アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した
潜入・最低賃金労働の現場

未 読
アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した
ジャンル
著者
ジェームズ・ブラッドワース 濱野大道(訳)
出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2019年03月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した
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潜入・最低賃金労働の現場
著者
ジェームズ・ブラッドワース 濱野大道(訳)
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出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2019年03月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
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レビュー

世の中にはふたつの世界がある。何不自由のない中流階級の世界と、最低賃金で暮らす不安定な世界である――本書は一般的に豊かな国と見なされているイギリスにおいて、後者の世界に焦点を当てた潜入取材の記録である。

イギリス人の著者は、いまでは中流階級の世界の人間だが、もとは母子家庭で育ち、決して裕福ではなかった。そのため取材のために最低賃金の世界に潜り込むことについて、「やっと逃げ出した世界に戻る感覚」と本書の中で表現している。彼が自ら潜入取材を決行したのは、単なる興味本位からではない。21世紀における労働者階級の生活をつまびらかにし、人々の認識を変えるためには、自ら体験し、自らの言葉で本に書くしかないと考えたからだ。

デスクの前に座ってのんびりとコーヒーでも飲みながら、ワンクリックで簡単に欲しいものを手に入れられる。あるいはアプリの操作ひとつで、すぐに迎えの車を手配できる。そんな立場の人間が向こう側の世界を知る手立ては、自分で体験するか、あちらの世界の住人から話を聞くよりほかはない。とはいえお金も時間も自由にはできない立場の人間が本を書くのは現実的でないことを考えると、このような潜入取材の記録は意義深い。

本書は具体的な解決策を提示するものではないが、物事に対して正しい認識を持つことは重要である。まずはワンクリックの向こう側から潜入開始するとしよう。

金井美穂

著者

ジェームズ・ブラッドワース (James Bloodworth)
英国人ジャーナリスト。現地で影響力のある左翼系ウェブサイト“Left Foot Forward”の元編集者。大手紙インディペンデントやガーディアン、ウォール・ストリート・ジャーナル等にコラムを寄稿。著書に“The Myth of Meritocracy: Why Working-Class Kids Still Get Working-Class Jobs”がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    アマゾンの配送センターで働く従業員の大半は、ルーマニアなど東ヨーロッパの出身者である。
  • 要点
    2
    アマゾンの契約は短期のゼロ時間契約である。これは週当たりの労働時間が決まっていない雇用契約で、正社員になることはおろか、契約期間を満了することさえ難しい。従業員の行動は端末で管理され、理不尽な懲罰制度もあり我慢を強いられている。
  • 要点
    3
    アプリ等を通じて単発の仕事を受注する働き方をギグ・エコノミーという。ウーバーの仕事もそのひとつだ。個人事業主という扱いだが、自由度の高い働き方に見えて、実は不安定さゆえの不自由さがある。

要約

【必読ポイント!】 世界最大の小売業者「アマゾン」

アマゾンでの日々
undefined undefined/gettyimages

スタッフォードシャーのルージリーという小さな町に、潜入先であるアマゾンの配送センターはあった。夕方6時15分になると、その巨大な倉庫に30分間の“ランチ”休憩の開始を知らせるベルが鳴り響く。倉庫から出るには、列に並んで空港さながらのセキュリティ・ゲートを通り、ボディ・チェックを受けなければならない。“こそ泥”していないかの確認のためだ。

10分から15分かけてようやくゲートを抜けた従業員たちは、一目散に食堂へと流れ込む。我先にと相手を押し退け、トレーをつかみ、叫び声をあげながら列をなす。競争に打ち勝ち、前方に並ぶことができたたった20人ほどが、熱々の人気メニューにありつける。そこに結束や同胞意識などは影も形もない。苦労して食事を手にできた時点で、ランチ時間は残り15分。どんなに急いだとしても、食事をすべて終えることはできなかった。

総勢1200人ほどいる従業員のうち、大半は東ヨーロッパ出身者だった。そのほとんどがルーマニア人だ。彼らはイギリス人である著者がこんな場所で働いていることをいぶかしく思い、よく声をかけてきた。「なぜイギリス人がこんな卑しい仕事をしているのか」と。これが世界最大の小売業者アマゾンでの日々だった。

アマゾンでの仕事

アマゾンの倉庫での仕事は、4つのグループに分かれていた。商品を受け取り開封するグループ、商品を棚に補充するグループ、商品を箱に詰めて発送するグループ、そして著者が担当したピッカーのグループである。細長い通路を行き来し、2メートルの高さの棚から商品を取り出して「トート(tote)」と呼ばれるプラスティックの箱に入れるのが、著者たちの仕事だった。

ピッカーの仕事にはいわゆるマネージャーはいない。その代わりにハンドヘルド端末の携帯が義務づけられ、犯罪者のようにすべての動きを追跡された。棚から商品を取り出してトートに入れるスピードが落ちると、「ペースが落ちています。スピードアップしてください」と端末に指示が送られてくる。

われわれ人間がデバイスに24時間つながれ管理される――そんな未来を予感させるアルゴリズム管理システムが、ここにはあった。それはフレデリック・テイラーが提唱した「科学的管理法」を彷彿とさせるものだ。労働者階級の人々は、人間として扱われるのではなく、企業が利益を生み出すためのリソースとして扱われる。しかしそのことはアマゾン語によって、巧妙に隠されていた。ひとつの幸せな大家族と錯覚させられる「アソシエイト」という言葉によって。

アマゾンでの契約
Nastco/gettyimages

アマゾンでの求人活動は、ふたつの派遣会社を通して行われていた。そのうちのひとつであるトランスライン・グループから、著者はアマゾンに派遣された。そこでの契約は短期のゼロ時間契約だった。ゼロ時間契約とは、週当たりの労働時間が決まっていない雇用契約のことで、近年イギリスで大きな社会問題になっている。何度か雇用契約書がほしいと掛け合ってみたが、最終的に「ゼロ時間契約の雇用契約書は存在しない」ことになった。面接日にサインしたはずの書類はかき消えてしまったようだ。

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