊張緩和が始まり、6月には米朝首脳会談が実現した。いつ「終戦宣言」が出されてもおかしくない。これは日本にとっては願ってもないチャンスであり、この歴史の流れに合流すればよいだけだった。にもかかわらず、日本は「分断された民族の融和」と「戦争の回避」という、祝福すべき歴史の流れに最後まで抵抗した唯一の国となってしまっている。

本書の目的は、なぜ日本でこのような異様な体制が続いているのかという謎を解くことである。このままでは朝鮮戦争が終わっても、日本の中にだけ「朝鮮戦争レジーム」がアメリカとの二国間関係として半永久的に残る可能性すらある。

「ポスト戦後日本」を生きる私たちが、混迷の中から平和な夜を生み出すために知るべき内容が今ここに。

ライター画像
池田明季哉

著者

矢部 宏治(やべ こうじ)
1960年兵庫県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。株式会社博報堂マーケティング部を経て、1987年より書籍情報社代表。著書に『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(講談社+α文庫)、『天皇メッセージ』(小学館)、『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること――沖縄・米軍基地観光ガイド』(書籍情報社)がある

本書の要点

  • 要点
    1
    日本は、近代国家にはまれに見るほど他国からの干渉を許し、軍事的な主権を放棄した国である。
  • 要点
    2
    現在の日本の政治的な混乱は、過去の政治家たちが「密約」の役割や内容を正確に理解しないまま調印を行い、挙句はそれを破棄したり隠蔽したりしてきたことにある。その結果、アメリカとの外交交渉では相手の言いなりになるしかない状態が続いている。
  • 要点
    3
    新安保条約は、日米の対等な関係の象徴として位置づけられているが、実質的には旧安保条約と同じ内容である。

要約

【必読ポイント!】 密約の存在を否定し、末期状態にある日本

日米密約問題への誤った対応
revenaif/gettyimages

現在大きな疑惑として報じられている「日米密約」問題。2001年以降の外務省は、資料を破棄して、この問題を隠蔽した。これにより日本は、アメリカの方針に従うしかないという末期的な状態に陥っている。財務省や防衛省の資料改ざん・隠蔽問題も、その源流が過去の外務省の日米密約問題への誤った対応にあったことは間違いないだろう。

密約はどんな国同士の交渉にも存在する。だが、日米間の密約には異常な点がある。アメリカ側はその記録を保管しており、作成から30年経った文書は基本的に機密を解除し公開することが、法的に決められている。これに対して日本は、密約の存在を否定しており、国会で嘘をついてもかまわないという原則が1960年代に確立されていたようだ。結果として、日本では、ある内閣の結んだ密約が別の内閣には引き継がれないという、近代国家にあるまじき状況が起こっている。

公然と「嘘」をつく政治家たち

岸信介や佐藤栄作のような戦後日本を代表する政治家たちは、密約は個人間で交わすものだとし、次の政権に引き継ぐ必要はないと考えていた。しかし、アメリカは、密約とは政府対政府で取り交わすもので、政権が変わっても受け継がれると考えている。国際法上、アメリカの認識が正しい。

この深刻な認識の違いが表面化したのが1963年である。核兵器を積載した米艦船が日本に寄港していたという疑惑が生じた。このとき、池田勇人首相や志賀健次郎防衛庁長官は、明確にその事実を否定した。しかし、実際には1953年から核兵器を積んだ米艦船が日本に寄港し、核攻撃の演習などを行っていた。それは、1960年に交わされた密約文書によって、アメリカ政府は核兵器を積んだ艦船の日本への寄港は了承済みだと考えていたためである。

アメリカ側は池田首相らの発言を問題視し、密約文書の内容を提示した。ところが数年経つと、密約の中身はまたも引き継がれていない。そのため、アメリカ側は繰り返し日本にその内容を説明することになる。それでもなお日本政府は、核兵器を積んだアメリカ艦船が日本に寄港したことはないと、明白な嘘をつき続けた。

改ざんされていた外務省の最重要書類

日本の大臣は短い任期で入れ替わる。そのため、複雑な密約の内容を理解していないという事態はあり得る。だが、そこでの交渉は外務省の報告書に記録されているはずなので、官僚は把握していなければならない立場だ。

著者は外務省が公開している原資料にあたり、その筆跡を専門家による鑑定にかけた。そして、それが改ざんされていることを知った。おそらく改ざんの目的は、密約が存在しないという従来の見解を維持するためだろう。

外務省のトップすら何もわかっていない

密約の解釈を誤り、今も引き継がれる混乱
Duncan_Andison/gettyimages

戦後日本の外務省で、もっとも優秀な外交官とみなされているのは東郷文彦である。しかし彼は、結果として密約文書についての解釈と処理を誤り、これが現在まで続く政治的混乱のきっかけとなってしまった。

元外務次官の村田良平は、1960年の安保条約交渉時について、こう見解を述べている。日米間で、核兵器を搭載する米国艦船や米軍機の日本立ち寄りについての事前協議は必要ないという密約があったというのだ。村田は、政府や国会答弁で一度行った答弁を変えることは許されないという不文律を批判した。そして、国民を欺き続けることをやめるべきだと主張した。

緻密な交渉ができない日本外交の「伝統」

日本の外務省にはこんな伝統がある。日米安保や北朝鮮問題といった重要な機密については、次官、局長、担当課長の三人だけが知っていればよいという伝統だ。結果として、外務省内で過去の歴史的事実が共有されず、そのポストにいる2年間での情報しか集まらないことになる。

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要約公開日 2019.02.10
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