実験思考

世の中、すべては実験
未読
実験思考
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世の中、すべては実験
未読
実験思考
出版社
出版日
2019年05月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

目の前のアイテムが一瞬でキャッシュに変わる。これが本書の著者・光本勇介氏が打ち出した「CASH」というアプリのキャッチコピーだ。

初めて聞く人は、よく理解できないかもしれない。しかしこのキャッチコピーは、「CASH」のすべてを説明している。モノの写真を送るだけで、すぐに現金が手に入る――サービス内容を説明するのに、これ以上の言葉は不要であろう。

メルカリやヤフオクなどの隆盛によって、個人でモノを売ることは、今では全く珍しいことではない。ところがどんなサービスを使って取引するにしても、売ろうとしているモノが「どういうもので」「どんな状態なのか」という説明は必要だろう。それを省いたら、きっと後で問い合わせが来て、どのみち説明しなければならない。何も説明がないと、怪しく思われて避けられてしまう可能性もある。常識的に考えれば、こうしたロジックになるのではないか。

しかしCASHは、こうした常識を「実験」するために生まれたサービスであるという。説明不要で、モノを簡単に売ることができてしまうわけで、これはもしかしたら、「売る」という行為そのものの意味を変えてしまうのかもしれない。

またより正確に言えば、CASHは「実験だった」のかもしれない。なぜなら、すでにサービスとして成り立っているからだ。業種問わず、新しいサービスで世の中を動かしたいとお考えの人に、おすすめする一冊だ。

ライター画像
三浦健一郎

著者

光本 勇介(みつもと ゆうすけ)
株式会社バンク 代表取締役兼CEO
ストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社 創業者/取締役会長
ヘイ株式会社 取締役

2008年、株式会社ブラケット(現ストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社)設立。最短2分でオンラインストアを作れるサービス「STORES.JP」等を運営。2013年にZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイ(現株式会社ZOZO)にブラケットを売却。2016年9月、スタートトゥデイに対しMBOを実施、同年10月、ブラケット取締役会長に就任。2017年2月、株式会社バンク創業、同年6月に目の前のアイテムを瞬間的にキャッシュに変えられるアプリ「CASH」をリリース。同年10月、バンクを合同会社DMM.comへ売却。2018年6月にあと払い専用の旅行代理店アプリ「TRAVEL Now」をリリース。同年11月にDMM.comに対しMBOを実施し、現在に至る。

本書の要点

  • 要点
    1
    多くの人が興味を持っていることを「実験」すること。著者にとって、これがサービスを生み出す源泉だ。CASHもこの「実験」の賜物である。
  • 要点
    2
    サービスの発想は、「普通の人」であることから生まれる。
  • 要点
    3
    むやみに人に相談するのではなく、自分の感覚を大切にしよう。答えは他人の意見ではなく、世の中の反応にしかない。
  • 要点
    4
    「実験思考」を持てば、世の中の見え方が変わり、毎日が楽しくなっていく。

要約

【必読ポイント!】 「実験」から得られるもの

失敗も価値になる

著者にとってはどんなビジネスも「実験」である。著者は実験が大好きで、ずっと実験を続けていきたいくらいだという。

「これをやったらどうなるんだろう?」「たしかにそれ、おもしろそうだよね」と多くの人が思いつつ、実現されていないことはたくさんある。著者にとっての「実験」とは、そうしたことを実際にやってみることであり、それが新しいサービスを生みだす原動力となっている。

実験に成功すればお金持ちになれるかもしれない。だが著者個人としては、実験の成否はさほど重要ではない。それよりもただ「結果」が見たいのだ。失敗も無駄ではなく、ひとつの「検証結果」として「価値」になると考えている。

カーシェアリングサービスの失敗
dusanpetkovic/gettyimages

著者は高校生から大学生にかけて、さまざまなサービスで稼いでいた。たとえば原宿に通って人気ブランドのTシャツを購入し、1枚あたり2万円を上乗せして売っていた。地方在住の翻訳者をリスト化し、「立派な翻訳会社」のようなホームページを作って仕事を受注したこともあったし、留学経験者を集めて留学相談サービスを提供していたこともある。当時はちょうど起業ブームで、大学卒業後は起業するつもりだった。

考えが変わったきっかけは、ある上場企業の社長と出会ったことだった。その社長は、起業したら大企業とも取引することになるのだから、大企業に入社して仕事の進め方を学んだほうがいいと助言してくれたのだ。著者は納得し、外資系の広告代理店に入社してビジネスの仕組みを学んだ。

広告代理店で3~4年働いた後、カーシェアリングサービスで起業した。レンタカーではなく、個人の自家用車を借りられるサービスだ。本書執筆時から10年ほど前の話である。

これは結果として、ビジネスとしては早すぎた。SNSもろくにない当時にあって、非常識に過ぎたのだ。この経験から、ビジネスを起こす際には「市場選択」と「タイミング」が重要だということを身をもって学んだ。

初めての成功体験
Rattankun Thongbun/gettyimages

カーシェアリングサービスの後は、小さいサービスをいくつか低空飛行させながらなんとか食いつないでいた。起業家として初めての成功体験となったのは、STORES.JPという、簡単にネットショップを立ち上げることができるサービスだ。このサービスには、今までとはまるで違う反響があった。

この経験から、これからは「お金」をテーマにビジネスをするのが一番おもしろいのではないかという、後に続く気づきを得られた。STORES.JPで販売した商品の売上を翌日に現金化できるボタンを設置したら、手数料がかかるにもかかわらず、みんながこぞってこのボタンを押していたからだ。「世の中の人はこんなにすぐお金が欲しいんだ」と気づかされた。

メルカリがブレイクしたことも大きかった。メルカリの平均販売単価はたったの3000円から4000円。しかも「受け取り通知」や「振込申請」などの過程が必要で、お金を受け取るまでに時間がかかる。この流れを短縮し、すぐにお金を渡すような仕組みはできないか。そう考えて生まれたサービスが「CASH」だった。

性善説に基づいたCASH

CASHは、ユーザーがモノの写真を撮って登録するだけで、モノをお金に換えることができるサービスだ。瞬時に査定額が表示され、その金額がアプリにチャージされる。チャージされたお金は、銀行やコンビニで現金として受け取れるようになっている。ユーザーはその後、お金に換えたいモノをCASHに送る。

CASHでは、モノの品質を確認してからお金を支払うわけではない。だからモノの品質がいいという保証はないし、ニセモノである可能性もある。モノを約束通り送ってこない人すらいるかもしれない。

このサービスは、普通に考えれば破綻する。しかしそれは、ほとんどのビジネスが「すべての人を疑う」という前提によって成り立っているということだ。CASHは、この逆を行く。これは性善説に基づいた、「信用で成り立つビジネスモデル」の実験である。

もちろんリスクはある。

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要約公開日 2019.06.17
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