老人喰い
高齢者を狙う詐欺の正体

未 読
老人喰い
ジャンル
著者
鈴木大介
出版社
定価
800円 (税抜)
出版日
2015年07月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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老人喰い
老人喰い
高齢者を狙う詐欺の正体
著者
鈴木大介
未 読
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ジャンル
出版社
定価
800円 (税抜)
出版日
2015年07月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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レビュー

本書は、テレビドラマ『スカム』(2019年6月末より放送。MBS/TBS)の原案にもなっている話題書である。タイトルどおり、現代日本では「老人が喰いものにされている」といえる。詐欺犯罪や悪質商法の被害者の多くが、高齢者なのだ。「加害者は血も涙もないやつらなんだな」「弱者につけこむなんて卑怯だ」と、そんなふうに思うだろうか。その認識をがらりと覆すのが、本書である。

著者は、特殊詐欺犯罪の代表格である「オレオレ詐欺」に手を染める何人もの若者たちと接触し、肉声を拾ってきた。彼らの理屈は、大まかにまとめるとこうなる。「平均して3000万円もの資産を残して死ぬ老人たちは、なぜ金を使わないのか。自分たち若者は、真面目に働いても貧しい。彼らが金を使えば、若い世代にも金が回ってくるのに。そんなケチな老人たちから数百万円奪うのに、罪悪感は感じない」

もちろん詐欺は犯罪である。が、どうだろう。部分的に正論を含むこの理屈を知ると、罪を犯す若者ばかりを責めきれない気持ちがわいてくる。

本書の優れた点のひとつは、詳細なレポートを提示するのみならず、取材した実在の人物をモデルにして、犯人組織のありさま、詐欺店舗の運営や研修のようすを物語仕立てで描いているところだ。そのため、まるで自分もその場にいるかのように明瞭に理解することができる。要約では、詐欺店舗の店長の「毒川(どくがわ)」という男を中心に物語の主だったところを再構成し、適宜挿入した。

著者は本書で「老人喰いはなくならない」と何度も強調する。そのわけは、ぜひ本書を開いて確かめてみてほしい。

熊倉 沙希子

著者

鈴木 大介(すずき だいすけ)
1973年千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心とした取材活動を続けるルポライター。著書に『家のない少女たち』『援デリの少女たち』『振り込め犯罪結社』(いずれも宝島社)、『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)、『家のない少年たち』(太田出版)、『最貧困女子』(幻冬舎新書)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    詐欺の店舗兼事務所は、徹底的に統制され、そのやり方はテンプレート化されている。加えて、高齢者詐欺に使うための名簿には様々な情報が記載されており、「騙す側」の手口は非常に洗練されている。
  • 要点
    2
    詐欺組織は、末端の「集金役」が逮捕されても、資本金を供出する「金主」たちに警察の手が及ぶことがないという組織構造になっている。
  • 要点
    3
    現場プレイヤーたちはとびぬけた優秀さと高いモチベーションをもって働いている。彼らは研修によって選別され、そのように育て上げられている。

要約

老人を喰らう手口

会社員風の若者たち
taa22/gettyimages

少し寂れた駅前の道を、地味なスーツ姿の若者たちが無言で歩いている。堅実な会社員風の見た目だが、眼光は鋭い。

オフィスビルに入った彼らは、エレベーターで3階に上る。彼らのうちひとりがボタンを押すのだが、ふつうのやり方でなく、握り拳の中指第二関節でコツンと叩くようにする。

シンプルなつくりの事務所に全員がそろうと、職場の代表者らしき、30代くらいに見える男が大声を張り上げて挨拶をした。彼の名は毒川という。まもなく、持ち物検査が始まった。ほとんどの者は現金と携帯1本しか持っていない。「違反者」がいないことを確認したのち、彼らは全員で始業前の「御法度九カ条」の唱和をした。

じつはこの事務所は、「特殊詐欺犯罪」の中で最もスタンダードな「オレオレ詐欺」の箱(店舗兼事務所)である。詐欺の現場は、「警察の摘発を受けない」ために徹底的に統制されている。プレイヤーは横のつながりを持つことを禁じられ、髪色やその長さ、腕時計のグレードまで細かいドレスコードで定められている。エレベーターでの「コツン」は指紋を残さないようにするためだ。身元の特定につながるような物は事務所に持ち込んではいけない。さらに、内偵捜査に結びつきやすい酒や薬などは避ける習慣をつけるべく、「御法度九カ条」として唱和する。

このような管理術は、一流の詐欺組織では「テンプレート化」している。オレオレ詐欺の被害が激増したのは2003年だが、その後ほんの3~4年の段階で、こうしたテンプレートはできあがっていたという。

高齢者詐欺の驚くべき進歩
Kuntalee Rangnoi/gettyimages

詐欺組織の進化とともに、現場店舗にターゲット情報を提供する名簿屋も急激に進歩を遂げた。詐欺の世界に参入してきたのは、悪質訪問販売業者などの既存購買者(被害者)を名簿化して犯罪を支援してきた業者だ。一度「やられ名簿」と呼ばれる被害者名簿に載ってしまえば、連日のように高額商品や先物取り引きのお勧めが押しかける。

最初はこの「やられ名簿」が詐欺組織でも使われていたが、さらに「騙しやすく」「金を持った高齢者だけ」になるよう磨きをかけた名簿が出回るようになった。名簿屋が、名簿に記載された高齢者に対して直接連絡を取り、情報を付加した名簿だ。

「騙り調査」という手段がある。公的機関名を「騙り」、安全確認や社会的な調査のためにと言って高齢者に電話をかけるのだ。「不安はありませんか」という体で、現金の持ち合わせや独居かどうか、判断力の低下や認知症のリスクを感じることはあるか、などを聞く。駄目押しに、別れて暮らす子供や親族などの詳細な情報を聞いておけば、詐欺で電話をかけたときのシナリオのリアリティを増すことになる。

情報強化された名簿があれば、プレイヤーの言うところでは「詐欺と疑われていても金は取れる」。ある種の被害者は、子供や親族への詐欺組織による報復を恐れ、詐欺とわかっていても金を差し出してしまうのだ。熟練のプレイヤーは、ターゲットが暴力への不安に屈服する相手だと判断した場合、

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政治・経済 トレンド
著者
鈴木大介
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2015年07月20日
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