PIXAR ピクサー
世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

未 読
PIXAR ピクサー
ジャンル
著者
ローレンス・レビー 井口耕二(訳)
出版社
定価
1,998円
出版日
2019年03月19日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.5
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世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
著者
ローレンス・レビー 井口耕二(訳)
未 読
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ジャンル
出版社
定価
1,998円
出版日
2019年03月19日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.5
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レビュー

全米で絶賛を博したのも納得である。これは最高のビジネス・エンターテイメントだ。すばらしいクリエイティブを持つものの、事業で迷走していた「ピクサー」。本書はそれをスティーブ・ジョブズと二人三脚で立て直し、今をときめく世界一のアニメーションスタジオに仕立てあげた人物の回想録である。

クライマックスは、第1作目の『トイ・ストーリー』の公開と、ピクサーのIPO(新規株式公開)がシンクロする1995年の11月だろう。11月に向けて白熱していく社内外のやりとりが実にスリリングだ。最初はIPOに慎重だった著者ローレンスが、投資銀行の慇懃無礼な扱いに闘志を燃やし、公開に向けてのめり込んでいく様子は、読者をも巻き込まずにはいられない。

本書のもうひとつの魅力は、ローレンスとの会話を通して描かれる人間・ジョブズだ。ジョブズは自分以外にスポットライトが当たることを嫌う。だから彼と仕事をするなら、「縁の下の力持ちに徹するつもり」が必要だという。だが同時にジョブズは、人の話をきちんと聞ける人物であり、わからないことは素直に学ぶ謙虚さも持っている。ピクサーの困難な日々のなかで、彼が人間的に成熟していく姿は感動的ですらある。

その他のシーンだと、「クリエイティブをだれがコントロールするのか」についてのエピソードが最高だ。「クリエイティブとマネーのバランス」は永遠の課題だと気づかせてくれる。ここはじっくり各自のビジネスに引き寄せながら読んでいただきたい。

しいたに

著者

ローレンス・レビー (Lawrence Levy)
ロンドン生まれ。インディアナ大学卒、ハーバード・ロースクール修了。
シリコンバレーの弁護士から会社経営に転じたあと、1994年、スティーブ・ジョブズ自身から声をかけられ、ピクサー・アニメーション・スタジオの最高財務責任者兼社長室メンバーに転進。ピクサーでは事業戦略の策定とIPOの実現を担当し、赤字のグラフィックス会社だったピクサーを数十億ドル規模のエンターテイメントスタジオへと変身させた。のちにピクサーの取締役にも就任している。
その後、会社員生活に終止符を打ち、東洋哲学と瞑想を学ぶとともに、それが現代社会とどう関係するのかを追求する生活に入った。いまは、このテーマについて文章を書いたり教えたりしている。また、そのために、ジュニパー基金(www.juniperpath.org)を立ちあげ、創設者のひとりとして積極的に活動を展開している。
カリフォルニア州パロアルト在住。いまは妻のヒラリーとふたり暮らしである。

本書の要点

  • 要点
    1
    ジョブズに請われて着任した著者ローレンスの前に姿を現わしたのは、累積赤字5000万ドル、利益なし、成長なし、ディズニーに首根っこを押さえられているというピクサーの現実であった。
  • 要点
    2
    起死回生の『トイ・ストーリー』の大ヒットと、綱渡りにつぐ綱渡りの末のNASDAQ上場で、なんとかピクサーは企業再生の道筋をつかむ。
  • 要点
    3
    その後のヒット作の連続で、ピクサーはついにディズニーアニメーションとの一体化を果たす。ジョブズはアップルで復活し、ピクサーを手放したローレンスは新しい旅に出る。

要約

ピクサーとの出会い

ジョブズからの誘い
awiekupo/gettyimages

著者ローレンスがスティーブ・ジョブズから声を掛けられたのは1994年末のこと。「ピクサー」で業務を回し、戦略を練り、株式公開まで持っていってくれる人がほしいとのことだった。

ピクサーは「ルーカスフィルム」からジョブズが購入した会社で、ちょうど1年後の『トイ・ストーリー』の公開に向けて制作に集中しているところだった。この映画が完成すれば、世界で初のコンピューターグラフィックスでつくった長編アニメーション映画になるという。

ところがジョブズは、ピクサーのクリエイティビティに惚れ込んではいたものの、「ネクストコンピューター」事業に時間を取られていたため、ピクサーの事業を深く理解することも、ビジョンを描くこともできないでいた。その結果、ピクサーは5000万ドル(約60億円)もの累積赤字を抱えながら、ただただディズニーとの契約を頼りに制作を続けていたのである。

当時のローレンスは、シリコンバレーの株式公開企業でCFO(最高財務責任者)を務めていた。誰もがうらやむ地位である。そのためピクサーを見学したあと、引き受けるかどうかを決めかねていた。しかし最終的にピクサーの「事業にならないけれど、魔法のような才能」に魅せられて、入社を決意する。

長編アニメーションに集中する

1995年2月、ローレンスはピクサーのCFOに着任した。CEOのジョブズ、CFOのローレンス、そしてピクサーの共同創業者であり最高技術責任者を務めるエド・キャットムル、以上3名の経営チームである。だが実質の経営は、ローレンスに委ねられた格好だ。

市場性と成長性を精査したローレンスは、他の事業からは手を引き、長編アニメーションに集中すべきだと考えた。とはいえこの時点では頭を抱えていた。「利益を上げられる事業など、どこをどう探しても出てこない。私は、お先真っ暗だと進言するために雇われたわけではない、ジョブズが欲しいのは前向きな回答だ、だがそれが見つからない」。というのも、長編アニメーションも大きな問題を抱えていたからである。それはディズニーとの契約だった。

ディズニーとの契約

ディズニーとの契約では映画の制作を3本請け負い、3本目が公開されたのちに終了する取り決めになっていた。制作に必要な時間を考えると、拘束は今後9年以上に及ぶことは確実である。

制作費用は、定められた上限までであればすべてディズニーが負担する。そのうえで、映画の収益から一定の割合がピクサーに支払われる。だがディズニー側の費用や手数料を差し引くと、最終的にピクサーの懐に入ってくるのは収益の10%にも満たない。分け前が小さすぎる。

しかもクリエイティブ上の判断は、ディズニーのそれが優先される。ディズニー以外の仕事をピクサーがすることもできない。これではとても会社として独り立ちできない。累積赤字5000万ドル、利益なし、成長なし、ディズニーに首根っこを押さえられている。上場などありえないという有様だった。

事業計画
SARINYAPINNGAM/gettyimages

それでも事業計画を立てなくてはならない。実現の可能性がどれほど小さくても、ロードマップは必要だ。考えたのは次の4つである。

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