好奇心が未来をつくる
ソニーCSL研究員が妄想する人類のこれから

未 読
好奇心が未来をつくる
ジャンル
著者
ソニーコンピュータサイエンス研究所
出版社
定価
2,300円 (税抜)
出版日
2019年03月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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好奇心が未来をつくる
好奇心が未来をつくる
ソニーCSL研究員が妄想する人類のこれから
著者
ソニーコンピュータサイエンス研究所
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出版社
定価
2,300円 (税抜)
出版日
2019年03月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

2018年、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)が創立30周年を迎えた。それを機に編まれた本書には、20名の研究員のインタビューが収められている。

まず驚かされるのが、その研究領域の広さ、多彩さだ。100%の子会社でありながら、ソニーの事業領域をはるかに超えた分野の研究が行われている。所長の北野宏明氏の言葉を借りれば、「現在のソニーの事業領域を意識しすぎては、当研究所としての使命を果たすことはできない。世界が大きく変化することを前提に、想定外の領域や技術・着想の引き出しを広く深くつくり上げておくことが重要な役割」だからである。

また「クレイジー」を自称するだけに、研究員の多彩な個性、異能・異才ぶりが際立つ。経歴はもとより、一人ひとり描いている未来も違えば、研究の動機も違う。科学に向き合う姿勢も違えば、問題意識も異なる。本書でも北野氏による前書きを除き、ひたすら研究員のインタビューが並べられている。個々の思想や研究をひとまとめにすることは不可能であり、あえて共通点を挙げるのであれば、それぞれの個性が際立っている点だけだ。そしてそれこそがソニーCSLなのである。

制約は最小限にして、できる限り研究員一人ひとりの自主性に任せること。そこにあるのは「自由」である。そうであるならば、何を読み取り、何を感じるか、読者にも最大限の自由と楽しみが許されているだろう。本要約では所長の北野氏を含め、6名のインタビューを取り上げる。

しいたに

著者

ソニーコンピュータサイエンス研究所 (ソニーCSL)
1988年に設立されたソニーの研究所。新たな研究領域や研究パラダイム、新技術や新事業を創出し、人類・社会に貢献することを目的とする。当初は、分散オペレーティングシステムやコンピュータネットワークなど次世代のコンピュータシステムの基礎を担うテーマを中心に研究活動をスタート。現在のソニーCSLは、(1)農業、都市計画、エネルギー、そして医療などの社会課題を扱うグローバル・アジェンダ、(2)人間の能力拡張(Human Augmentation/Creativity)、そして(3)AIやデータ解析を基盤として現実世界のシステムやプロセスをインテリジェント化することを目指すサイバネティック・インテリジェンスを主な研究テーマとしている。東京以外にパリに拠点を持つ。
https://www.sonycsl.co.jp/

本書の要点

  • 要点
    1
    研究をするということは、未来を切り開いていくということである。その原動力は、一人ひとりの強烈な想いから生まれる。
  • 要点
    2
    最初の変化は、たった一人の研究員のイマジネーションと行動から発生する。それが動き出すと、一緒にやろうという仲間がかならず出てくる。そのようにして世の中が変わる流れが生まれる。ソニーCSLの役割は、その最初の流れをつくることである。
  • 要点
    3
    研究分野は研究員の数だけあるといっていい。基礎研究から社会実装や事業化まで、「研究員の妄想」を一気通貫に現実化する体制をソニーCSLは整えている。

要約

イントロダクション

人類の未来のための研究
metamorworks/gettyimages

ソニーCSL(ソニーコンピュータサイエンス研究所)のミッションは単純明快だ。「人類の未来のための研究」を行うこと、この一点に集約される。世のため、人のためになっているのか。これが研究に対する唯一の評価基準である。

研究分野は特に限定していないが、大きく次の3つの領域に括ることができる。

1つめはグローバル・アジェンダ。地球規模の大きな問題に関して、どうアプローチするかという視点である。

2つめはHA(ヒューマンオーグメンテーション)、すなわち人間の能力の拡張である。クリエイティビティや感覚能力、身体能力の向上に、どうテクノロジーが活用できるかを研究する。

3つめはサイバネティック・インテリジェンスだ。AI(人工知能)やデータ解析によって、現実世界のシステムやプロセスの最適化を目指す。

【必読ポイント!】グローバル・アジェンダ

生命への憧れ――農業

人類の1万年以上にわたる農業の歴史において、生物多様性と生産性は常にトレードオフの関係にあった。文明が大規模な発展を遂げるたび、周囲の自然環境が破壊され、最終的にはその文明自体も滅びるということを繰り返してきた。

舩橋真俊(ふなばしまさとし)氏が研究する「協生農法」は、これまで幾多の文明が為しえなかった、「食料生産と生物多様性の両立」の達成を地球規模で目指すものである。多くの種類の野菜や果樹などを1つの土地で生育させることで、強い生態系をつくりあげ、耕起や施肥・農薬を無用とする。従来の農業の常識とはかけ離れた方法でありながら、すでに生産性の向上や生物多様性の回復、砂漠の緑化といった結果を出している。

舩橋氏の研究の原点には、幼少の頃に培われた「生命」に対する強烈な直観がある。飼っていた蝉を、誤って逃がしてしまったときのことだ。追いかける目線の先には、籠から解かれて自由になった蝉が、力いっぱいに夕陽の中を飛んでいく姿があった。それがあまりにも美しく、舩橋氏はただ立ち尽くしながら見ていたという。

大学では生物学から数理科学系の修士を経て、物理学に転身するという越境を繰り返した。フランス政府給費留学生として仕上げた博士論文は、まったく異なる分野の研究を同時並行で進め、最終的に一段抽象化したレベルで「複雑系における創発現象の類型論」という形でまとめた。

地球上で多段階にわたって生命現象が発展し、絶えることなく続いてきたのはなぜか。その本質的メカニズムは、ブラックボックスのままである。そうであれば、ブラックボックスをそのまま生きている状態の基本単位として認めて、そのうえで創発する現象の一般論を探ろうと考え、論文にはできるだけ多様なスケールの複雑系を入れた。こうしたアプローチが、のちに協生農法の基盤となる「生態系の拡張」という概念につながったのである。

人間能力の拡張

サイボーグ009――HA
AndreyPopov/gettyimages

子どもの頃に親しんだSFやアニメの世界に導かれてこの道に入った、という研究者は多い。暦本純一(れきもとじゅんいち)氏の場合は、サイボーグ009である。暦本氏が取り組む人間の能力を拡張するHA(ヒューマンオーグメンテーション・人間拡張)と、サイボーグ009で描かれるような、特殊能力を持つサイボーグに人間を改造することは、強い関連を持っているという。

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テクノロジー・IT サイエンス リベラルアーツ
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2019年03月10日
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