ランキングのカラクリ

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出版社
自由国民社

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定価
1,540円(税込)
出版日
2019年04月18日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

雑誌やテレビでは「住みたい街」「大学」「理想の上司」「赤ちゃんの名前」など、本当にさまざまなランキングを目にする。だがその順位、本当に信じていいのだろうか? そうしたランキングには、スポンサーの思惑が絡んでいる場合もあれば、偏った調査結果のものも多い。すべてが害のあるものというわけではないが、ランキングといっても千差万別、玉石混交なのだ。重要なのは、有害なランキングを見極める目を養うことであり、本書の目的もまさしくそこにある。ランキングをつくる正しい方法論を学び、背後にあるカラクリを知れば、いい加減なランキングでも害を最小限にして楽しめるはずだ。

著者はランキングを4つに分類して考えてみてはどうかと提案している。(1)良いランキング、(2)個人にとっては有用性のあるランキング、(3)巷間で信じられているランキング、(4)話のネタレベルのランキングである。使い方を間違えなければ、ランキングは役に立つし、話のネタとしてもおもしろいものだ。

自分でしっかり考えながら本書を読めば、教養としての統計学が自然と身につくだろう。ビッグデータなどの「数字」が注目される時代だ。ぜひ数字とデータの「正しい」読み方や解き方を学び、今後に活かしていただければと思う。

ライター画像
加藤智康

著者

谷岡 一郎 (たにおか いちろう)
1956年大阪生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、南カリフォルニア大学行政管理学部大学院修士課程修了。同大学社会学部大学院博士課程修了(Ph.D)。専門は犯罪学、ギャンブル社会学、社会調査方法論。現在大阪商業大学教授、学長。
著書に『「社会調査」のウソ』(文春新書)、『データはウソをつく』(ちくまプリマー新書)、『確率・統計であばくギャンブルのからくり』(講談社ブルーバックス)、『こうすれば犯罪は防げる』(新潮選書)などがある。他に海外でも数多くの論文を発表している。

本書の要点

  • 要点
    1
    ランキングをつくるうえでは、いかに指標化するかがポイントになる。皆が納得する「妥当性」、誰が測定しても安定して同じような数字になる「信頼性」が求められる。
  • 要点
    2
    方法論の中でも「一般化」という概念は、ランキングの存在意義を問うものだ。異なる時代、空間、文化でも同種のことが言えるのかという問いは重要である。
  • 要点
    3
    ランキングを遊びの範囲で楽しむのはいいが、それが真実だと思い込むべきではない。ランキングのカラクリを見破るためにも、常識を疑い、考える習慣が大切である。

要約

ランキングを切り口に思考を深めよ

良いランキングを見極める
pialhovik/gettyimages

「ランキング」といっても千差万別、玉石混交である。本書の目的は、良いランキングを見極める目を養うことだ。そのためには物の見方・考え方を学ぶことが欠かせない。いい加減なランキングに騙されて、自分の生活の質を落とすことは避けなければならない。

著者がランキングの良し悪しを判断する枠組みとして使っているのが、2次元の図表による分類だ。1つは「一般的-特殊的」の軸、もう1つは「計測方法の適切-不適切」の軸である。良いランキングは、「一般的」で「計測方法の適切」なものだ。逆に「特殊」で「計測方法の不適切」なものは、話のネタレベルでとどめておくべきである。とはいえこちらに区分されるランキングには、おもしろいものが多い。

注意しないといけないのは、「一般的」ではあるが、「計測方法の不適切」な領域である。たとえば「大学ランキング」や「XXX病の死亡率」などがこれにあたる。

平均は数字をごまかすには便利なツール

「平均」といってもじつは3種類ある。たとえば7人の国語の点をすべて足して、7で割ると平均が出る。これを「算術平均」と呼ぶ。一般的に平均といえばこれだろう。しかし統計学的には、「中間値」と「最頻値」も平均に区分される。

算術平均の場合、「はずれ値(アウトライヤー)」というずば抜けて高い数値を持つ人が混じると、一人で平均値を上げてしまう。アウトライヤーをあえて除いて分析するケースもあるが、その基準は難しく、決まった手法はない。

一方で赤ちゃんの名前ランキングのように、平均の数値の差が極端に小さいのに順位をつけると、数人の誤差でいくらでも変化してしまうこともある。たとえばある年の男の子の名前ランキング1位の占有率は0.67%であることから、そもそもランキングをつくる類の情報ですらない。一方で差が大きすぎてもダメだ。

私たちはいつの間にか、メディアの報道する数値やランキングに洗脳されている可能性がある。数字を冷静に見て、その真の意味を理解し、自ら判断できるようになるべきだ。

多くのランキングは役立つものではない
oatawa/gettyimages

指数にすることによって、はじめてランキング化が可能になる。指数とは、指標による定義化・ウエイト付けにしたがって、実際に数字で表現されたものを指す。数字で表現されれば、比較や順位付けも可能になる。

ただしその際は、どのように指標化するのかが問題になる。指標は皆が納得するものでなければならない。これを「妥当性」のある定義という。妥当性は指数やランキングをつくるにあたって、かならず考慮しなくてはならない。

それに加えて「信頼性」も必要である。誰が測定しても、安定して同じような数値が出るようでなければならない。この観点からすると、「住みたい街ランキング」などは本当に誰でもいつでも住みやすい街なのか、疑問に思えてくるだろう。

世の中のランキングの多くは、集団で平均したものを指数化したものに過ぎず、個人にとって役立つものではないことが多い。ランキングを見るときは、妥当性と信頼性をもとに確認するべきだ。

【必読ポイント!】 一般化という概念

主観と客観

一人の意見は完全に主観的である。一方で、リサーチによる皆の意見(平均)は、ひとまず客観的な数値と見なされる。あくまでサンプル数が、十分に確保されていればの話だが。

サンプル数については、たとえば「12人でも十分か?」と尋ねられても、明白な回答はない。100人くらいの意見の集約なら、きちんとサンプリングされているという前提で、ある程度客観性は保持されていると考えてもいいだろう。しかし残念なことにこの客観性には限界がある。

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要約公開日 2019.07.28
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