プア充

高収入は、要らない
未読
プア充
プア充
高収入は、要らない
未読
プア充
出版社
早川書房
出版日
2013年08月24日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

人生で走り続けたその先には、豊かな将来が待っているのだろうか。これは多くの社会人が抱えている普遍的な悩みだ。給料が増えれば増えるだけ、その用途は際限なく拡大していき、いつまで経っても余裕が感じられない。そのような状況を打破するために、価値観を全く変えてしまい、『リア充』ならぬ『プア充』を目指せ、というのが本書のメッセージだ。

確かに日本において、使う金額と得られる幸せは比例する訳ではないだろう。吉野家でも丸亀製麺でも十分に満足できてしまう。お金のかからないイベントの方が、テーマパークよりも面白かったりする。店舗貸切のパーティーよりもホームパーティーの方が贅沢な気持ちになる。そんな世の中では、実はお金をかけない方が、精神的に満たされた生き方ができるのであろう。著者が語る『プア充』の暮しには年収は300万円台で、外食をしない、規則正しい生活をする、ストレスをためないという原則があるようだ。もしかするとそのような生活の方が、『贅沢』なものなのかもしれない。

『プア充』を実践できる環境にある人が全てではないだろうが、殺伐とも感じる世間で暮らす中で本書はオアシスのような癒しを与えてくれるだろう。何も会社の出世競争や激務の環境に身を置く必然性はない。いつも忙しくストレスを溜めこみ、人より少し高い給料を飲食代やタクシー代に使い、気付けば貯金が全然貯まっていないようなパワーエリートこそ、読むべき悟りの書だと言えよう。

ライター画像
大賀康史

著者

島田 裕巳
宗教学者、作家、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長。
東京大学文学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了(専攻は宗教学)。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。通過儀礼(イニシエーション)を主軸として、既成宗教、新宗教に造詣が深く、宗教現象、新宗教運動も研究している。葬式、戒名、死との向き合い方、生き方に加えて、文化と宗教の観点から冠婚葬祭、宗教学の視点からビジネスや金融経済など、幅広いテーマで執筆する。『葬式は、要らない』『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』『神道はなぜ教えがないのか』『新宗教 儲けのカラクリ』『7大企業を動かす宗教哲学』ほか著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    『プア充』とは『年収300万円しか稼がないこと』により、幸せに暮らすという考え方だ。
  • 要点
    2
    強い意志がなければ、年収300万円の次は350万円、400万円、500万円と際限なく欲求は膨らんでいく。更にストレスを溜めながらお金を稼ぐと、衝動買いや、エステ・マッサージ、タクシー代などの余分な出費が嵩むことになる。
  • 要点
    3
    『プア充』を目指すには、都会に住んだ方がいい。特に地方で必須アイテムとなる車には、車のローンや保険、ガソリン代、車検代など出費が嵩む。
  • 要点
    4
    『プア充』の生活でも、結婚や子育てをすることは十分に可能だ。周りの方に世話になること、子供を私立に通わせないなどのポイントを押さえれば、問題なく暮らしていける。

要約

はじめに

本書の概要

本書は架空の主人公である西野ヒロシが歩む、高収入から低収入へのシフトを実行する道のりから、「少欲知足」の考え方を実践する『プア充』の生き方を学ぶものだ。

物語形式で書かれているので、ここではその一部を紹介しながら、主人公が如何にして「プア充」の考え方を学び、幸せを見出していくかに焦点を絞ってまとめたい。勝ち組や負け組と語られる世の中の既成概念に対して、健全な疑問を感じながら読み進めていただきたいと思う。それでは主人公の人生の転機について覗いてみよう。

どうして僕らは、お金持ちになりたいのか?

crazydiva/iStock/Thinkstock
働いても働いても貯金がない

主人公の西野ヒロシは、30歳でIT代理店の営業を担う。年収は450万円で平均より少し高い。そんな西野は今の会社の社長に言われた、「一流の生き方」をしたいと感じたのだ。

「人の何倍も働いて、人の何倍も稼いで、人の何倍も楽しむ。そんな一流の生き方をしたいなら、ぜひうちに来てほしい」

という言葉が入社に至った決め手である。元々は居酒屋チェーンに勤めていたが、IT企業の派手さ、女の子ウケの良さに憧れたことも転職の理由だ。そして転職から約1年半経った頃、合コンで知り合った21歳の女子大生リサと付き合うことになる。

しかし西野はリサに求められた誕生日プレゼントの指輪を買うため、預金残高をチェックして愕然とする。残高15万円。その金額は居酒屋チェーンで働いていた頃とほとんど変わっていなかったのである。

インセンティブ(報奨金)を受け取るためには、ノルマ達成が必要で、毎日終電まで働いているのに、だ。そこで西野はにわかに得体のしれない不安に襲われる。

「お金がないなら、もっと頑張って働くしかない。今まで以上に!」

これからの世の中を幸せに楽しく生きる方法
NengLoveyou/iStock/Thinkstock

そんな時、大学時代のゼミの同期会の話がくる。そこでゼミの教授島崎先生から興味深い話をされる。それは『年収300万円しか稼がないこと』により『プア充』の生き方をして、幸せに暮らすという考え方だ。

まず必要なお金に関する概念を壊す。島崎先生は日本では年収300万円もあれば、健全な暮らしができるという。会社はそもそも株主に利益をもたらすことを志向しているため、成長させていくことが使命。そして営業ノルマなどのプレッシャーが常に付きまとうのである。しかし個人としては、それに振り回される必要はない。

強い意志がなければ、年収300万円の次は350万円、400万円、500万円と際限なく欲求は膨らんでいく。更にストレスを溜めながらお金を稼ぐと、衝動買いや、エステ・マッサージ、タクシー代などの余分な出費が嵩むことになる。その次は夢のマイホーム、マイカーに誘導されていくのである。そのような幻想とも言える果てしない欲求を超えて、幸せに生きる方法はあるのだろうか。

【必読ポイント!】プア充について考えよう

仕事環境の変化

西野が翌週月曜日に会社に行くと、オフィスが騒然としていた。高級ブランドの時計と名刺ケースを愛用し、革のビジネスバッグにタブレットを持ち歩く、「デキる男」の代名詞だった佐々木部長が倒れたというのだ。朝早く来て仕事をしていたところ、急にバタンと倒れ、救急車に運ばれたらしい。先日も六本木で接待のため徹夜で飲み、シャワーを浴びてそのまま会社に来ていたほどにパワフルだった人が、である。

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要約公開日 2014.05.20
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