シェアライフ

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ジャンル
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2019年03月01日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書は、「シェア(共有)」という概念によって、社会がどう変わるのかを考え、シェアによって生まれる新しい生き方を提案するものだ。一読すれば、シェアリングエコノミー(共感型経済)とは何か、今なぜシェアが注目されているのか、その本質に触れられる。

シェアとは「分かち合うこと」だという。私的所有や経済的な利益を追求する資本主義社会が限界を迎え、豊かさの物差しが揺らぐ現在。「個人と個人が共感や信頼を物差しとして、あらゆるものをシェアしながら“つながり”を前提に生きていく」。これが、本書の提唱するシェアライフである。

著者は「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」という公的な役職を担いながら、全国の自治体や地域団体に向けて、シェアリングエコノミー政策を事業に取り入れるアドバイスをしている。世界各国を視察し、海外での先進的な取り組みにも詳しい。

本書でもシェアリングエコノミーによるビジネストレンドや新サービスが紹介されている。だが、本書の眼目はそこではない。一番のメッセージは、シェアという「思想」そのものだ。

著者は、幼い頃から父親が経営するシェアハウスで育ち、現在は東京・渋谷にある「“ともに暮らし、ともに働く”意識でつながる家族」というコンセプトのシェアハウス「Cift(シフト)」で暮らしている。そんな彼女は、まさにシェア時代の申し子のような存在だ。シェアが生み出す最大の価値は「つながり」。その恩恵を存分に受けて生きてきた著者の言葉には、大いに説得力がある。

ライター画像
小島和子

著者

石山 アンジュ(いしやま あんじゅ)
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長。
1989年生まれ。都内シェアハウス在住、実家もシェアハウスを経営。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒で(株)リクルート入社、その後(株)クラウドワークス経営企画室を経て現職。「シェアガール」の肩書でシェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。
2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほかNewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMCを務めるなど、幅広く活動。

本書の要点

  • 要点
    1
    貨幣にだけ価値が置かれる現代、人とのつながりが希薄化し、「豊かさ」の概念も変わってきた。これからの時代は、シェアから生まれる「つながり」こそが幸福の源泉だ。
  • 要点
    2
    シェアによって、1つの職場にとらわれない働き方が実現でき、全国に「我が家」を持つことができる。社会全体で子どもを育てるという発想になれば、家族のあり方さえ変わる。
  • 要点
    3
    社会課題もシェアで解決できる。その際に欠かせないのは、意識して「信頼」を育むことである。本格的なシェアの実現には壁もあるが、一人ひとりのアクションで乗り越えられるはずだ。

要約

新しい時代の新しい価値観

人間が人間らしく生きられる経済
Blankstock/gettyimages

私たちが生きている資本主義社会は、既に限界を迎えている。大量生産・大量消費を繰り返しながら成長を遂げる経済モデルが、まわらなくなってしまった。欲望を追求してきた結果、社会には大きな格差と分断が生まれている。さらには、さまざまな環境問題が起こり、地球崩壊のリスクも直視せざるを得ない状況だ。最も大きな問題は、こうした経済活動の中で、「人間らしさ」や「人とのつながり」が失われてしまったことである。

私たちは、モノを買うとき、お金(貨幣)だけに交換価値があると考える。そのため、貨幣を得ることが人生の目的かのように錯覚しがちだ。だが、貨幣経済がインフラになる前には、物々交換が当たり前だった。「お互いさま」「おすそ分け」の精神による「贈与の経済」もあった。そうした時代のほうが、モノを介して人とのつながりを感じ、人間らしい活動ができていたのではないか。

現在の貨幣経済がつながりを希薄にし、孤独をもたらす原因ともなっている。今や年間3万人もの人が孤独死する時代だ。そんな状況下で、シェアリングエコノミーは、資本主義が招いたこうした問題の解決に役立つ。さらには、人間が人間らしく生きることができる、持続可能な社会のインフラとなる。

「私」から「私たち」へ

近年、個人と個人がインターネット上で直接つながり、企業を介さずに、情報やモノをやり取りできるようになった。「組織」から「個人」へのパワーシフトが起きている中、「豊かさ」の概念そのものにも、パラダイムシフトが起こっている。「豊かな人」のロールモデルが、「内面的にも満足し、他者とのつながりをもって信頼を得ている人」になりつつある。物質的な充足は個人で満たせても、心の充足は他者との関係性からしか生まれない。「私」ではなく「私たち」という価値観こそ、シェアという思想の最も核となる部分だ。

シェアの原風景は、かつての「長屋文化」にある。お隣さんとお醤油を貸し借りし合う暮らしのベースには、個人と個人のつながり、つまり信頼関係があった。近年になってシェアが注目されている背景には、そうしたやり取りが、テクノロジーの発展によって容易になったことがある。

その延長線上で誕生したのが、「CtoC」というシェアリングエコノミーのモデルだ。個人が使っていないモノやスペースなど、あらゆるものが商品になり、私たち個人がサービスを提供できるようになった。こうして、宿泊場所を提供したいホストと宿泊したい人を結ぶ「Airbnb」のようなシェアプラットフォームも、一気に広まってきた。

シェアの本質は「つながり」
monkeybusinessimages/gettyimages

シェアから生まれる最大の価値は「つながり」だ。現在は、個人の資産とされてきたお金や社会的ステータスと同じように、「つながり資本」が価値をもっている。アメリカの政治学者ロバート・パットナムは、信頼や「お互いさま」といった互酬性の規範、人や組織間のネットワークを「ソーシャルキャピタル」と呼ぶ。そしてこれは、個人にも社会にも利益をもたらすという。

つながりが人の幸福や安心に直結するという事実は、すでにさまざまな調査・研究からも明らかだ。アメリカのある研究では、つながりの関係が少ない人は多い人に比べ、死亡率が2倍になることがわかっている。一方、内閣府の調査では、この30年で一人あたりのGDPは2倍近くに伸びたにもかかわらず、生活の満足度は上がっていないという結果が出ている。

シェアの時代には、飛び抜けてコミュニケーションが上手な人ばかりでなく、誰でも今以上の「つながり」がもてるようになる。たとえば、海外旅行の際にAirbnbを利用したとする。ホストと一緒にビールを飲んでSNSでつながり、次にその国に行くときにはもう友だちのような関係になっている、ということも珍しくない。このように、つながりをつくるきっかけとして、シェアリングエコノミーが果たす役割は大きい。

新しい生き方

会社で働く「制約」から自由になる

シェアによって、私たちの生き方はどう変わるのか。まずは、「働く」という概念そのものが変化する。たとえば、仕事をしたい人と依頼したい人をマッチングする「クラウドワークス」といったスキルシェアサービスが登場した。これにより、「会社に勤める」という形にとらわれる必要がなくなってきた。個人で稼ぐハードルが下がれば、子育て中の専業主婦や高齢者、障害者など、何かしら制約をもっている人も働きやすくなる。

著者自身、もともとはごく一般的な会社員で、会社と自宅を往復するだけだった。だが今は、法人組織の社員でありながら、同時に個人事業主として政府や複数のクライアントとつきあい、シェアサービスを通じて収入を得ている。さらには、自分で起業した組織の代表も務めている。働く拠点も日々変わり、Ciftのワーキングスペースをはじめ、複数の場所を行き来しているのが現状だ。

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要約公開日 2019.06.18
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