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本書の要点

  • 渋沢栄一は『論語』を人生のバイブルとし、社会のため、人のために生きた。

  • 真の成功とは、社会に利益をもたらすことをして金を得ることだ。

  • 論語(道徳)と算盤(商売)は相対するものではなく、両立すべきものである。

  • 結果だけを見て成功か失敗かを判断してはいけない。莫大な富を得ても、道理に適わない方法をとったなら、それは成功と呼べない。

  • 至誠を忘れなければ、どんなに無口で交際下手な人でも、必ず気持ちは通じる。

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【必読ポイント!】論語

社会に貢献して生きる

Torsakarin/gettyimages

人としてこの世に生を受けたなら、生きていく目的を持たなければならない。その目的次第で人生観も変わってくるはずだ。

人生観は大まかに客観と主観の2つに分けられる。客観とは、まずは社会を第一とし、自己の存在を第二とする人生観である。対して主観は、何事も自分本位で、自己のためには社会をある程度犠牲にしてもよいという考え方だ。

客観的な人生とは、自身の技量を活かして社会に貢献する生き方である。それも漠然と思うだけでなく、何かしら行動で示さねばならない。学者なら学者として本分を尽くし、軍人ならその任務を果たすというように、各自の能力を最大限に使って社会のために尽くすのだ。

一方、主観的な者は、自分や自己の利益のことしか考えない。このような者たちの考えも理解できないではないが、そのスタンスにこだわりつづけるようであれば、国や社会は荒れ果て衰退していくことだろう。

孔子の教えに「仁者は己立たんと欲してまず人を立て、己達せんと欲してはまず人を達す」というものがある。自分を立てたいならまず他人を立てよという教えだ。人生とは、このようにあるべきだと思う。

また孔子は、「克己復礼」とも説いている。自己のわがままな心に打ち勝って、礼に従っていけば間違いないという意味である。これも先の客観的人生観に合致している。

私(著者)は論語をバイブルとし、自分は社会のため、人のために存在しているのだという思いで生きてきた。この心は今後も変わることはないだろう。

利益を独り占めしない

私は実業家であるが、大金持ちになることは悪いことだと考えている。一見矛盾しているようだが、常に「淡白」を信条として生きているので、富に対する考えもそのようなものだ。

少しでも多く貯金したい、金持ちになりたいという欲を持つことは普通のことである。だが、これにはキリがない。10万の次は100万、そして千万、一億と増えていく。このことから、もし一国の財産を一人が所有したらどのような惨事になるか想像できるだろう。ゆえに、自分は大富豪になりたいとは思わないし、人にも勧めない。

人間に生まれたなら、意味のある人生を送るほうが良い。ではその意味とは何か。もし実業家として生きるなら、自身の学術知識を利用して楽しく働くことが、価値のある人生と言えるだろう。つまり、財産をたくさん持つことなく、仕事は愉快にやるということだ。それゆえ私は、独力経営の利殖法を避け、複数の合資協力で成る株式会社や合資会社を立ち上げてきた。利益を独り占めせず、皆でその恩恵に預かるためだ。

人は大金を持たずとも、相応の知恵と愉快な働きをなし得るだけの資産があれば、他人の財産を運用できる。このようにすれば、国家社会に利益をもたらす仕事はいくらでもできる。手段を選ばず道理に適わないやり方で儲けても、それは成功とは呼ばない。社会に利益をもたらすことをして金を得ることこそが、真の成功なのである。

論語と算盤は一致すべきもの

marchmeena29/gettyimages

私の持っている画帖の中に、論語と算盤を描いたものがある。論語は道徳上の経典であり、算盤はそれと対極にある貨殖の道の道具である。両者はいかにも対照的であり、この絵は風刺画だと思う人もいるかもしれない。しかし私は、論語と算盤は相一致すべきであると考える。

論語とは、孔子の言行録である。孔子は諸子に教えを説く際、その人物の性格に合わせた教え方をしていたという。後に誤解が生じ、「論語読みの論語知らず」という言葉すら生まれたのはこのためだ。

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要約公開日 2019.06.29
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