HELLO, DESIGN

日本人とデザイン
未読
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HELLO, DESIGN
出版社
出版日
2019年03月05日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「デザイン思考」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「デザイン」も「思考」も馴染み深い言葉なので、なんとなく想像がつくかもしれない。「イノベーションを起こす思考法」として紹介されることが多いことから、クリエイティブな仕事をする人に必要なものだととらえている人も多いだろう。しかし、本書の著者によれば、「デザイン思考」は馴染みのある語感だからこそ誤解が生まれやすい言葉でもあり、イメージだけで「自分には関係のないもの」ととらえられやすいのだという。

著者は、「世界でもっともイノベーティブな企業」に選ばれたことのあるIDEOが日本に進出する際、立ち上げメンバーの一人となった石川俊祐氏である。ファーストキャリアから一貫してデザインに携わってきた著者によれば、デザイン思考は、もはやロジックだけでは正解を導き出せない現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンに必須の「思考メソッド」だという。「デザイン思考」を用いると、デザイナーではない人でも、トップデザイナーたちのように優れた、かつあたらしい答えを導き出すことができる。デザイン思考には、あらたな未来を描く力があるのだ。

本書には、デザイン思考を使ってイノベーションを起こすことに貢献してきた著者からの「日本人に本当のデザインを知ってほしい」というメッセージが込められている。令和のあたらしい時代に日本をよりよくしていきたいという気持ちが盛り上がるなか、デザイン思考は、日本人があらたな一歩を踏み出す手助けをしてくれるかもしれない。

ライター画像
池田明季哉

著者

石川 俊祐(いしかわ しゅんすけ)
1977年、茨城県生まれ。
ロンドン芸術大学Central St. Martins卒業後、Azumi studio,
Panasonic Design Company、PDD Innovation UKのCreative Leadを経て、IDEO Tokyoの立ち上げに従事。Design Directorとして数々のイノベーションプロジェクトに携わる。
2017年に日本を代表するデザインイベント「AnyTokyo」のファウンダーである田中雅人とともにAnyProjectsを設立。2018年よりBCG Digital VenturesにてHead of Design / Strategic Design Directorとして大企業の社内ベンチャー立ち上げに注力。
2019年3月よりAnyProjectsに新たに仲間を加え、5人のパートナーにて新たにスタート。
プロダクト、サービス、空間、メディア、ビジネスから教育や働き方のデザインまで、分野を超えて、未来の価値創出プロジェクトに携わる。
D&ADやグッドデザイン賞、山形エクセレントデザイン、いばらきデザインセレクションの審査委員を歴任、Rotary Club of Tokyo Daikanyamaメンバー、数々のセミナー、カンファレンスにてキーノートスピーカーや講師を務める。共著に『これからの僕らの働き方』がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    デザイン思考とは、人々の潜在的なニーズを発見してそれを解決するための方法を考え出す、あたらしい未来を描くための思考法だ。
  • 要点
    2
    デザイン思考は「デザインリサーチ(観察/インタビュー)」「シンセシス/問いの設定」「ブレスト&コンセプトづくり」「プロトタイピング&ストーリーテリング」の4つのプロセスで構成されている。
  • 要点
    3
    優れたデザインの宝庫である日本で育った日本人は、デザイン思考を身につけるポテンシャルを持っている。

要約

誤解されがちな「デザイン」

デザイン=課題の発見と解決
metamorworks/gettyimages

デザイン思考について理解を深め、実践するには、まずは誤解されがちな「デザイン」「デザイナー」について考えなければならない。

日本においてイメージされる「デザイン」は、名詞のdesignが意味する、色やかたちといったビジュアルだ。だがそれはデザインという言葉が持つ意味のごく一部でしかない。

一方で動詞のdesignには「設計する」「企てる」といった意味があり、「アイデアを考える」というニュアンスを持っている。すなわち新しいモノや体験、システムなどを作り出すことで、人が持っている課題を解決することこそがデザインである。

日常の小さな課題を発見し解決することもデザインにあたる。たとえば著者は5歳のとき、汗だくでやってきた郵便局員さんに氷水を差し出した。郵便局員さんを観察して「喉が渇いている」という課題を解決したという点で、著者の初めてのデザイン体験だったという。

未来をつくるデザイン

著者は、デザインの起源は「道具」だと思っている。道具の発明こそ、人が抱えていた問題を解決し、あたらしい未来をつくる行為だからだ。たとえば映画『2001年宇宙の旅』の冒頭では、一匹の猿が骨を「武器」として手にする印象的なシーンがある。猿は「骨」にあらたな価値を与えて「武器」という道具をデザインし、「いままでとは違う未来」を手にした「デザイナー」だといえるだろう。

人類は、様々な課題を解決するために多くの道具を発明してきた。いわば、誰かのデザインによって人類は前へと進んできたのだ。

近年では、スティーブ・ジョブズが優れた「デザイナー」の一人として挙げられる。彼は、自分がデザインするものやテクノロジーによって、人間の知性を拡大しようとしていた。彼がデザインしたiPhoneによって、2007年以前と現在の世界は大きく変わったのだ。

デザイン思考を身につける

デザイン思考のマインドセット
Sergey Tinyakov/gettyimages

多くの人を熱狂させる製品やサービスの多くは、誰かの「自分がほしい!」という主観から始まっている。ディズニーランドは、創業者であるウォルト・ディズニーの「大人の自分も、娘たちと一緒に楽しめる場所がほしい」という思いから生まれた。キンドルも、ジェフ・ベゾスの「本をもっと簡単に手に入れられる世の中にしたい」という気持ちからスタートした。いずれも経営者視点で「儲かること」を追求したわけではなく、消費者視点の「わがまま」がモチベーションとなっている。

誰もが簡単に同じ情報を手にいれられるようになった現代では、論理や客観で生み出されたものは飽和状態にある。だからこそ、自分の主観を大切にするマインドセットが必要なのだ。

日本の社会人は客観的であることを重視されることが多い。だが、車輪を前に進めるために、客観的であろうとするブレーキを外し、自分の創造性に対する自信(クリエイティブ・コンフィデンス)を育ててほしい。

クリエイティブ・コンフィデンスを育てるためには、自分の主観を信じることに加え、次の4つのマインドセットが役に立つ。

(1)曖昧な状況でも楽観的でいること:机に向かって知恵を絞るのではなく、どこかに潜んでいるヒントを探すつもりでワクワクしながら取り組む。

(2)旅行者/初心者の気分でいること:ヨソモノの目を持つことで、「当たり前」になっていた日常からアイデアの原石を見つけ出す。

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要約公開日 2019.05.23
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