複業の教科書

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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2018年12月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

こんな疑問が頭をもたげたことはないだろうか。「今の会社で、この仕事だけやっていていいのだろうか」「やりたい仕事をするチャンスはいつ訪れるのか」。現状にモヤモヤしているが、転職や起業で失敗はしたくない。では失敗のリスクを最小限にして、人生を取り戻す方法があるとしたらどうか?

2018年、政府の「モデル就業規則」において、副業禁止から解禁へと画期的な変更が行われた。これは、個人が会社と対等にリソースを提供し合う時代が本格化することを示している。ただし、著者が推奨するのは、副収入目的の「副業」ではない。やりたいことへの挑戦につながり、本業とのシナジーを生み出す「複業」こそが、人生100年時代の大事な切り札になるという。

複業研究家、働き方改革の専門家として活躍する著者、西村創一朗氏は、自身が複業によってありたい姿に近づいてきた。複業家コミュニティや複業家のための学校も運営しているという。そうしたなかでの経験や複業の先駆者たちの生の声が、本書に詰まっている。複業を始めるためのステップ、軌道に乗せるためのコツ、よくある失敗への対処法。複業に興味をもつ方が、「まさにこの情報を求めていた!」と思う内容ばかりではないだろうか。また、著者の「仕事の流儀」も垣間見れ、その真摯さこそ「やりたいことを仕事にする」ための根幹なのだと、要約者は痛感した。

まさに『複業の教科書』の名にふさわしい一冊だ。複業を検討中の方もそうでない方も、著者の言葉に耳を傾け、自分らしい未来図を描いていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

西村 創一朗(にしむら そういちろう)
株式会社HARES(ヘアーズ)代表取締役・複業研究家
ランサーズ株式会社 タレント社員 PRスペシャリスト
1988年神奈川県生まれ。大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・人事採用を歴任。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、2017年1月に独立。独立後は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。2017年9月〜2018年3月「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経済産業省)委員を務めた。
プライベートでは10歳長男、6歳次男、2歳長女の3児の父、NPO法人ファザーリングジャパンにて最年少理事を務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業も政府も「副業解禁」へ大きく舵を切ろうとしている。
  • 要点
    2
    今後は定年後にフリーランスとして働く必要性が高まる。そのときに役立つのが現役時代の複業経験である。
  • 要点
    3
    「複業」は、本業だけではできない「やりたいこと」へのチャレンジを起点とした、価値創造活動全般を指す。
  • 要点
    4
    複業を始める際は、「目的を明確にする」→「見立てる」→「仕立てる」→「動かす」のステップを踏むとよい。

要約

1社では生き残れない時代の到来

政府の方針も副業「禁止」から「解禁」へ

1つの会社、1つの仕事だけでいい時代は終わった。同じ会社で働き続けても、転職をしても、給料が上がるのが不透明な時代になったためだ。

そんないま、企業も政府も「副業解禁」へ大きく舵を切ろうとしている。流れを加速させたのは、2016年6月に行われた、ロート製薬による副業解禁の発表だ。さらには2018年1月、副業における「常識」も180度変わる転機を迎えた。就業規則のひな型である「モデル就業規則」の改革である。「許可なく、他社の業務に従事しないこと」から、「勤務時間外に、他社の業務に従事できる」へと変更されたのだ。

この背景には、会社が労働者の人生を守れなくなったことがある。バブル崩壊後の不況により、日本企業は体力を失った。終身雇用や年功序列はもはや幻となってしまった。そんな時代だからこそ、副業を容認せざるを得ないというのが本音だろう。期を同じくして、LinkedIn創業者リード・ホフマンが述べるように、個人と企業の関係は、対等にリソースを提供し合うアライアンス関係へと変化を遂げようとしている。

フリーランスとして活躍できる力がなぜ必要か
KatarzynaBialasiewicz/gettyimages

企業の寿命サイクルが短くなるのに対し、個人の寿命は延び続けている。定年が70歳に延長されたとしても、定年後の生活を自分で守らなければいけない。すると、定年と同時に新たなキャリアとして、フリーランスの道を始める人が増えるだろう。

そのときに効果を発揮するのが、現役時代の複業経験である。社外にネットワークを築き、色んな組織で通用するポータブルスキルを身につけておく。そうすれば、定年後も「一生食っていける」という安心が得られる。また、複業を通じて鍛えられる「好きなことにチャレンジする」というマインド面のタフさも、財産になるはずだ。このように、個人が自分の人生を守るうえでも、複業は有効である。

あなたの人生を取り戻す「複業」という選択

「副業」と「複業」は何が違うのか?

内閣府の調査によると、転職や起業に関心がある人は70%にも上るという。働く人の多くが現状への不安を抱いているといえる。

とはいえ、転職や起業に踏み切るのは勇気がいる。必ず成功する確証はない。そんなとき、ノーリスクで人生を変える第3の道が複業である。今の仕事を捨てることなく、かつ今の仕事にしがみつかずに、新たな経験を積むキャリアルートだ。

ここで大事なのは、「副業」と「複業」は別物だということである。「副業」は余った時間を活用して副収入を得ることが目的となる。あくまでサブ的な位置づけだ。一方「複業」は、本業だけではできない「やりたいこと」へのチャレンジを起点とした、価値創造活動全般を指す。お金は目的ではなく結果としてついてくる。複業で得た経験やスキルが本業にも良い影響をもたらし、シナジーを生み出していくのが特徴だ。

複業の3大メリット
natasaadzic/gettyimages

では複業がもつ3大メリットとは何なのか。1つは、時間をかけて「やりたいこと」の追求ができるという点である。「Will(やりたいこと)」「Can(得意なこと)」「Must(求められていること)」。この3つの掛け合わさった仕事が、個人にとっての天職だといわれる。複業は、本業だけでは満たされるとは限らない「Will」を追求できる場でもある。自分発のプロジェクトであるため、やめるのも続けるのも自由だ。とことん「Will」を磨いて、精度を高めていけばよい。

2つ目のメリットは、「稼ぐ力」を得られる点だ。本業だけでは得られない経験、出会い、その人間関係の中で育っていく信頼。複業を通じて、こうした「無形資産」を蓄積できる。無形資産は成長のきっかけにもなり、人生そのものに彩りを与えてくれる。

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要約公開日 2019.02.25
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