天才を殺す凡人

職場の人間関係に悩む、すべての人へ
未読
天才を殺す凡人
天才を殺す凡人
職場の人間関係に悩む、すべての人へ
未読
天才を殺す凡人
出版社
日本経済新聞出版社

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出版日
2019年01月16日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「才能」――なんとぼんやりした言葉だろう。その実体はあまりに曖昧であるようにみえる。

本書はそんな、つかみどころのない「才能」をテーマにした一冊である。著者は、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』の大ヒットが記憶に新しい、北野唯我氏だ。

本書もデビュー作と同様、ストーリー仕立てとなっている。主人公は、あるテックカンパニーで広報を務める青野。35歳だ。彼は創業者である上納アンナの“才能”に惚れ、創業メンバーに名を連ねている。

ある日、週刊誌に上納アンナのネガティブな一面を強調した記事が出てしまった。この出来事をきっかけに、上納アンナだけでなく、広報としての青野の立場も悪くなっていく。悩む青野に手を差し伸べてきたのは、誰もが知るある銅像だ。青野は彼(?)から、人間には「天才」「秀才」「凡人」の3種類がいること、「天才」は「凡人」によって殺され得ることを教わる――。

以上のあらすじからわかるように、テーマは重いのだが、非常に読みやすい。何より「天才」「秀才」「凡人」を明確に定義した上で、それぞれの関係が描き出されている点が興味深い。サブタイトルには「職場の人間関係に悩む、すべての人へ」とあるが、老若男女、あらゆる立場の人にとって得るものの多い一冊である。

著者

北野 唯我(きたの ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。執行役員として事業開発を経験し、現在同社の最高戦略責任者。レントヘッドの代表取締役。著書に『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)。

本書の要点

  • 要点
    1
    人には「天才」「秀才」「凡人」の3種類がある。異なるタイプ間には「コミュニケーションの断絶」があり、天才は凡人に殺されることがある。
  • 要点
    2
    コミュニケーションの断絶を引き起こしているのは、3つのタイプによってそれぞれ異なる「軸」だ。
  • 要点
    3
    異なる軸を持つ人同士のコミュニケーションが成立するのは、異なる才能を併せ持つ「アンバサダー」と呼ばれる人たちのおかげだ。
  • 要点
    4
    凡人の中には、「共感の神」がいる。「共感の神」は人間関係の機微に敏感で、天才を心から理解し、サポートすることができる。
  • 要点
    5
    凡人にとって最強の武器は、「自らの言葉」だ。

要約

才能ってなんだろう

本書のあらすじ
ismagilov/gettyimages

本書の主人公は、35歳の青野。上納アンナ(以下、アンナ)の才能に惚れ込み、彼女が社長を務めるテクノロジーカンパニーで働いている。

あるとき週刊誌に、アンナのネガティブな面を強調したインタビュー記事が掲載されてしまう。社員たちからは「上納アンナは死んだ」という発言が聞かれるようになり、彼女の才能を信じ続ける青野は、社員たちから冷ややかな目で見られるようになっていた。

天才が今、殺されようとしている――だが青野には、どうすることもできない。その無力さに落胆しながら深夜の渋谷を歩いていると、ハチ公像が目に入った。犬のように愛される存在になれる秘訣があるなら、ぜひ教えてほしいものだ――思わずそう呟くと、なんとハチ公像が話しかけてきた。しかも「その願い、叶えてやるワン」と言うではないか。こうして、秋田弁混じりの関西弁を話すハチ公と青野の暮らしがはじまった。

本書は、青野がハチ公からアドバイスをもらいながら成長していくストーリーだ。

コミュニケーションの断絶

ハチ公によると、人には「天才」「秀才」「凡人」の3種類がある。

天才は、独創的思考にすぐれ、その人にしか思いつかないようなプロセスで物事を進められる人。秀才は、論理的思考が得意で、システムや数字、秩序に基づいて堅実に物事を進められる人。凡人は、感情やその場の空気を大切にしつつ、相手の反応を予測しながら動ける人だ。

青野は凡人タイプだが、心の底では天才に憧れを抱いている。ハチ公はその気持ちを理解しながらも、「天才は変革の途中で、凡人に殺されることさえある」という。

凡人にとって、成果を出す前の天才は、コミュニティの和を乱す存在に見えるのだ。そして天才をコミュニティから追い出そうとする。ここに天才と凡人の「コミュニケーションの断絶」が存在しているわけだ。こうして天才は、凡人に殺されてしまう。

多数決は「天才を殺すナイフ」
tomertu/gettyimages

コミュニケーションの断絶は、軸と評価の2つで起こる。軸は絶対的で、その人が「価値」を判断する前提となるものだ。一方、評価とは、軸に基づいて良し悪しを評価することだ。これは相対的であり、相手の考え方に共感できるか否かで決まる。

例えば、あなたはサッカーが好きで、友人は嫌いだとする。ここでコミュニケーションの断絶が起こったとしたら、それは「評価」が原因だ。評価は相対的なものだから、あなたが鹿島アントラーズの魅力を夜通しプレゼンし、それに友人が共感したら、評価は変わる。

一方で、「軸」は変化しない。だから「軸が異なること」によるコミュニケーションの断絶は、ほとんど平行線だ。

天才と秀才と凡人は、この「軸」が根本的に異なる。天才は「創造性」という軸で物事を評価する。秀才は「再現性」で、凡人は「共感性」による。3つのタイプによってそれぞれ異なる「軸」。これこそが、コミュニケーションの断絶を引き起こしている。

凡人は天才よりもはるかに多く存在する。だから凡人は、「多数決のナイフ」によって天才を殺し得る。AirbnbやUber、iMacなどの革新的なサービスが凡人によって叩き潰されそうになったのも、この「軸」の違いによるものだ。

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要約公開日 2019.05.14
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