「死」とは何か
イェール大学で23年連続の人気講義

未 読
「死」とは何か
ジャンル
著者
シェリー・ケーガン 柴田裕之(訳)
出版社
定価
1,998円
出版日
2018年10月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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「死」とは何か
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イェール大学で23年連続の人気講義
著者
シェリー・ケーガン 柴田裕之(訳)
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1,998円
出版日
2018年10月10日
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4.0
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レビュー

「メメント・モリ(死を思え)」という言葉がある。

歴史的にみると、キリスト教以前においては「どうせ明日死ぬかもしれないのだから、いまを楽しむべきだ」という意味だったのが、キリスト教以後では「現世ではなく来世にこそ思いを馳せよ」というニュアンスに変化したらしい。いずれにせよここから言えるのは、意思決定するうえで「死」が大きな役割を持っているということ、そしてわざわざ口に出して自戒しなければ、「死」という運命はしばしば忘れられてしまうということだ。

ただでさえ長寿化が進行し、自らの「寿命」が遠のいていっている時代である。このまま医療分野が発展していけば、日常で「死」を意識する機会はますます減っていくだろう。そうしたなかで「死の本質」を哲学的に語った本書が人気を博していることは注目に値する。宗教的な教えに頼らず、あくまで論理的思考を用いて「死」を捉えていこうとするとき、そこに何が立ち現れてくるのか。

本書は学部生向けの講義をまとめた入門書なので、読むうえで哲学に関する背景知識は大きく問われない。とはいえれっきとした哲学書なのは間違いなく、気軽な気持ちで読めるものでもないだろう。最初から最後まで読み通すのもいいが、「日本の読者のみなさまへ」まで読み終えたら、気になるトピックから読み始めるのもひとつの手だ。

「死」について考えるということは、「生」について考えるということでもある。「死」と向き合うことが、「生」をより充実させることを願ってやまない。

石渡 翔

著者

シェリー・ケーガン (Shelly Kegan)
イェール大学教授。道徳哲学、規範倫理学の専門家として知られ、着任以来二十数年間開講されている「死」をテーマにしたイェール大学での講義は、常に指折りの人気コースとなっている。本書は、その講義をまとめたものであり、すでに中国、台湾、韓国など世界各国で翻訳出版され、40万部を超えるベストセラーとなっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間はたしかに“驚くべき物体”だが、有形物という意味では機械と変わらない。肉体が死ねば、その人は消滅する。
  • 要点
    2
    死が悪いとされるもっとも大きな理由は、今後良いことの起きる可能性が「剥奪」されてしまうからだ。
  • 要点
    3
    不死は良いものではない。私たちが本当に求めているのは、自分が満足するまで生きることである。
  • 要点
    4
    妥当な理由があり、必要な情報も揃っていて、自分の意思で行動しているのならば、自殺という選択肢が正当になることもある。

要約

死について

魂は存在しない

死について考えるときに重要なのは、「二元論」と「物理主義」の見方を区別することだ。二元論者は人間を「身体と心の組み合わせだ」と主張する。二元論者にとって心とは魂そのもの、もしくは魂に収まるものだ。一方で物理主義者は、精神的活動としての心は否定しないものの、魂なるものは存在しないと考えている。この立場からすると、心はあくまで身体の持つ能力のひとつにすぎない。

著者は後者の立場に立つ。たしかに人間は“驚くべき物体”であり、他の物体にはない機能をいくつも持っている。だが「人(魂)は自分の身体の死後も存在し続ける」という主張は論拠を欠いている。私たちが有形物であることは間違いなく、そういう意味では機械と根本的には変わらない。ゆえに身体が死ねば、その人も消滅するのは必然ということになる。

自分は「身体」に宿っている
yurok/gettyimages

死について考えるのが厄介なのは、逆説的に「そもそも生き続けるとはどういうことなのか」という疑問にぶち当たるためである。私たちは過去・現在・未来の自分を同一の存在と見なすが、そもそもそれはなぜか。この問題に対する立場は大きく分けて3つある。(1)「魂説」、(2)「身体説」、(3)「人格説」だ。

二元論者は大抵の場合、「魂」をその根拠に見出している。これが(1)「魂説」である。「魂説」によれば、身体と魂は別のものだから、身体がどう変わったとしても(あるいは肉体が消滅したとしても)、魂さえ変わらなければ同一の存在と見なされる。

一方で物理主義者の多くは、(2)「身体説」を採用している。身体さえ一致していれば、それは同一の存在と見なすという考えだ。なおここでの「身体」は、原子レベルですべて同じということを意味しない。身体の構成要素は定期的に入れ替わるからだ。

「身体説」にはいくつかのバージョンがあり、著者のように「脳」が同じであれば、他の身体が変わっても同一の存在だと考える人もいる。いずれにせよこの説を採用した場合、身体(脳)の死はそのまますべての終わりを意味する。

興味深いのが(3)「人格説」だ。これは二元論者にも物理主義者にも受け入れられる余地がある。この考えに従うと、同じ信念や欲望、記憶などの集合である「人格」が同じであれば、同一の存在と見なされる。なお「身体説」と同じく、少しずつ構成要素が入れ替わることは問題視しない。基本的には同じ身体(脳)を持つ=同じ人格を持つという点で「身体説」に近いが、身体と人格を分離可能なものと捉えれば、「魂説」にも接近しうる。とはいえ現時点では別の身体に自分の人格を「アップロード」する技術はないので、この説もいまのところ「死」については身体説と同じ立場をとっている。

死は不思議な現象ではない
wildpixel/gettyimages

物理主義者にとって、人間とは正常に機能している身体にすぎない。考えたり感じたりできる身体を、本書では「P機能(人格機能)を果たしている」と表現する。この考えを受け入れる場合、人間はいつ死ぬことになるのかを考えてみたい。

一見すると答えは単純に思える。

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シェリー・ケーガン 柴田裕之(訳)
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リベラルアーツ
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シェリー・ケーガン 柴田裕之(訳)
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2018年10月10日
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