「アンコンシャス・バイアス」マネジメント

最高のリーダーは自分を信じない
未読
「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
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最高のリーダーは自分を信じない
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「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
出版社
かんき出版

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出版日
2019年05月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「彼は育児休暇を取得したので昇進意欲はあまりないだろう」「彼女には2歳の子どもがいるので、泊まりがけの出張は無理だろう」。メンバーに対して、こうした勝手な思い込みを抱いたことはないだろうか。このような「無意識の思い込み・偏ったものの見方」のことを、アンコンシャス・バイアスという。

グーグルが、「アンコンシャス・バイアス」と名づけた社員教育活動を始めたことを機に、このキーワードが注目を集めるようになった。その背景には、組織が発展していくには多様性が重要だという認識が浸透してきたことがある。画一的な見方に基づいたマネジメントでは、一人ひとりがイキイキと活躍することは難しい。さまざまなものの見方や多様な価値観を受け入れることで、新たな発想が生まれていく。そのための第一歩が、アンコンシャス・バイアスの存在に気づき、対処することなのだ。

著者は、リクルート、三井住友銀行、日立製作所など、5万人以上のリーダー層を中心にアンコンシャス・バイアス研修を行ってきた。その実績・経験をもとに、リーダーが身につけておきたい知識を凝縮させたのが本書だ。アンコンシャス・バイアスに気づき、対処する方法とは? バイアスに振り回されないチームづくりの秘訣は何か? こうした疑問に、著者は「よくある事例」を交えて、わかりやすく解説してくれている。

アンコンシャス・バイアスに気づけているかどうかで、自身の成長もチームの成長も大きく変わってくる。これからのリーダーの必読書として本書をおすすめしたい。

ライター画像
木下隆志

著者

守屋 智敬(もりや ともたか)
(一社)アンコンシャスバイアス研究所 代表理事
(株)モリヤコンサルティング 代表取締役
1970年大阪府生まれ。神戸大学大学院修士課程修了後、都市計画事務所を経て、1999年人材系コンサルティング会社の立ち上げ期に参画。ビジョン策定や組織開発プログラムを通した数多くのリーダーシップ研修を提供。
2015年株式会社モリヤコンサルティングを設立。管理職や経営層を中心に2万人以上のリーダー育成に携わる。2018年ひとりひとりがイキイキする社会を目指し、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所を設立、代表理事に就任。アンコンシャス・バイアス研修の受講者はこれまでに5万人を超える。
著書に『シンプルだけれど重要なリーダーの仕事』(小社刊)、『導く力』(KADOKAWA刊)、『あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思いこみのせいです』(大和書房刊)がある。

〈公式ホームページ〉
https://www.moriyatomotaka.com/
https://www.unconsciousbias-lab.org/

本書の要点

  • 要点
    1
    「無意識の思い込み」であるアンコンシャス・バイアスの正体は自己防衛心だ。リーダーがその存在に気づき、対処することで、チーム内のコミュニケーションが大きく変わる。
  • 要点
    2
    アンコンシャス・バイアスに対処するには、「相手の非言語メッセージ」に目を向けるなどして、自己認知力を高めることが大切である。
  • 要点
    3
    無意識の思い込みや偏見に振り回わされないチームを築くには、リーダーやメンバーで日常的にアンコンシャス・バイアスをテーマに気軽に語り合うことが大切である。

要約

「アンコンシャス・バイアス」の正体

アンコンシャス・バイアスは職場にあふれている
Artur/gettyimages

「メンバーにとって良かれと思ってやったことなのに裏目に出た」。「メンバーを傷つけてしまった」。こんな経験をしたことはないだろうか。

それはメンバーとの解釈にズレが生まれてしまったからだ。人は「無意識の偏見」「無意識の思い込み」「無意識の偏ったものの見方」にとらわれている。これを「アンコンシャス・バイアス」と呼ぶ。

アンコンシャス・バイアスの正体は、「自己防衛心」である。脳がストレスを回避するために、無意識のうちに、自分にとって都合のよい解釈をすることで、思い込みが起きてしまい、解釈のズレを引き起こす。

自分は正しい、悪くない、自分のことをよく見せたい。このような自己防衛心による言動は、自然の摂理であり、誰にでもあるもの。問題なのは、自分のアンコンシャス・バイアスに気づこうとしないことだ。リーダーがその存在に気づき、対処することで、チーム内のコミュニケーションが大きく変わる。

どんな弊害をチームに引き起こすのか?

アンコンシャス・バイアスによって引き起こされる問題とはどのようなものか。たとえば、組織においては、人間関係が悪化する、個人や組織のパフォーマンスが悪化する、コンプライアンスの違反行動が生まれる、などである。また、個人においては、否定的になって挑戦できなくなる、イライラが増える、などが生じる。

次はリーダー(A課長)の体験談に基づく実例である。A課長はある会議において、営業成績によってメンバーへの態度を無意識に変えてしまっていた。営業成績がイマイチのメンバーが遅刻した際は、理由も尋ねずに大声で叱責。つづいて遅刻してきたトップセールスのメンバーには、「どうした?」と気遣う言葉をかけた。このことから、メンバーたちは営業成績でしか自分たちは見てもらえていないと感じ取った。そしてその数ヶ月後、怒鳴られたメンバーからは退職願が出され、複数のメンバーからは異動希望が出されたのだ。

このように、リーダーの言動は、人や組織に大きな影響を与える。「自分に無意識の偏見がないだろうか?」「偏ったものの見方をしていないだろうか?」こうしたことに意識を向けることが、組織をよくするための第一歩となる。

【必読ポイント!】 自分の「無意識のバイアス」に気づく

自分の確信の裏にこそ思い込みは潜んでいる

自分のバイアスに気づき、そのバイアスが周りにどんな影響を与えているのかを自覚することを、本書では「自己認知」と呼ぶ。リーダーにとって、この自己認知力を高めることは必要不可欠だ。

人は確信めいたものをもてばもつほど、自分の考えに疑いを差しはさまなくなってしまう。しかし「普通はこうだ」「そう考えることは当たり前だ」といった確信の裏にこそ、アンコンシャス・バイアスが潜んでいる。

相手の非言語メッセージを意識する
MangoStar_Studio/gettyimages

ここからは自己認知力を高める方法を1つ紹介する。それは、相手の非言語メッセージを意識することである。感情は「快」と「不快」に大別できる。「快」とは嬉しいなどのポジティブな感情である。「不快」とは悲しいなどのネガティブな感情だ。

リーダーはとくに、メンバーの「不快」に目を向けなければいけない。人は不快の感情に包まれていると、なかなか前向きになれず、行動が抑制されてしまう。やがてそれが、さまざまな職場の問題へとつながっていくのだ。

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要約公開日 2019.07.02
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