学校の「当たり前」をやめた。
生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革

未 読
学校の「当たり前」をやめた。
ジャンル
著者
工藤勇一
出版社
時事通信社 出版社ページへ
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2018年12月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革
著者
工藤勇一
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定価
1,800円 (税抜)
出版日
2018年12月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

「何も考えずに『当たり前』ばかりをやっている学校教育が、自分の頭で考えずに、何でも人のせいにする大人をつくる」という帯の言葉に、ドキッとする方も多いのではないだろうか。

NHK「おはよう日本」やTBSラジオ、新聞各紙で紹介され、教育界の改革者として注目を浴びているのが、本書の著者である千代田区立麹町中学校・工藤勇一校長だ。本書は工藤氏がこれまで取り組んできた、学校における諸制度の改革を取り上げたものである。服装や頭髪の指導は行わない。一律の宿題を出さない。中間・期末テストや固定担任制の廃止。古くから「当たり前」のものとして考えられてきたさまざまな仕組みを、次々と変えていくエピソードは痛快だ。

こうした改革の裏には、「目的と手段を取り違えない」、「上位目標を忘れない」、「自律のための教育を大切にする」という工藤氏の理念がある。学校が担うべき本来の役割とは何か――工藤氏は生粋の教育者として、この問いを常に考え続けてきたという。そして「子どもたちが社会の中でよりよく生きていけるようにする」ことが学校の本質的な役割だと思い至り、その実現のため学校を「リ・デザイン」するべく、制度改革を推進してきたのである。

経営環境やビジネス構造が急変する現代においては、ビジネスパーソンも慣例を打ち破り、ビジネスプロセスの再設計を迫られる場面が多いはずだ。教育に携わる方だけでなく、「何かを変えたい」という思いをもつすべての方に読んでいただきたい一冊である。

狩野詔子

著者

工藤 勇一 (くどう ゆういち)
1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長等を経て、2014年から千代田区立麹町中学校長。教育再生実行会議委員、経済産業省「未来の教室」とEd Tech研究会委員等、公職を歴任。本書が初の著作となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    制度や仕組みは、時代とともに変えていく必要がある。100年続いてきた仕組みであっても、目的を達成するために最適でないならば、改善・改革していくべきである。
  • 要点
    2
    改革を行うにあたり、反発や抵抗が起きるのは当然だ。人々の間に意見の相違があっても、対話を通して合意形成を図るべきである。その際は最上位の目標に立ち戻ると、解決の道筋が見えてくる。
  • 要点
    3
    学校は、子どもたちが「社会の中でよりよく生きていける」ように学ぶ場所である。教員は「生徒たちが主体的に学ぼうとする仕組み」を整えなければならない。

要約

【必読ポイント!】 目的と手段の観点からスクラップ(見直し)する

宿題――ただこなすだけになっていないか
HT-Pix/gettyimages

全国のどの学校でも宿題が出されている。その目的を問われれば、多くの学校関係者や保護者は「子どもの学力を高めること」「学習習慣をつけること」と答えるだろう。しかしそれで本当に目的が達成されるかは疑問だ。

自ら学習に向かう力を身につけ、学力を高めていくには、「わからない」問題を自分で理解していくプロセスが必要だ。しかし多くの宿題にはそのプロセスが欠けている。宿題は授業を理解している生徒にとって無駄な作業である一方、授業内容が理解できない生徒にとっては重荷になってしまっている。

フィンランドでは教員も子どもも「なぜ?」という言葉が口癖になっているという。疑問に思ったことはすぐ確認し、不合理な状況があれば改善・解決しようとする。そうした習慣を身につければ改善が進み、労働生産性が高まるのではないだろうか。

著者は麹町中学校長に赴任して2年目に、夏休みの宿題をゼロにし、日常的な宿題も段階的に減らしていった。そして赴任4年目を迎える頃、宿題の全廃に踏み切った。本当に大切なのは勉強時間よりも勉強の中身だ。自律的に学ぶ経験を積まないと、工夫して仕事ができる大人には育たない。

なによりも重要なことは、学校で学習すべき内容を理解できるようにすることであり、生徒たちが主体的に学ぼうとする仕組みを整えることなのだ。

定期考査をなくした理由

著者が定期考査をなくそうと考えたのは宿題と同様、「目的を達成するための手段」として適切ではないということが理由だ。

あなたは定期考査の直前になってから躍起になって勉強し、テストに出そうな部分を一夜漬けで頭に叩き込んだことはないだろうか。一夜漬けでの学習は、学習成果を持続的に維持するうえで効果的とはとてもいえない。このような勉強方法で獲得した点数や評価は、その生徒にとっての最大瞬間風速にすぎない。テストを実施する目的は学力の定着を図ることなのに、目的と手段のねじれが生じているのである。

著者は麹町中学校に赴任して2年目から1学期の中間考査を廃止し、年5回あった定期考査を年4回とした。そして赴任5年目の2018年度からは、全学年で中間考査と期末考査を廃止し、代わりに学習のまとまりごとに単元テストを実施することにした。この単元テストは再チャレンジできるので、生徒は着実に学力を高められる。加えて年に3回あった実力テストを5回に増やした。実力テストは出題範囲が事前に知らされないので、生徒の本当の実力がわかるというわけだ。

多くの中学校で実施されている中間考査や期末考査は、通知表をつけるためにある。しかし学力を一定の時点で切り取って評価するのは無意味だ。たとえ途中の時点で問題が解けなかったとしても、最終的に習得できれば通知表に5をつけてよい。学習に早い、遅いは関係ないのだ。

固定担任制の廃止
z_wei/gettyimages

「宿題の廃止」「定期考査の廃止」に続き、著者が見直したのが「1クラス1担任による固定担任制」という仕組みだ。麹町中学校では2018年度から学級担任を固定せず、学年担当の全教員でその学年の全生徒を見る「全員担任制」が採用されている。各教員の得意分野を生かすことが、生徒にとって大きな価値になると考えているからだ。

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