コーポレート・ファイナンス

CFOを志す人のために
未読
コーポレート・ファイナンス
コーポレート・ファイナンス
CFOを志す人のために
著者
未読
コーポレート・ファイナンス
著者
出版社
中央経済社
出版日
2011年10月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、早稲田大学ビジネス・スクールのファイナンス系科目において講義を担当している著者が、その講義や演習に基礎的なストーリーを与える教科書として使うことを意識して書いた一冊である。研究者や専門家に対してではなく、単なる教科書の枠を超えて、金融あるいは財務の現場で理論と実務との交錯に悩む方々や、そうした方面での将来の活躍を望む学部在学中の方々に対して、ファイナンスの「考え方」を理解してもらうことを目的としている。

著者のこうした意思を背景に、本書では、所謂コーポレート・ファイナンスで使用されるDCF法、最適資本構成といった項目について、「なぜそのような考え方がなされるのか」「どう使えばいいのか」といった考え方の説明に主眼が置かれている。したがって、DCF法などの存在を知らない方が初めてその考え方を知る際にはもちろん、DCF法という言葉やその計算式について知っている方でも、「そもそもなぜDCF法という考え方が存在するのか」「どのような場面でDCF法を活用できるのか」という答えを得ることができる、小手先の知識習得に留まらない内容となっている。

副題には「CFOを志す人のために」と記されているが、こうしたファイナンスの考え方は全てのビジネスパーソンにとって有用と考える。内容も多岐に渡るため、本要約では全9章のうちDCF法及び最適資本構成に該当する箇所を中心に取り上げた。興味をお持ち頂いた方は、是非本書の他の箇所もお読みいただきたい。

著者

岩村 充
1950年東京生まれ。1974年4月、日本銀行入行。ニューヨーク駐在、金融研究所などを経て1998年1月より早稲田大学教授。
著書に『企業金融の理論と法』(東洋経済新報社)、「企業金融講義」(東洋経済新報社)、「新しい物価理論」(岩波書店・共著)、「貨幣の経済学」(集英社)、「貨幣進化論」(新潮社)などがある。
東京大学経済学部卒業。早稲田大学博士。

本書の要点

  • 要点
    1
    ファイナンスの世界において、リスクとは「不確実性の大きさ」である。
  • 要点
    2
    ファイナンスの前提として、投資家は「リスク回避者」であるとの想定がある。つまり、同じ収益性が得られる範囲では、できるだけ不確実性が少ない方法でその収益性が得られる投資機会を選択するとの想定である。
  • 要点
    3
    DCF法とは、予想される資金の出入りを金利で割り引いた現在価値を算出する手法である。DCF法の考え方は、「将来発生するキャッシュフロー(現金の入り)を、そのリスク(不確実性)に見合ったリスク・プレミアムを上乗せした金利で割り引く」というものである。

要約

金融とは何か

金融とは、現在の富と未来の富とを交換する取引
Zedcor Wholly Owned/PhotoObjects.net/Thinkstock

老後に備えた蓄え、という言葉があるが、現実の世界で老後の衣食の足しになるだけの財貨を蓄えておくのは容易ではない。そこで、契約を行い、老後に備えようと思えるほどの豊かさを享受できている「現在」に、持てる富のうちの幾分かを現在の富をもっと必要としている人に渡し、やがて老後の時期(「未来」)に返してもらうことを約束する。これが広義の「金融取引」である。

金融取引が普通の交換取引と違うのは、その開始から終了までの間に時間の流れがあることである。言い換えるならば、時間の流れのなかで取引を行うという点が金融という取引の本質とも言える。

金融取引において引き渡す現在の富と、契約により返してもらう未来の富との交換比率が「金利」であり、これはすなわち金融取引における「価格」であると言えよう。

現在と未来とを繋ぐという契約・取引の性質上、そこには不確実性(リスク)が存在し、そうした不確実性の下で取引を行うための対価が、「リスク・プレミアム」である。つまり、「リスク・プレミアム」とは、「金融契約時に支払われる不確実性への対価」である。

なお、モノではなくてカネで取引をする、要するに現在のカネを渡して未来のカネを受け取るという形で金融取引を行おうとすれば、モノとカネとの相対価格がどうなるかということにも金利は影響されるはずである。モノの世界とカネの世界との間で成立する価格のことを「物価」と言うが、そうした物価の変化、つまり物価上昇率に対する予想も金利を決める要素になる。

株式会社とその資金調達

株主有限責任の理由、株式と社債の違い

オランダ人が1602年に立ち上げたオランダ東インド会社が、組織設計上の新発明であり、株式会社の始まりとされている。この特色は、株主が「有限責任」であると明記されていたことである。これはつまり、株主たちは、会社の事業が成功したときはその利益を自分のものとするが、会社が債務を払い切れず倒産しても出資額が戻って来なくなるだけで、それ以上の財産上の責任を追及されないという制度である。

「有限責任」の逆は「無限責任」だ。すなわち、会社という仕掛けの中だけで債務を払い切れない時は、株主が会社に代わってその債務を支払うという仕組みである。ただ、この制度をとった場合、会社の株主が誰か(無限社員の資力)は会社にとって極めて重要となり、会社を清算することなく株主の持ち分を安定的に回収する(他の株主に譲渡する)ことは極めて難しくなってしまう。よって、会社を清算することなく長い期間に渡って会社を存続させるために、株主有限責任という制度は必要である。

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要約公開日 2014.05.22
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