コーポレートファイナンス 戦略と実践

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コーポレートファイナンス 戦略と実践
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2019年04月03日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

会社の数字の読み方をひと通り勉強していても、日常の業務で使う機会がないと、その勘所を忘れかけてしまう。外国語の習得と同様に、一般のビジネスパーソンにとっては悩ましいものではないだろうか。その1つの要因として、ファイナンスに必要な会計知識やファイナンス理論が実務とどう関連するのかが、明示されていない点があげられる。

その点、本書は経営戦略におけるコーポレートファイナンスの位置づけを明示し、ファイナンスの知識をどう使えば仕事が楽しくなるのか(儲けられるのか、出世できるのか)という視点を提供してくれる。読めば読むほど、知識と実務がつながっていく爽快感を得られるのだ。

本書は大きく3つのパートから成る。最初のパートはコーポレートファイナンスの理解に必要な会計の基本をおさらいする。2つ目のパートは、事業価値や理論株価を求めるバリュエーション(評価)手法について。投資銀行で使われているDCF法の解説は非常に実践的だ。そして、3つ目のパートでは、算出された事業価値に基づいて、どのようにM&Aなどの経営判断を行い、マーケットや株主と向き合うかについて考察を深めていく。いずれも豊富なケースを交えた、ライブ感たっぷりの解説となっている。

本要約では、スペースの都合もあり、主として「会計をファイナンスに生かすためのキャラクター分析」「ソフトバンクグループの資金調達」の項目を取り上げている。知識自体はご存じの方も多いと思うが、類書と異なりめっぽう面白い内容のためご期待いただきたい。

ライター画像
しいたに

著者

田中 慎一(たなか しんいち)
株式会社インテグリティ代表取締役/財務戦略アドバイザー/NewsPicksプロピッカー
慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人太田昭和センチュリー(現あずさ監査法人)、大和証券SMBC、UBS証券等を経て独立。監査法人、証券会社を通じて会計監査、IPO支援、デューデリジェンス、M&A・事業再生・資金調達に関するアドバイザリーサービスに従事。独立後は、アドバイザリーサービスだけでなく、買収後の企業変革を推進するコンサルティングのほか、自らターンアラウンドマネージャーとして買収先企業の再建に取り組む。著書に『役員になれる人の「日経新聞」読み方の流儀』、共著に『あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座』『M&A時代 企業価値のホントの考え方』『投資事業組合とは何か』などがある。

保田 隆明(ほうだ たかあき)
神戸大学大学院経営学研究科 准教授
リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にて投資銀行業務に従事後、2004年に起業しSNSサイトを開設。同事業売却後、ベンチャーキャピタル、金融庁金融研究センター専門研究員、小樽商科大学准教授、昭和女子大学准教授を経て2015年より現職。
主な論文に「株式所有構造と企業統治」「わが国の新規株式公開企業の質の変遷(日本ベンチャー学会賞)」、主な著書に『実況LIVE企業ファイナンス入門講座』『図解 株式市場とM&A』など。小林産業、マイネット(共に東証1部上場)の社外取締役も務める。博士(商学)早稲田大学。

本書の要点

  • 要点
    1
    ファイナンスの役割は、資金の調達と投資を通じて企業価値の向上を実現することである。財務諸表のキャッシュフローやROAなど、会計の知識を活用することで、企業の強みと弱みが如実に見えてくる。
  • 要点
    2
    企業のキャラクター分析は、DCF法によるバリュエーションを行ううえで重要となる。
  • 要点
    3
    企業のキャラクターは「収益性」「生産性」「安全性」「成長性」の4つの要素に集約されるが、相対的に重要なのは収益性と生産性である。

要約

コーポレートファイナンス

経営戦略におけるファイナンスの位置づけ

企業の経営戦略には、マーケティング、生産、人材開発、R&Dなどがある。ファイナンス(財務戦略)はそのなかの1つで、資金の調達と投資を通じて企業価値の向上を担う。マネジメントの対象は「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」の財務3表であるため、この3表の構造を知ることがファイナンス戦略の第一歩となる。

それに対して、ファイナンス以外の戦略は、収益(売上)・費用・利益さえ押さえておけばなんとかなる。そのため、これまでは、一般の社員にはファイナンスは少し遠い世界のことだった。しかし、昨今は、M&A(買収、合併、売却)やベンチャーへの投資といった案件が日常的になってきている。メーカーなどの事業会社でも、ファイナンスは経営を担う人材に不可欠の知識といえる。

【必読ポイント!】 キャラクター分析

現状を知る
NicoElNino/gettyimages

ファイナンスの世界では、企業の実力を「企業価値」という言葉で定義する。企業価値は、将来獲得するキャッシュフローの大きさによって決まる。この将来のキャッシュフローを求める作業を「バリュエーション」という。

バリュエーションは、企業の事業計画に基づいて、将来生み出すであろうキャッシュフローと理論的な株価をはじきだす。企業の本質的な価値は、その将来にかかっているという考え方である。

将来を予測するには、まずは正確な現状分析が必要だ。そのために効果的なアプローチが「企業のキャラクター分析」である。人間一人ひとりにキャラクター(個性)があるように、どの企業にも、どこにどんな強みや弱みがあるかというキャラクターがある。そのキャラクターこそが、その企業の将来を形づくっていく。

収益性と生産性

企業のキャラクターは、「収益性」「生産性」「安全性」「成長性」の4つの要素に集約される。相対的に重要なのは収益性と生産性である。この2つが優れていれば、安全性や成長性は必然的に強くなるからだ。

そうした観点から、諸々の財務指標のなかで最初に見るべきものが、「総資産利益率」(ROA:Return On Assets)である。ROAは、企業が投下したすべての資産を使って、どれだけのリターン(利益)を得たかを示す指標だ。「ROA=営業利益/総資産」という式で求められる。この式の右辺は「営業利益/売上高×売上高/総資産」と分解することができる。

「営業利益/売上高」は「営業利益率」、つまり「顧客から獲得した売上高のうち、どれだけの儲け(付加価値=利益)を残すのか」を示す指標で、収益性を表している。

一方、「売上高/総資産」は「総資産回転率」、つまり「企業が本業の事業に投下した総資産を使って、どれだけの成果(売上高)を獲得したのか」を示す指標で、生産性を表している。

キャッシュを生み出す力、ROA
Deagreez/gettyimages

ROAは、収益性と生産性のかけ合わせであり、企業価値のもととなるキャッシュを生み出す力を端的に表す指標だ。

日本の上場企業のROAの平均値は5%である。さらに、売上高営業利益率は6%、総資産回転率は0.8回である(2018年3月期)。そこで、ROA5% ≒ 営業利益率6% × 総資産回転率0.8回という式を頭に入れておく。

そうすれば、得意先や買収対象先の財務内容を調べる際、この平均よりも数字が上か下かで、普通より「良い会社」か「悪い会社」かを判断できる。本書の巻末には、さらに業種別の平均がリスト化されているのでぜひ参照してほしい。

分析の作法

キャラクターの分析には基本的な作法がある。それが「並べる」と「比べる」である。分析の対象となる企業の営業利益率や総資産回転率を時系列に並べることによって、その企業の勢いや傾向を感覚的に把握する。これが「並べる」である。

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要約公開日 2019.06.11
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