本書の要点

  • つらいことをやる必要はない。著者はサラリーマンとしての適性がないと自己分析し、消去法的に起業という道を選んだ。そんな著者が提唱するのは、上場やイノベーションをめざさない「しょぼい起業」だ。

  • 「しょぼい起業」において重要なのは、生きているだけでかかるコストを利益に換えることだ。たとえば飲食店でいうと、自分が食べるごはんを多めに作り、余った分を売るような考え方だ。生活の中で自分のやれること・日常やっていることを事業化すればいい。綿密な事業計画や資金調達、オフィス、人材採用、広告宣伝は必要ない。

1 / 2

もう、嫌な仕事をするのはやめよう

つらいことをやる必要はない

a454/gettyimages

著者は学生のころ、就職活動をしなかった。性格上、サラリーマンとして働くのはほぼ不可能だと自己分析していたからだ。そこで消去法的に起業という道を選んだ。

起業といっても、上場することやイノベーションを起こすことが目的だったわけではない。最初は、知人づてにテープ起こしや簡単なライティング作業などを請け負う、便利屋的な仕事をしていた。やがてリアル店舗であるリサイクルショップを始め、次に学習塾、そしてバーを出店するにいたった。

商売がうまくいったため、現在はリサイクルショップや学習塾を事業譲渡し、「会長」のような立ち位置にいる。それと同時に、「しょぼい起業」という概念の提唱者としてプロデューサーやコンサルタント的な仕事もしているという。

そんな著者が本書で伝えたいのは、「つらいことをやる必要はない」ということだ。

サラリーマン以外にも選択肢はある

今の若者にとって、「サラリーマン」という選択肢は必ずしも最適解ではない。手取り20万円ほどで働かされ、残業も転勤もあり、毎朝満員電車に揺られて出社し、終電で帰るような生活。プライベートの時間もないし、家族と触れあうこともできない生活。そもそもこんなふうに働いていると、結婚も子育てもできないかもしれない。また、会社がつぶれてしまう可能性も、無理がたたって心を病んでしまう可能性もゼロではない。

世間は往々にして、サラリーマン生活に順応できない人に「落伍者」のレッテルを貼る。だがその人が脱落した「レース」とは、誰が主催し、誰が勝ち負けを決めるものなのだろう。サラリーマンがみんな成功者になれるわけでもないのに。会社のルールなど気にせず、嫌になったら辞めてしまえばいいのだ。

2 / 2

【必読ポイント!】 「しょぼい起業」をはじめてみよう

生きているだけでかかるコストを「利益」に換える

HAKINMHAN/gettyimages

起業すると決めたら、綿密な事業計画を作ったり、資金調達をしたり、オフィスを整えたり、採用をしたり……などといったことを考えるかもしれない。だが「しょぼい起業」においては、すべて不要だ。

農業を例にとって考えてみよう。「しょぼくない起業」では、メロンやイチゴなど、需要がありそうなものを高単価で売って儲けることを狙うだろう。一方「しょぼい起業」の場合はどうか。あなたが、野菜のとれる埼玉の実家住まいで、東京の学校まで通っているとする。授業のある日は通学定期券を使い、電車で東京まで出てくる。

このとき、あなたがひとりで埼玉から東京にやって来ればただの移動だ。だが、空のリュックに野菜を詰めて電車に乗り、東京でこの野菜を売ったとしたら、「移動」は「輸送」に変わる。毎日の通学がお金に換わるわけだ。

あなたがやることはさほど変わらない。いつもと同じ駅から、荷物を持って電車に乗って、買ってくれるお店に運ぶだけ。この「いつもやっている行為をお金に換える」という発想は「しょぼい起業」の基本的な考え方のひとつだ。これを「生活の資本化」(コストの資本化)と呼ぶ。

著者が経営していた「リサイクルショップ」と「飲食店」は非常に相性がいい。リサイクルショップに回ってくる家電のなかから、いちばんいいものを飲食店の内装に使ってしまえばいいからだ。そうすれば内装費を節約できる。

飲食店も同じだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り1795/3162文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2019.04.27
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

The San Francisco Fallacy
The San Francisco Fallacy
ジョナサン・シーゲル飯田諒(訳)
人生は攻略できる
人生は攻略できる
橘玲
勉強大全
勉強大全
伊沢拓司
アナログの逆襲
アナログの逆襲
加藤万里子(訳)デイビッド・サックス
ささいなことに動揺してしまう敏感すぎる人の「仕事の不安」がなくなる本
ささいなことに動揺してしまう敏感すぎる人の「仕事の不安」がなくなる本
みさきじゅり
即動力
即動力
田村淳
知らない人を採ってはいけない
知らない人を採ってはいけない
白潟敏朗
1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法
1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法
山口揚平

同じカテゴリーの要約

AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
越川慎司
壁打ちは最強の思考術である
壁打ちは最強の思考術である
伊藤羊一
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
橘玲樺山美夏
仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
加藤俊徳
肩書がなくても選ばれる人になる
肩書がなくても選ばれる人になる
有川真由美
頭のいい人が話す前に考えていること
頭のいい人が話す前に考えていること
安達裕哉
きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」
きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」
阿部恵
AIエージェント革命
AIエージェント革命
シグマクシス
やりきる意思決定
やりきる意思決定
中出昌哉
生成AI最速仕事術
生成AI最速仕事術
たてばやし淳