問い続ける力

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問い続ける力
出版社
定価
968円(税込)
出版日
2019年04月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「よく考えなさい」と言われた経験は誰しもあることだろう。しかし、「よく考える」とは具体的に何をしたらいいのか。明快な解を持っている人は多くはないだろう。

著者の石川善樹氏は、予防医学の専門家であり、「考える」ことを生業にしている。しかし、本人によると、自分は長らく「では派」であり、考えることを避ける傾向にあったというのだ。「では派」とは、「〇〇では」と、すでに得られている定説を参照して答えを求める人たちのことを指す。それに対して、「△△とは何か?」と問い続け、新たな知識を創り出す人たちは、「とは派」と定義される。常に問い続けなければならない「とは派」の道は、苦しみに満ちている。しかし、情報に頼らず自分の直観を頼りに一歩ずつ進んでいく。著者は、そんな「とは派」の生き方に憧れていた。本書は、そんな著者の「問い」をめぐる旅の記録である。

本書は二部構成になっている。前半では、著者の経験や著名人の思考法、研究結果を交えながら、「問う」ことについて掘り下げていく。後半では、著者が知り合った「とは派」の人々、つまり問い続ける達人たちとの対談が収録されている。いずれも知的好奇心をくすぐる内容だ。

もちろん「考えるとはこういうことだ」と明確な答えが示されるわけではない。それは読者が自ら考えなければならない。しかし、とことん問い続ける姿勢や、問いを創り出す際の着眼点など、人生やビジネスに活きる、数多くの学びを得られることだろう。“Think Different”の世界へようこそ。

ライター画像
池田明季哉

著者

石川 善樹(いしかわ よしき)
予防医学者。1981年広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きる(well-being)とは何か」をテーマに、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。著書に『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)、『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』(吉田尚記との共著・KADOKAWA)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    世の中には、2種類のタイプがいる。1つは、すでに得られている定説を参照して答えを求める「では派」。もう1つは、「△△とは何か?」と問い続け、新たな知識を創り出す「とは派」である。
  • 要点
    2
    一流と呼ばれる人は、物事の本質に迫るプリミティブな問いを立て、そこから考え始める傾向にある。
  • 要点
    3
    「〇〇とは何か?」「いかにして……」の順で考えを進めると、これまでとは違った発想を展開できる。

要約

「問い」を問う

世界に「グランド・チャレンジ」が必要な理由

世界有数の大富豪であり、「パブリックヘルス(公衆衛生)」の分野で慈善家として大活躍しているビル・ゲイツ。彼の最近の活動をご存知だろうか。

2003年、ビル・ゲイツは「もし解くことができれば、世界の健康課題を劇的に解決する問題(グランド・チャレンジ)」を発表した。その1つに、「気持ちよくて誰もが使いたくなるコンドームの開発」が挙げられた。性感染症の問題解決に寄与するアイディアを募集するというのだ。

ビル・ゲイツが課題意識を持っているのは、「重要であるのに市場に任せていては問題解決に至らない問題がある」という事実である。「グランド・チャレンジ」の提示は、才能のある人々を呼び込むことに役立つのだ。

世界の模範になったブラジルの奇跡
Oleksii Liskonih/gettyimages

1981年、ロサンゼルス在住のある男性が、史上初めてエイズと診断された。その後10年足らずで、エイズは世界中に広まった。特に悲惨な状況だったのはブラジルだ。世界銀行の研究員たちは、やむを得ず、感染者を見捨ててでも予防に注力すべきだと主張した。

しかし、ブラジルはその「正解」に飛びつかず、問いを立てた。「誰一人、見捨てないためには、どうすればいいのか」。その後、国を挙げて治療薬を無料で配布。人々に検査を促し、予防の知識を国中に広めていった。その結果、感染率はわずか0.6%となり、エイズと戦う発展途上国の見本となった。

例外から見える問題の本質

物事の本質を見極めるためには、「例外」に着目して帰納法を用いることが有効となる。1990年、ベトナムでは、約3分の2の子どもたちが低栄養に苦しんでいた。この状況を改善するために、「セーブ・ザ・チルドレン」から派遣されたジェリー・スターニンは現地に降り立った。スターニンは、ベトナム政府に歓迎されておらず、6ヶ月で成果を出さなければ帰国してもらうと告げられる。

一見すると低栄養の原因は貧困であり、6ヶ月で解決することはほぼ不可能に思えた。しかし、スターニンは、「非常に貧しい家庭にいるのに栄養状態が良い子ども」という、例外的な事例に着目した。そこから「食事の前に手を洗っていた」「水田でとれるエビやカニを食べていた」という、共通する法則を見出したのだ。こうした知見をもとに、母親向けの2週間のプログラムを作成・実施した。すると、劇的な効果が見られ、プログラムはベトナム全土に広がり、2年間で低栄養は85%も減少したのだった。

【必読ポイント!】 一流の人の考え方

イノベーションを生み出す思考法
metamorworks/gettyimages

世の中には、2種類のタイプがいる。1つは、すでに得られている定説を参照して答えを求める「では派」である。それに対して、「△△とは何か?」と問い続ける人たちは、「とは派」と定義される。もちろん、どちらがより優れているかという話ではない。だが著者は、どういう生き方をしたいかと自問し、「とは派」になりたいと心に決めた。

著者は、ある著名な物理学者の言葉に感銘を受けたことがある。「イノベーションの種となる適切な問いは、『大きな視点』と『小さなディテール』を高速で行ったり来たりすることでしか生まれない」

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要約公開日 2019.07.24
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