経営戦略としての異文化適応力

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経営戦略としての異文化適応力
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経営戦略としての異文化適応力
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2019年03月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書のテーマは「ビジネスと異文化」である。国民文化については、多くの経営学者が計測を試み、いくつもの指標が発表されてきたが、そのなかで本書が依拠するホスフテード教授による指数は最も有名なもので、異文化の研究者であれば知らない者はないという*。もしこのテーマに少しでも関心があるなら、まず手に取るべき一冊と言えるだろう。

本書では、各国の文化の解析に基づく「6次元モデル」をベースに、世界の国々が6種類の「メンタルイメージ(文化圏)」に分類されている。もし読者がある国で仕事をすることになれば、その国の慣習を事前に調べておくことに加え、その国のメンタルイメージを理解しておくといい。そうすれば、コミュニケーション上のリスクをかなり回避できるだろう。多国籍のメンバーと仕事をするときには、一人ひとりの考え方の背景として出身国のメンタルイメージが頭に入っていれば、相互理解はぐっとスピードアップするに違いない。また、私たち日本人もメンタルイメージを持っており、それは他の国のものとは異なるのだと認識しておく必要がある。

ディテールに少し触れると、要約者は「経営理論は米国の文化に拘束されている」という警告と、日本の「集団主義のパラドックス」をたいへん興味深く読んだ。意表を突かれるデータや事例も満載なので、楽しみながら読んでいただけると思う。

『世界の経営学者はいま何を考えているのか』入山章栄(英治出版)2012 p.189-190

ライター画像
しいたに

著者

宮森 千嘉子(みやもり ちかこ)
ホフステード博士認定ファシリテーター、マスタートレーナー。
サントリー広報部を経て、HP、GEの日本法人でコーポレートコミュニケーションに従事。50ヵ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進し、少しの成功と数え切れないほどの失敗を重ね、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。こうした現場の痛みの経験から、日本ではアカデミックと思われていたホフステードモデルを、21世紀のビジネスの現実に即して探求・実践し広めることを決意。日本、米国、アジア、欧州で企業、教育機関、プロフェッショナルの支援に取り組んでいる。英国、スペインを経て、現在米国シカゴ市在住。CQ(Cultural Intelligence)ならびに異文化適応力診断(IRC)認定ファシリテーター、MPF社認定グローバル教育教材〈文化の世界地図〉(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース修了。共著に『個を活かすダイバーシティ戦略』(ファーストプレス)がある。青山学院大学文学部フランス文学科、英国アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。
連絡先:japan@hofstede-insights.com

宮林 隆吉(みやばやし りゅうきち)
ホフステード博士認定ファシリテーター。
広告会社にて企業のグローバル・ブランド戦略に関わった後、ソーシャルメディア時代の消費者行動モデル「SIPS」を開発。シンクタンクにて、ホフステードモデルをベースとしたリーダーシップ・プログラム「CQ」を開発する等、アカデミアの研究を実務家の視点から実践的知識に変えていくことをミッションとして活動。現在は、主にイスラエル・米国・オーストラリアの先端マーケティング・テクノロジーへの投資・事業開発に従事しながら、一橋大学 国際企業戦略研究科後期博士課程にて「組織アイデンティティ」をテーマに研究を行う。国際大学大学院・グロービス経営大学院 マーケティング講師。慶應義塾大学経済学部卒。イエセ経営大学院(MBA)修士課程修了。
連絡先:ryu.miyabayashi@gmail.com/twitter:@ryumiyabayashi

本書の要点

  • 要点
    1
    ホフステード博士は、国による文化の違いを「6次元モデル」として世界で初めてスコア化した。その評価軸は6つで、「権力格差の大小」「集団主義か個人主義か」「女性性か男性性か」「不確実性の回避度の高低」「短期志向か長期志向か」「人生の楽しみ方が抑制的か充足的か」だ。
  • 要点
    2
    日本は、6つのモデルに当てはまらない独自のタイプだ。男性性が高く、不確実性の回避度もまた高い。
  • 要点
    3
    CQ(多様な文化的背景に効果的に対応できる能力)の高い組織をつくるには、お互いを理解し、客観視するアウェアネス(気づき)を持ったうえで、同じビジョンを共有することが重要だ。

要約

6次元モデルとは何か

国民文化の本質

本書では、ヘールト・ホフステード博士が開発した「6次元モデル」をベースに、異文化適応力をどう経営戦略に生かしていくのかを考えていく。

ここで扱う基本単位は「国民文化」だ。文化は「慣行(ふるまい)」と「価値観」から構成される。通常の異文化理解やトレーニングの対象になるのは慣行(ふるまい)だ。これは目に見える。

一方、価値観は目に見えない。物事を判断するよりどころになるもので、人生の極めて早い時期に無意識のうちに形成され、内面化される。私たちは自分自身がどんな価値観を持っているのかを知らないし、意識することもない。ストレスがかかったり嫌悪感を抱いたりしたときなどに、ふっと表れてくる。文化の中核をなすのがこの「価値観」だ。

文化をスコア化する
tadamichi/gettyimages

ホフステード博士は、膨大な調査データをもとに、国による文化の違いを「6次元モデル」として世界で初めてスコア化した。これは繰り返し議論され、ときには批判されながらも常に異文化の議論の中心になってきた。

6次元モデルによって、国ごとの文化の違いを客観的に認識することができる。そして6次元モデルのようなツールを用いつつ、多文化間で効果的に成果を出していく力がCQ(Cultural Intelligence)=文化の知能指数である。CQは「多様な文化的背景に効果的に対応できる能力」と定義されている。違う文化の人とともに問題を解決し、目的を達成することができる力を指す。

6次元モデルの評価軸

6次元モデルは次の6つの評価軸からなる。

(1)権力格差の大小:階層を重視するのか、それとも平等を重視するのか。

(2)集団主義か個人主義か:自分が属する内集団(家族や親戚)の利益を尊重するのか、独立し個人の利益を優先するのか。

(3)女性性(生活の質)か男性性(達成)か:競争社会のなかで家族、友人、大事な人と一緒にいる時間を大切にするのか、それとも達成する、成功する、地位を得ることを目指すのか。

(4)不確実性の回避度の高低:不確実なこと、曖昧なこと、知らないことを脅威と捉えるのか、それとも気にしないのか。

(5)短期志向か長期志向か:将来・未来に対してどう考えるのか。

(6)人生の楽しみ方が抑制的か充足的か:人生を楽しみたい、あるいは楽をしたいという気持ちを抑制するのか、それともその気持ちを発散させ充足させるのか。

6次元モデルでは、これら6項目について、各国の文化を0から100の指数で表している。このモデルの対象は国ごとの違いであって、個別の人間の違いではないことに留意したい。

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要約公開日 2019.04.11
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