人間は絶えずストレスにさらされている。ストレスは脳の働きを阻害し、不眠などの様々な症状を招く。
脳が何らかの脅威を感じると、脳の中の視床下部がホルモンを放出し、下垂体という部位を刺激する。すると下垂体が別のホルモンを放出し、それが血流によって運ばれ、副腎という部位を刺激する。その刺激によって、副腎からコルチゾールというストレスホルモンが放出される。
たとえばあなたが大勢の同僚の前でプレゼンテーションをしなければならないとする。あなたの動悸は速くなり、口の中は乾き、手はかすかに震えるだろう。こうした反応は、コルチゾールによって引き起こされている。
プレゼンテーションが終わり、ストレスを受ける状況から解放されると、コルチゾールの分泌量は速やかに減っていく。だがストレスを受ける状況が何カ月、何年と続くと、慢性的にコルチゾールが分泌され、脳の記憶中枢である海馬が委縮してしまう。ストレスは脳に損傷を与えさえするのだ。
ストレスにうまく対処するためには、コルチゾールが脳に与える影響を減らさなければならない。それには運動が有効だ。
運動している間は身体に負荷がかかるため、それが一種のストレスとなり、コルチゾールの分泌量が増える。運動が終われば、分泌量は運動する前のレベルまで下がる。運動を習慣づけると、運動している間のコルチゾール分泌量が増えにくくなる一方で、運動を終えたときには減りやすくなる。さらに、定期的に運動を続けると、運動以外のことが原因のストレスを感じたときにも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらなくなっていく。
つまり運動によって、ストレスに対する抵抗力を高めることができる。
ストレスに強くなるためには、筋力トレーニングよりも、ランニングやスイミングなどの有酸素運動が効果的だ。少なくとも20分、体力に余裕があれば30~45分続けるとなおよい。これを習慣化しよう。長く続けることで効果が出てくる。
週に2、3回は心拍数が大幅に増えるような運動をしよう。すると脳は、動悸が激しくなってもそれが恐怖からくるものではなく、プラスの変化をもたらすものであると学習していく。
ハードな運動をするのが難しいなら、ただ散歩するだけでもよい。ハードな運動をしたときほどではないが、ある程度の効果は期待できる。
あなたは、同僚が雑談に花を咲かせていても、携帯からメールの着信音が聞こえていても、目の前の仕事に集中することができるだろう。このように、脳が要らない情報を遮断することを選択的注意という。選択的注意は、目の前のことに意識を集中するために欠かせない能力である。
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